サムスンが暴くシャープの実像――態度を豹変させたSDP、60インチのテレビを“おまけ”でバラマキ

20170207 05
「V字回復して、遅くとも2018年度に東証1部への復帰を目指す」――。台湾の『鴻海精密工業』から『シャープ』立て直しの為に送り込まれた戴正呉社長は昨年11月1日、全社員に対し、自信に満ちた社内メッセージを発信した。戴社長の自信には根拠があった。同日の決算発表で、今年3月期の連結営業損益が257億円の黒字になることが明らかになったからだ。営業損益の黒字転換は、実に3年ぶり。上期はトントンだったが、下期が256億円の黒字になる見通しで、“V字回復”が夢物語ではないことを数字が示している。戴社長は、鴻海との協業による調達・物流のコストダウン効果を主な理由に挙げる。だが、地道な改革だけで業績が上向いた訳ではない。ライバル企業である韓国の『サムスン電子』が、シャープ等3社を相手に、4億2900万ドル(約490億円)以上の損害賠償とパネル供給再開を求めて起こした仲裁申し立て。それを読むと、シャープのV字回復に向けた鴻海の強力な肩入れが浮かぶ。先ずは、サムスンが仲裁を申し立てるに至った経緯を整理しよう。サムスンは、鴻海とシャープが共同運営する『堺ディスプレイプロダクト(SDP)』(大阪府堺市)から液晶テレビパネルを調達していた。40インチ前後の中型サイズと、60・70インチの大型サイズ等、約370万台分(2016年)を引き受ける最大顧客だった模様。「買収が取引関係に影響を与えることはありません」「今後も高品質の製品を提供します」。鴻海によるシャープ買収が明らかになった後の5月16日、SDPはサムスンにこのような文書を送付。両社はその後、取引範囲の拡大について話し合いを進めていた。だが、そんな良好な関係が突然、終わりを迎えることになる。11月29日に開かれたSDPとサムスンの幹部らが集まった会議で、SDP側が「(鴻海の)郭台銘董事長は世界的にブランド力を高める考えで、当社のパネルは全て鴻海・シャープに渡すことが決まった」等と説明。「12月末でサムスン向けのパネル供給を全て止める」と一方的に通告したのだ。仲裁申立書には、「『鴻海がSDPのパネルを市場価格よりも5割高い価格で購入する』と約束した」といった趣旨のことも書かれている。調査会社によると、40インチのパネル市場価格は、昨年12月時点で140~155ドル。60・70インチの大型サイズは400ドル前後だ。“市場価格の5割増し”がそのまま利益となれば、単純計算でSDPには年500億円以上の利益の押し上げ効果が見込める。シャープのSDP持ち株比率は26.7%。鴻海が実勢と乖離した価格でパネル全量を買い取ることで、シャープの“名目”の業績は年130億円以上改善することになる。戴社長の自信の裏には、こんなカラクリが隠されていた。

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では、鴻海は高値で集めたパネルをどうするつもりなのか。そのヒントが、11月11日の『独身の日』にあった。中国のEC(電子商取引)の売り上げが1年で最も伸びるこの日。『阿里巴巴集団(アリババグループ)』の通販サイト『天猫(Tモール)』では、70インチと60インチのシャープのテレビ『アクオス』の商品画像が大きく掲載された。画像の上に書かれた“買一送一”の文字。これは、“70インチのテレビを購入すれば、60インチのテレビを1台無料で贈呈するサービス”を意味している。こうしたおまけ商法は中国では一般的だが、アクオスのような高額商品で展開することは極めて珍しい。異例のバラマキ戦略に打って出た背景には、「シャープのテレビ販売台数を2018年度に現在の約2倍の1000万台に引き上げる」という郭董事長の目標がある。中国でのアクオスの認知度は決して高くない。だが、1000万台の目標達成には、成長市場である中国での拡販が不可欠。そこで、鴻海は強烈な販促イベントを打ち、一気にブランド力を高めることを狙ったのだろう。現地の報道によると、鴻海は独身の日だけで70インチのテレビ約1万台を販売。総売上高は6億2000万元(約100億円)に達したという。パネルと同様に、中国でのアクオスの売り上げ拡大は、シャープの業績好転に寄与することになる。鴻海の過剰とも言えるグループ内取引での支援と強力な販促は、シャープの実力を水増しするだけではない。顧客の信頼を損なう恐れも指摘されている。シャープは、経営危機に陥る前の2011年、テレビ販売が好調だったことから、生産したパネルの販路について自社向けを優先した。その結果、2010年に5割弱だった外販比率は、2011年に2割強にまで急落。自社供給を優先するあまり、『ソニー』等の外販先では液晶パネルの納入遅延や供給中断といった動きが相次ぎ、シャープは批判に曝されることになった。「信頼関係を大きく損なう非常識な決定だ」。今回の供給停止を受け、サムスンは仲裁申立書でシャープを強く非難している。サムスンだけではない。「国内外の複数メーカーからも、『同じことを繰り返すシャープとはもう取引したくない』という声が上がっている」(液晶業界関係者)。郭董事長指揮の下、再び内販優先へと舵を切ったシャープ。テレビ1000万台の目標達成が難しくなれば、外販を強化せざるを得ないが、大きく信用を失ったシャープが再び外販先を開拓するのは至難の業だろう。潤沢な資金投下で、ライバルであるサムスンを締め出し、利益度外視の物量投下で市場を圧倒する鴻海の“焦土作戦”。救済策どころか、シャープに最後通牒を突き付ける皮肉な結果になるかもしれない。 (取材・文/本誌 林英樹・齊藤美保)


キャプチャ  2017年2月6日号掲載
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