【霞が関2017冬】(06) 日欧が繰り広げるチーズ戦争…EPA交渉で

カマンベールにモッツァレラといったフランスやイタリア等から輸入するチーズに課している22.4~40%の関税をどうするのか――。日本政府が早期妥結を目指す『ヨーロッパ連合(EU)』との経済連携協定(EPA)交渉で、ヨーロッパ産チーズの扱いが大きな焦点となっている。「これは我慢比べだな」。今月中旬、EU本部があるブリュッセルで開かれた首席交渉官会合。物別れに終わったチーズの交渉結果を耳にした農林水産省の中堅官僚は呟いた。チーズ生産量で世界シェアの半分を握るEUは、ヨーロッパ産チーズにかかる関税の撤廃を求めている。「チーズの関税を取っ払ってくれたら、日本が望む乗用車の関税撤廃に応じよう」と持ちかけるEUに対し、農業分野の交渉に当たる農水省は徹底抗戦する構えを崩さない。交渉全体を統括する外務省も、農水省の意固地ぶりに手を焼くほどだ。「EUの要求が高過ぎる」というのが最大の理由だ。一昨年秋に大筋合意した『環太平洋経済連携協定(TPP)』では、ブルーチーズや粉チーズは段階的な関税撤廃・削減に応じたものの、日本人の舌に合うモッツァレラ、カマンベール、プロセスチーズの関税は現状維持に止めた。輸入が増えれば、国内の酪農業への悪影響が大きいからだ。EUに対してTPPを上回る譲歩をすれば、アメリカの乳製品団体等が抗議するのは必至。「ドナルド・トランプ大統領に日本攻撃の口実を与えてしまう」(農水省幹部)と懸念する。

他の国内事情も抱える。政府・与党は昨年11月、農協団体に生乳を出荷しないと補助金が貰えない現行制度を改め、新規参入の集荷団体に出荷した酪農家にも補助金を配ることを決めた。出荷先を自由に選べるようにして競争を促し、所得の向上に繋げてもらう為だが、生乳を一手に管理してきた農協団体の反発は収まらない。難しい調整に当たる農水省からは、「生乳改革で手一杯。チーズの関税で譲歩しようものなら、酪農行政は信頼を失う」(幹部)との声が漏れる。一方、EUにも譲れぬ訳がある。生乳の生産量の上限を定めていたクオーター制(生産調整)を一昨年廃止したが、思わぬ結果を招いている為だ。クオーター制の廃止は、酪農家の増産意欲を引き出して輸出を増やす狙いがあったが、有力な輸出先とみられていたロシアとの関係がウクライナ問題で悪化。乳製品の輸出ができなくなり、増産傾向を強めていた生乳が行き場を失った。生乳価格は、昨年10月まで26ヵ月連続で下落。懐を傷めた酪農家は、EUの酪農政策に抗議して生乳を捨てるパフォーマンスに出た。「域内の需給を改善する為に、輸出拡大を推し進めたい」。昨年6月、アイルランドの首都・ダブリン。ヨーロッパの酪農業界の総会に出席したEUの担当者が訴えた。日本の交渉関係者は、「EUは日本を生乳の捌け口と考えている」と解説する。EUがチーズの関税撤廃に拘る理由という訳だ。トランプ大統領の就任等で世界が保護主義に傾く中、日欧間のEPAはメガ自由貿易協定(FTA)の数少ない希望とも言える。ただ、日欧の“チーズ戦争”が激化し、交渉が膠着すれば、日本も保護主義の波に飲み込まれてしまう恐れがある。 (中戸川誠)


⦿日本経済新聞電子版 2017年1月31日付掲載⦿
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