【トランプ主義・外交編】(02) 対テロ巡り主導権争い

20170208 02
ドナルド・トランプ大統領が意欲を見せるイスラム過激派組織『IS(イスラミックステート)』掃討に向け、政権内では早くも主導権争いが始まっている模様だ。焦点は、シリアのバッシャール・アル=アサド政権の後ろ盾となってきたロシアとの協力。トランプ氏は強い拘りを示しているが、国防総省のジェームズ・マティス長官は「我々は何度も『ロシアと前向きに関与しよう』と試みてきたが、成功例は少なかった」と公聴会で語り、慎重姿勢だ。一方、『国家安全保障会議(NSC)』を取り仕切る国家安全保障担当のマイケル・フリン大統領補佐官は2015年、ドイツの有力誌に「ロシアと建設的に協力する他、選択肢は無い」と断言し、対露協力積極派とみられている。「ロシアやアサド政権と組んでIS掃討に取り組むことには、大きな副作用を生みかねない」との懸念が政権内外に根強い。バラク・オバマ前政権下で対テロ戦略策定に携わったダニエル・ベンジャミン氏は、米紙への寄稿で「『ロシアと協力し、シリアやイランとも手を組んでいる』と目されたら、アメリカの対テロ戦略は後退を余儀なくされる」と警告した。

アサド政権の中核はイランと同じイスラム教シーア派系で、スンニ派で親米的なサウジアラビア等と対立。アメリカは、サウジアラビア等と繋がりのある反体制派を支援し、スンニ派諸国からテロリストの情報共有で協力も得てきた経緯がある。更に、人道問題が指摘されるアサド政権の容認は、スンニ派に止まらず、国際社会からの信頼失墜に繋がりかねない。湾岸戦争等に従軍し、中東等を管轄する中央軍司令官も務め、実戦経験の豊かさと勇猛果敢さから、敬愛を込めて“狂犬”と呼ばれるマティス長官。トランプ大統領にも臆せず助言し、信頼も勝ち取りつつある。昨年11月、国防長官候補として受けた面接では、テロ容疑者への水責めについて、「煙草とビールがあれば、拷問よりも上手くできる」と真っ正面から否定した。トランプ大統領は実際、マティス長官の助言を受け入れ、水責めの復活を断念した。一方、トランプ大統領の側近であるフリン補佐官は、NSCに「これまでにない比率」(アメリカメディア)の軍出身スタッフを集め、対IS政策への関与に強い意欲を見せている。共和党筋によると、フリン補佐官は国防副長官人事で、マティス長官が起用する意向だったのミシェル・フロノイ元次官に“横槍”を入れ、ロバート・ワーク氏の留任が決まったという。トランプ政権は今月20日発表の基本政策で、IS壊滅を“最優先”と宣言し、①積極的で共同・連携した軍事作戦の追求②資金源を断つ③情報共有の拡大④思想の拡散や戦闘員獲得をさせない為のサイバー戦の強化――等を掲げていた。政権は一昨日署名の大統領令を受け、こうした方針に基づくIS掃討の新計画の素案策定に入る。マティス長官とフリン補佐官の助言で、トランプ大統領はどうバランスを取っていくのか。その匙加織次第で、世界の秩序と安定は大きく左右される。 (アメリカ総局 横堀裕也・カイロ支局 倉茂由美子)


⦿読売新聞 2017年1月30日付掲載⦿
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