ドナルド・トランプ政権誕生で始まる中国の民主派大弾圧――習近平強権にトランプは「我関せず」、“和平演変”の恐怖は消える

ドナルド・トランプ次期大統領の登場に、中国共産党の高笑いが止まらない。人権問題に熱心でないトランプ氏が大統領に就任した後、アメリカの干渉が弱まり、中国国内の民主派やウイグル独立派の過酷な弾圧に拍車がかかる恐れがあるからだ。“民主主義の伝道師”を自任してきたアメリカの政権交代が、皮肉にも中国13億人の“言論の不自由”を後押しし、彼の国は“思想統制国家”への一本道を突き進んでいく――。

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「真面な有識者・言論人は皆、衝撃を受けていますよ。『アメリカの目まで届かなくなれば、習指導部による思想・言論統制は際限なく進む』と」――。寒風吹き荒ぶ昨年11月のある夜、新橋界隈の和食店。来日した中国メディアの編集幹部・趙敏氏(仮名)は、声を潜めながらこう語った。趙氏は、中国で有名なメディアグループに所属する40代の男性としか紹介できない。身元が割れれば、彼の身辺にどんな危険が及ぶかもわからない。それほど習体制下の言論取り締まりは苛烈を極める。前述した程度の話でさえ、表沙汰にすることは、彼には「破滅」(趙氏)を意味する。仕事帰りのサラリーマンで賑わうこの街の自由な言論空間すら、何れ帰国する中国の報道関係者にとって聖域にはならないのだ。世界の人権問題に目を向けようとしたバラク・オバマ前大統領から、「関心があるのはアメリカの利益だけ」と言って憚らないトランプ大統領への政権移行に、趙氏ばかりか、民主化の夢を抱く中国の隠れ民主改革派は苦悶している。発端は、昨年3月のトランプ氏の発言だった。日本の新聞・テレビは殆ど報じなかったが、トランプ氏は『CNN』のテレビ討論会で、1989年に北京の天安門広場を舞台に学生が起こした民主化運動を“暴動(riot)”と言い表したのだ。この“暴動”とは、学生デモ隊に無差別発砲した人民解放軍の虐殺行為でなく、自由を叫び、世界の心を掴んだ学生側の民主化運動を指した言葉だった。トランプ氏は討論会で、天安門事件への自らの受け止めに関し、「(中国政府が)暴動を抑え込んだ」とも述べた。そのニュアンスは、学生たちの民主化運動を“政治風波(騒ぎ)”とこき下ろし、弾圧を正当化する習指導部の公式見解と見事に一致する。「国家が繁栄・発展と秩序維持の為、異分子を排除するのは当然だ」とする認識を、習主席とトランプ大統領が共有していると考えていいだろう。

こうした見方を裏付けるように、習主席はトランプ大統領に秋波を送る。昨年11月14日、トランプ大統領と電話会談した習主席は、今後の対米関係を「チャンスと大きな潜在力がある」と説いた。人権問題に目を光らせるオバマ前大統領に比べ、「『アメリカの利益追求に専念する』と宣言したトランプ大統領のほうが与し易い」と習主席が考えるのは当然だ。習指導部の本音を探る上でヒントになる分析もある。『北京大学国際関係学院』の賈慶国院長は日本メディアの取材に、「『人権問題で中国への圧力が弱まれば、米中関係にはプラスになる』と(中国政府は)考える」と率直に語っている。これまで習主席は、人権問題でオバマ前大統領の追及を受けて守勢だった。昨年9月3日、杭州での米中首脳会談では、オバマ大統領から「中国は全市民の信教の自由を守る必要がある」と詰め寄られた。中国が弾圧対象とするチベット仏教・カトリック教会を指す発言だった。習主席は「内政干渉だ」と反発したが、中国が“異形の大国”であるとの烙印を押されたダメージは決して小さくない。中国が人権状況を発表するお手盛りの年次白書も、オバマ前大統領対策の一環。同白書は、中国国内でインターネットがサイバー警察に監視されているにも関わらず、「国民の表現空間が絶えず拡大している」と自賛する等、現実遊離ばかり。欧米の人権団体からは、「冗談にもならない」と失笑されている。だが、中国が「思想や言論の自由という根源的な問題に取り組む姿勢をアピールしなければ、欧米に相手にされない」との危機感を抱いた事実は、注目に値する。後手に回った形で白書を出すのは、面子を重んじる中国にとって極めて屈辱的だ。それだけ、オバマ前政権の“対中圧力”がじわじわと効いていた――。そんな見方もできる。中国が目の上の大きなたんこぶを除去する機会と見定めたのが、アメリカ大統領選だ。オバマ前大統領のレームダック化を見越し、大統領選前から真綿で首を絞めるように、国内での抑圧を強めてきた。一昨年7月には、人権派の弁護士や市民活動家約300人を一斉に拘束。“国家政権転覆扇動罪”で11年の懲役刑が確定したノーベル平和賞受賞者の民主活動家・劉暁波氏は、今も尚、獄中の身だ。新聞・テレビ報道への監視・検閲に加え、インターネット空間の規制も厳格化の一途だ。一昨年6月には、日本の人気アニメ『進撃の巨人』まで有害指定し、インターネット配信を禁止した。文化省は「未成年者の犯罪・暴力・ポルノ・テロ活動を煽る内容が含まれる」と説明するが、鵜呑みにする人は殆どいない。

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中国当局の手が及ばない香港や台湾系のサイトでは、「残忍な巨人は、どう見ても習近平とその子分たち。そして、巨人との戦いに挑む主人公らは、どう見ても民主活動家だ。当局者自身もそう感じたから、禁止したのだろう」等と批判的な書き込みが溢れ返る。国際人権団体『ヒューマンライツウォッチ』が「中国では過去10年で最も厳しい言論弾圧が行われている」と指弾したのは、一昨年3月。習指導部が強圧へアクセルを踏み込んだ証左だ。そして、ホワイトハウスの主がオバマ氏からトランプ氏へ代わる。意のままに思想弾圧を進めたい習氏にとって、オバマ大統領の退任は最後のリミッターが解除されたのに等しい。中国は長年、「アメリカが裏で中国国内の民主派を操り、欧米世論の後押しを受けながら、平和裏に共産党一党体制を転覆させようとしている」と見て、警戒してきた。中国語で“和平演変”と呼ばれるこうしたアメリカの「策略」(中国紙)への恐怖心は、習指導部内にも根強い。だが、その疑心暗鬼も、トランプ大統領の登場で遠景へ引いていく。中国が人権問題の呪縛から解き放たれれば、その浮いたエネルギーを覇権戦略に振り向ける余裕が生まれる。南シナ海での軍事拠点構築への策動を加速させ、それは尖閣諸島にも及ぶ。中国はアメリカの圧力を感じなくなるほど、挑発行為を激化させるに違いない。トランプ大統領が台湾の蔡英文総統と電話した一事を以て、“米中関係に暗雲”と短絡的に受け止める能天気を改めない限り、日本は手痛い竹箆返しを受けかねないのだ。


キャプチャ  2017年1月号掲載

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