【中外時評】 パパも育休、追い風吹く――進む意識改革、巨岩割れるか

子育てにもっと関わりたい。子供の成長を見守りたい――。そう父親が願っても、中々時間が取り難いのが日本の現状だろう。数字を見れば明らかだ。例えば、育児休業をどれくらい取っているか。女性は81.5%なのに対し、男性は僅か2.65%(昨年度)だ。政府は2020年までに13%にする目標を掲げているが、未だ遠く及ばない。日々の育児・家事に費やす時間も長くはない。目を離すことができない0~5歳の小さな子供。その父親でさえ、1日平均1時間ほどだ。欧米の3分の1ほどの水準に止まっている。だが、状況は遂に変わるかもしれない。父親の育児に追い風が吹き始めている。先月1日に『改正育児・介護休業法』が施行された。大きな柱の1つが、同僚や上司からの嫌がらせ防止策だ。女性へのマタハラは勿論、男性へのパタハラも対象となる。パタハラって? 耳に馴染みがない言葉かもしれない。“父性(パタニティー)”と“嫌がらせ(ハラスメント)”を組み合わせたものだ。相談を受けた上司が、「男が取るなんてあり得ない」と言う。同僚が、「自分なら取らない。あなたもそうすべきだ」と繰り返す。そのようにして諦めざるを得ない状況に追い込むことがないよう、企業は対策を取る義務を負う。先月末には、次なる改正案も国会に提出された。子供が生まれるとわかったら、会社から社員に個別に育休の制度を伝える。これが努力義務になる。女性より男性は制度に詳しくないことが多い。会社が声かけをすることで、ハードルは少し下がるのではないか。育児の為の休暇制度も、同様に努力義務となる。審議が順調に進めば、今年10月から施行される。父親の育児を後押しする施策は、過去にも打ち出されてきた。経済面での不安を減らそうと、育休中の給付金を引き上げる。妻が専業主婦であっても休めるようにする。少子化対策としても、女性の活躍の為にも役立つと期待されたが、状況は中々変わらなかった。

職場の長年の意識や風土、そしてその背景にある硬直的な長時間労働。これらが大きな壁になっていた。そこを変えていく機運が、今まさに高まりつつあると言える。企業も動き出している。『みずほフィナンシャルグループ』は昨年、“男性の育休100%”を目標に掲げた。同社の昨春時点の取得率は1.5%。これを2018年度中に100%まで持っていくというのだから、大きな変化だ。何故100%か。「カルチャーを変えることが狙い。その為に、全員の取得を目指している」と同社グローバル人事業務部の宇田真也部長。「より生産性を高め、両立し易い働き方に変えていく。その契機にしてもらいたい」という思いが滲む。同様に、100%を掲げる企業は少なくない。『日本生命保険』が早くから取り組んだ他、『大和証券』・『大成建設』等業種も幅広い。数字を掲げていなくとも、後押しする企業は増えている。多くの場合、男性社員が休む期間は女性より短めだ。5日程度のことも多い。「そんな短期の休みで意味があるのか?」という声はある。だが、期間の長短を論じても、物事は中々前に進まない。海外には、育休期間の一部を父親に割り当てる“クオータ制”を持つ国もある。これを求める声もあるが、日本の現状を考えれば現実的とは言えない。先ずは、子育てで休むことを当たり前にする。ここから次の一歩に繋げていくことが大切だ。育休は決してゴールではない。休んでも互いにカバーし合えるような分担の仕方を考える、短い時間でも効率的な働き方を工夫する――。業種や職場によって、様々なやり方があるだろう。日本は今、少子化と労働力人口の減少に直面している。男女共に働きながら子育てできる環境を整えることが欠かせない。今後は介護と向き合う人も増えていく。意識改革と働き方改革は、多様な人材が力を発揮する為のプラットホーム作りだ。育児の後押しは、謂わば小さな鑿と金槌のようなものだ。大きな岩山を一気に吹き飛ばすようなダイナマイトではない。岩山を穿つ音は今、彼方此方から響いてきている。穴は着実に広がっていく。小さな罅がきっかけになり、思ったよりも早く割れることがあるかもしれない。視界を遮ってきた大きな岩が無くなった時、目の前には新しい風景が広がっていく。 (論説委員 辻本浩子)


⦿日本経済新聞 2017年2月12日付掲載⦿
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