トランプ政権誕生で永田町・霞が関は大混乱! 経済産業省vs外務省、史上最も稚拙な権力闘争の行方

先日のアメリカ大統領選で、ドナルド・トランプ氏がまさかの当選を果たした。ヒラリー・クリントン氏勝利を確信していた日本の外務省は、完全に読みを外した格好だ。政府も大混乱に陥る中で見えてきたのは、意外にも外務省と経済産業省の確執だった――。 (取材・文/政治ジャーナリスト 村嶋雄人)

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外務省の幹部らは今頃になって、「実は予測していた」「ブレーン何人かとパイプを作ってきた」等と話しているが、とんでもない話だ。アメリカ大統領選挙の開票が始まる直前まで、外務省内の空気はやはりクリントンの勝利であり、「トランプが勝つ」とは誰も予測していなかった。実は、未だ投票が行われていた日本時間の11月9日午前、外務省の現職幹部や新旧の政務三役といった自民党の外交族議員は、記者らにこう話していた。「トランプの政治手腕・外交・アジア政策は未知数だが、実際に当選したら、選挙で言ってきたような『日本から駐留アメリカ軍を撤退させる』『日本も核武装を』といった過激なことはやらず、現状維持に近いんじゃないか。しかしまぁ、トランプはないでしょう。そんなことより、現実的な問題として厄介なのはクリントンだ。外交手腕に長けていて、オバマ以上に“ジャパンバッシング”で中国寄りに向かうだろう。時に日本は無視され、その先兵に使われる。それに備えて、外務省は高度な日米外交を想定して、しっかりシミュレーションしてきたから問題ない」(外務省政務三役経験者)。また、別の外交族議員は、こんな話も明かした。安倍首相が、9月にニューヨークでクリントン氏とだけ会い、トランプ氏とは会わなかった件だ。「面会は一応、両陣営に申し入れていたが、トランプ氏の日程が中々合わなかったので、無理して調整せずにそのまま流した。外務省は、日米同盟で過激な発言を繰り返すトランプ氏を気にしてはいたが、クリントン氏と会って、これまでの同盟関係を確認できればそれでよかった。つまり、『クリントンが勝つ』と分析していたんだ」。更に、元三役の別の自民党外交族議員からは、こんな軽口も聞かれた。「トランプだったら、寧ろ日本が自立しなければならなくなる。これを機に憲法改正まで持っていける。まぁ、安倍さんは喜ぶんじゃないの(笑)」。楽観ムードから事態は一変した。大方の予想を覆してトランプ氏が勝利し、官邸・外務省・永田町には謂わば“トランプショック”が走ったのだ。

ここから、官邸内では安倍首相やその周辺から“外務省批判”が一斉に湧き起こるが、最も激怒したのは、何と言っても安倍首相本人だという。「外務省の事務次官や審議官は、選挙当日まで安倍首相に『クリントン氏勝利で間違いありません』と情勢分析を報告していた。結果が出るや、慌てて首相は『トランプ氏との伝手はあるか?』と外務省に聞いたが、無いと判明。首相は怒って、『もういい、こっちでやる』と独自にルートを探したというのが内実だ」(首相周辺)。首相に近い役所と言えば経済産業省だ。アベノミクス・『環太平洋経済連携協定(TPP)』・成長戦略等、安倍首相がこれまで進めてきた重要政策は、どれも経産省が主体と言っても過言ではない。首相側近の秘書官らも経産省出身者で、永田町では安倍内閣を“経産省内閣”とも呼ぶほど。官界では、霞が関のどの役所が政権に近く、又は牛耳っているかといった縄張り争いが常に起きているが、今、最も強い力を持っているのが経産省なのだ。当然ながら、外務省に愛想を尽かした安倍首相が、トランプ氏に会う為、ルート探しと会談設定を指示したのも経産省だった。経産省の現職官僚が語る。「安倍首相からうちに要請が来たので、直ぐに対応しました。そして掴んだのが、マンハッタンのトランプタワーに入居している日本企業のルートです。そこを通じてトランプ氏への連絡先を突き止め、何としても安倍首相が会談したいということを申し入れました。本来なら、アメリカ大統領選挙に関する情報収集や対応は外務省の仕事です。連絡先等は外務省が知っていて当たり前の筈なのに、辛うじて知っていたのは在米日本大使館からのものだけでした。まさに大失態ですね」。ただ、外務省の失敗を即座にカバーして、安倍・トランプ会談にこぎつけた経産省にしてみれば、永田町や霞が関に自らの力を誇示するいい機会となった。経産省による交渉の甲斐あって、安倍首相は11月17日に『アジア太平洋経済協力会議(APEC)』出席の為、ペルーに向かう途中にニューヨークに立ち寄り、世界の首脳の中で真っ先にトランプ氏との会談を実現させたのだ。会談の中身は公表されていないが、トランプ氏が選挙中、自国の利益を優先して「TPPから脱退する」と公言したことについて、安倍首相はトランプ氏にTPPに加盟するよう要請したという。そして、この会談は世界の首脳で初めてだったことから、その後のAPECでは各国の首脳が「トランプは何を考えているのか?」と安倍首相に駆け寄る等、安倍首相の行動が高く評価された。

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日本国内でも、「早期会談の申し入れは、トランプがどう政権を運営しようと、安倍首相はスピーディーに適切に対応するとアピールできた」(経産省幹部)というように、内閣支持率にも反映された。共同通信の最新の世論調査によると、安倍内閣の支持率は60.7%となり、「トランプ会談が支持率を押し上げた」(同)との分析だ。しかし、経産省が「早期会談は自らの手柄」と胸を張っていたところ、事態は急展開を迎える。トランプ会談で一定の成果を収め、信頼関係を築けたことで自信を得た安倍首相。ペルーからアルゼンチンへ移動して記者会見し、安倍・トランプ会談ではTPPについて前向きな話ができたと言わんばかりに、「TPPはアメリカ抜きでは意味が無い」と世界に向けてメッセージを発した。ところが、その直後の11月21日にトランプ氏はビデオメッセージを発表し、「就任初日にTPPを脱退する」と、安倍首相の揚々とした会談の成果のアピールを打ち消すように宣言したのだ。完全に面子を潰された格好の安倍首相だが、それは同時に経産省への批判にも繋がった。経産省から“大失態”と批判された外務省が、今度は一斉に反撃に出た。「2人を易々と会わせて、向こうがどんなことを考えているかもわからないのに、得意になってTPPの話題に会談を結び付けたのが抑々の間違い。逆に首相が赤っ恥をかいた。経産省に外交交渉なんて最初から無理な話だ」(外務省OB)。これに対して経産省幹部は、「自分たちの失敗を棚に上げて何を言うか。ここまで複雑な展開になったのは、最初の最初、外務省の情報収集能力ゼロが引き起こしたという事実は消えない」と反論。懲りない“外務省vs経産省”の鞘当ては続いている。

ところで、この“トランプ旋風”は、“解散風”を後押しする結果にもなっている。安倍首相に近い自民党べテラン議員は、「何をやってくるかわからないということは、逆に今の内にやらないと。後になればなるほど、解散総選挙のタイミングを失う可能性が出てくる」と話す。例えば今後、トランプ氏が中国やロシアと直接外交交渉をやって、日本の立場に悪影響を与えたり、在日アメリカ軍問題で日本に対して新たな要求を突き付けたり等、トランプ政権が走り出して向こう1年から2年は、本当に何をやってくるか予測不可能なのだ。安倍首相の面子を平気で潰した“TPP脱退宣言”を見れば、十分あり得る話だろう。その際に日本がどう振り回されるかはわからない。トランプ氏の保護主義が世界の市場に影響し、アベノミクスが打撃を受けることもあり得る。また、安倍首相が積み上げてきた外交のスキームすら壊されることだって、大いに考えられるのだ。「後になるほど解散し難くなるならば、今やるべき。今後4年間、解散は考えなくてもいいように、基盤を安定させておくという判断は当然だ」(前出の自民党べテラン議員)。確かに今、解散総選挙をやれば、勝てる好条件が揃っている。「12月のプーチンとの山口での会談で、北方領土交渉がどうなるかによって、安倍さんへの支持率も変わってくる。今のところ、“大きく進展しない”という厳しい見方もあるが、北方4島の帰属を認めるだけでも成果だ。マイナスの結論さえ出なければよしとできる。また、今は喫緊の安倍内閣の支持率も60%と高いし、野党の選挙協力もモタモタしているので、自公で3分の2は獲れるだろう」(同)。今のところ、「解散総選挙に打って出るなら、年明けの通常国会冒頭解散、1月末から2月頭にかけての総選挙ではないか」と見越す自民党幹部もいる。「12月14日で閉じて、日露首脳会談を見た後、12月末には安倍首相が真珠湾を訪問して、不戦の誓いをすることが決まりました。これでまた支持率が上がるでしょう。その後、少し時間を置いて、年明けの通常国会を早めに招集して冒頭解散、1月から2月頭にかけての総選挙…という目論みです。トランプが就任した後になりますが、大義を『新しい国際秩序の激動の1年になるが、安倍政権に舵取りを任せてほしい』として解散する。この時期なら、来年度予算も間に合うギリギリのタイミングですからね。これから先、トランプのマイナス影響を受ける可能性を考えれば、やはり早くやったほうがいいのではないでしょうか」。

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客観的な事実として、自民党の全国の地方組織に事務方を通じて出された早期解散への警戒態勢は、「今現在(※本稿執筆中の12月7日)は未だ解かれていない」(県連幹部)、「年明けの仕事始めの日程が未だ決まっていない」(別の県連幹部)等がある。ただ、一方では「解散すべきでない」という声もある。官邸では、菅義偉官房長官が一貫して“慎重姿勢”で、「今やれば、野党共闘はそれなりに進み、30議席は落とす。折角3分の2あるのだから、もっと(解散は)先でいい」(菅氏に近い自民党議員)と話しているという。また、自民党政調担当幹部は、「内閣支持率は高いが、同じ世論調査でも、個別政策のTPP・年金制度改革関連法案・自衛隊の駆けつけ警護等は何れも反対が多い。個別政策が影響する選挙区等は苦戦する」との見通しだ。自民党選対本部は、今のところ、総選挙に向けた世論調査は行っておらず、「日露の結果や、会期が再延長になれば、解散の実現性は高まるが…」と、当面は様子見の姿勢。勿論、最後は首相の腹一つではあるが…。それにしても、トランプ勝利によって、官邸内では役所同士の罵り合いが起き、挙げ句の果ては“解散”にまで影響が出てきてしまった。「アメリカがくしゃみをすれば日本が風邪を引く」等とも言われ、常にアメリカの従属国とも揶揄されてきた日本だが、今回のトランプ新大統領誕生を巡っても、やはり日本はここまで既に振り回されっ放しだ。安倍政権の日米外交は、果たして腰を据えてしっかりやれるのか、甚だ疑わしい。


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