【読解力が危ない】(02) 新入社員に読書感想文

20170208 03
読解力の低下は、教育現場に限った問題ではない。職場にも影を落とし、企業は対応に追われている。「今月は何でこの本を選んだの?」。電気ヒーターの製造・販売等を手がける『河合電器製作所』(愛知県名古屋市)で、新入社員の岩月敦政さん(25)に先輩の安井良さん(25)が声をかけた。同社は、入社3年目までの正社員に月1冊の読書を義務付け、感想文を書かせている。感想文は社内のイントラネットで全社員が閲覧できる。若い社員は、取引先のニーズを理解するのにも時間がかかり、書いてくる報告書も要領を得ない――。取り組みは、危機感を持った佐久真一社長(51)の発案で、2007年に始まった。岩月さんは、「仕事でも相手の要望を理解し、伝達する方法を意識するようになった」と効果を実感する。社員の“読む力”や“書く力”を高める以前に、基本的な言葉の使い方に頭を悩ます会社も多い。ある大手保険会社は、顧客や同僚にメールや報告書を送る際の留意点を纏め、社員に配布した。相手に不快感を与える表現から接続詞の使い方まで、日本語のイロハを説いている。

就職情報会社『文化放送キャリアパートナーズ』(東京都港区)の平野恵子研究員(48)は、「就職活動中の大学生も、会社案内をただ読むことはできても、それを自分なりに評価したり、他の企業と比較したりすることは苦手。スマートフォンで入手する細切れの情報に慣れており、纏まった情報を読み解く力は欠けている」と嘆く。一方、企業の悩みをビジネスチャンスと捉える動きも出てきた。受験生向けの通信教育で知られる『Z会』(静岡県長泉町)は2012年、社会人向けに文章指導講座を新設した。設問に応じてメールや報告書を書くと、オンラインで添削を受けられる。今や年間約500人が受講する人気講座で、企業から「研修に使いたい」という問い合わせも増えている。航空大手の『全日本空輸』は今年度から、文章の読解力や作成力を測る為の検定を新入社員に受けさせている。社内の教育機関『ANA人財大学』の学長を務める同社の国分裕之取締役執行役員(58)は、「伝える力を高めるには、若い世代に会話や文章力を磨く機会を企業が提供する必要がある」と話す。顧客の声を汲み取り、それを会社に伝えて、商品開発やサービスに生かす――。そんなビジネスに不可欠な力が揺らいでいる。


⦿読売新聞 2017年1月31日付掲載⦿
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