【霞が関2017冬】(07) 金融庁検査、短期決戦から長期戦にシフト

「本当に重要なのは2回目以降になる」――。金融庁幹部がこう話すのは、金融機関への検査だ。嘗て、金融庁の検査と言えば、不良債権に繋がりかねない貸し出しを厳しくチェックし、貸し倒れに備えた引当金を迫る“短期決戦”だった。検査結果次第で決算数字が大きく変わることも珍しくなく、金融界から恐れられてきた。しかし、こうした手法は過去のものになりつつある。

金融庁検査官「中期経営計画では貸出額も利益も伸びる見通しになっていますが、どのように達成するつもりですか?」
銀行担当者「心配ありません。営業努力やコスト削減で達成できます」

最近の地方銀行に対する検査での典型的なやり取りだ。急速に進む人口減少や、『日本銀行』のマイナス金利政策による利鞘の縮小等、地方銀行を取り巻く環境は厳しい。金融庁は、「8年後に地銀の6割が本業で赤字に陥る」との試算まで示し、規模の追求ではなく、独自のビジネスモデルへの転換を促している。検査でも問題認識を示しているが、議論は平行線に終わるという。地銀側は、「直ぐに行き詰まる訳ではないので、高を括っている」(金融庁幹部)という。

実際、金融庁が今月3日に発表した全国115銀行の不良債権残高は、昨年9月末時点で7.9兆円と過去最低を更新した。財務の健全性を示す自己資本比率が必要水準ギリギリという金融機関も無い。従来の考え方に基づけば、金融システムは安定している。この為、金融機関側にしてみれば、検査でも「ビジネスモデルについて金融庁にとやかく言われたくない」という姿勢が滲む。ただ、8年後を待たずとも、既に4割の地銀は本業で赤字の状態だ。森信親長官は、「持続性の無いモデルを続けると、ゆくゆくは健全性という本質的な問題に突き当たる。看過できない」と話す。目の前で燃え盛っていた不良債権問題の解決を使命に誕生した金融庁だが、不良債権問題が収束した今、行政の軸足は急性期医療から“予防医療”に大きくシフトしつつある。症状が悪化してからでは回復させるのに膨大なコストがかかるし、手遅れになる可能性もある。そうなる前に手を打つことで、金融システムの安定性を維持しよう――。それが現在の金融庁の考え方だが、「切羽詰まった状況にはない」と考える銀行側との認識のギャップは大きい。しかも、ビジネスモデルは経営判断の領域で、金融庁の強制力が及ぶ訳ではない。だからこそ、長期戦を覚悟しているという訳だ。この為、「1回目の検査では銀行の言い分を聞く。2回目以降、彼らが掲げている計画と現実に乖離が出てきた段階で、繰り返し詰めていく」(幹部)構えだ。金融庁自身も、検査官の意識改革の為の研修を繰り返し実施している。予防型の金融行政の実効性を高めるには、金融庁自身の改革も不可欠だ。 (亀井勝司)


⦿日本経済新聞 2017年2月7日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 経済・社会
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR