【地方が変える・日本を変える】(06) “よそ者”後継者が新風

20170207 03
後継者不在で廃業の危機にある地方企業を救う為、子供や親類ではなく、第三者が事業を引き継ぐ“継業”が注目されている。静岡市清水区の商店街にある創業70年の乾物屋『蒲原屋』。豆類や雑穀がぎっしり並ぶ店内で、店主の新谷琴美さん(44)と元店主の金子武さん(73)は親子のように見えるが、全くの他人同士だ(左画像)。店は金子さんの父親が始めたが、金子さんの3人の娘は皆結婚し、家を離れていた。地元の商工会議所を通じて後継者を公募し、選ばれたのが新谷さんだ。新谷さんは当時、会社員だったが、「“食”の分野で起業したい」という思いがあった。2015年1月に後を継いだ新谷さんは、女性客の関心を引こうと商品パッケージを見易く、柔らかい印象のデザインに変えた。隣の空き店舗を改装し、乾物を使ったスイーツを提供するカフェも開店。中高年中心だった客層は20~30歳代にも広がり、売り上げは引き継ぎ前より1.25倍に伸びた。

企業の後継者問題は深刻だ。『東京商工リサーチ』によると、資産が負債を上回るにも関わらず、2015年に休廃業・解散した企業は、倒産件数(8812件)の約3倍に上る2万6699件だった。この内、4割の企業の社長は70歳以上で、事業承継がスムーズに進んでいない為とみられる。こうした事態を防ごうと、静岡のような『後継者人材バンク』は、全国で18府県に設置されている。この内、秋田県は相談を待つだけでなく、地域毎に相談員を配置し、企業に足を運んでニーズの掘り起こしを行っている。地方の店にとって、都市部から地方に移住して町づくりに取り組む国の『地域おこし協力隊』が、継業の担い手になるケースもある。雪深い新潟県小千谷市にある『真人とうふ』。地元有志の組合で運営していた豆腐屋を、協力隊員として千葉県から同市に赴任した坂本慎治さん(38)が継いだ。真人とうふは1998年、地区の住民が地域活性化の為に始めた。組合員が高齢になり、閉店の瀬戸際に立たされたところ、噂を聞いた坂本さんが後継に名乗り出た。豆腐作りを一から学び、製法に拘った商品を作るだけでなく、インターネット販売も始めた。設立当時の組合員の1人である塚田喜信さん(84)は、「人も少なくなり、地域が活気を失いかけていた。本当に救われた」と喜ぶ。協力隊員は、2013年度の約1000人から、2015年度には2625人に急増。国は3000人を目標に拡充を進めている。身内同士でも事業をスムーズに継ぐことは簡単ではなく、況してや他人同士ではそれなりの覚悟が必要だ。それでも、地域で必要とされてきた生業に、新谷さんや坂本さんのような“余所者”の視点が加われば、地方に新しい風を吹かせる可能性がある。後継者にとっても、設備やノウハウ等を引き継ぐことができ、新規で起業するより経営リスクが低い。鳥取大学の筒井一伸准教授(農村地理学)は、「地域は将来の町づくりを考える上で、継業という手法を積極的に活用し、成功事例を共有していくことが大切だ」と指摘する。


⦿読売新聞 2017年1月11日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 地域のニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR