【ブラック企業をブッ潰せ!】(10) 限界に達した日本の職能制度…ブラック是正へ職能給との折衷も

20170213 07
社員に長時間労働を強いる、所謂“ブラック企業”が跋扈している。ブラック企業が社会的な批判を受けて、一般のホワイト企業へと変貌を目指したところ、競争力を喪失して経営危機に直面する等という事例も散見されるが、これからもっと発生するかもしれない。日本では今後、生産年齢人口が減っていく中、企業にも“働き方改革”が求められている。ただ、働き方改革となると、単純に労働時間の問題ばかりではなく、評価制度・上司と部下の関係・人事システム等、多くの要素が絡んでくる為、簡単ではない。改革の為には先ず、日本企業の特徴を把握することが不可欠だ。その上で、他国の優れたシステムを日本企業の土壌に合うように改変し、導入することも重要だ。「成果主義が幅を利かせる会社では、殆ど出勤しなくても、偶にホームラン級の仕事をする社員の評価は高い。一方、毎日時間通りに出社し、残業をしても、ヒットが出ない社員の評価は低い」。そう話すのは、ある広告代理店の役員だ。個人プレーで上手くやる人は、日本企業にはそれほど多くない。寧ろ、コツコツと働き、偶にヒットを打つ社員のほうが大部分である。この為、組織としてのブラックの排除は難しい。尤も、どんな企業でも長時間労働を伴う時期はある。会社の創業期、起業家を始め、社員は皆が必死で何時間も働く。でないと、会社は潰れてしまうからだ。『パナソニック』の松下幸之助氏や『本田技研工業』の本田宗一郎氏等、歴史に残る経営者は社員と一緒に死にものぐるいで働いた。「働きたい」とする人の“意思”があれば、どれほど長時間働こうと、働く本人にとってはブラックではないかもしれない。別に長時間労働を推奨するつもりはないが、猛烈に働かなければならない時は必ずある。とはいえ、一方で、そうした意思とは無関係なブラック企業は存在する。ある電機メーカーの幹部は、仕事を発注していた大手広告代理店の社員の仕事ぶりを、こう振り返る。「大手広告代理店はコネ入社が多い。その社員たちは、入社試験を経て入った社員に比べて仕事ができないことが多かった。その分、他の社員、更に代理店の下請け企業に皺寄せが行き、彼らに過重労働が発生していた」。この例では、“コネ入社が多い”という会社のシステムに、過重労働の原因がある。

このように、意思とは関係のない過重労働が発生するのは、企業のシステムそのものに問題がある。特に、日本の大企業を見ると、ある共通のシステムが長時間労働の原因となっている。それは、“終身雇用”と“年功序列”を支える為に1970年代前半に各社が相次いで導入した“職能資格制度”だ。職能資格制度の導入以前は、係長から管理職の課長、更に部長と昇進、即ち役職が上がらないと賃金等の処遇は上がらなかった。職能資格制度導入により、役職と処遇が分離される。会社により呼び方は様々だが、主事や参事等と資格が上がれば、部下がいるかどうかに関わりなく、処遇は一緒になったのだ。何年に入社したかで横並びに昇格させていく、“人”を基準とした年次管理ができていく。この終身雇用と年功序列は、右肩上がりの成長が前提だった。バブル経済が崩壊して1990年代に入ると、管理職を対象に“成果型賃金制”が一部で始まる。これは、総賃金コストを予算化して抑制する狙いがあった。この為、1990年代半ばからリストラが横行。欠員は補充されず、残った社員たちは長時間勤務に追われた。同時期には、システムエンジニア等の専門職を対象とする裁量労働制が始まる。経営コンサルタントの大澤智氏は、「結果として、対象職種での長時間労働を招いた」と指摘する。また、厚生労働省の調査を基にしたある分析では、日本企業の従業員に占める管理職の構成比は、1996年が17.9%だったのに対し、2006年には29.1%と、10年間で11.2%も増大した。増えたのは部下を持たない管理職で、2006年は管理職の約2割を占めた。これは、戦後生まれの団塊世代が40代後半を迎えた時期と重なったのが大きいが、どうもそればかりではない。販売や飲食の現場等ではこの時期、残業代がつかない“名ばかり管理職”として長時間勤務を強いられるケースが目立った。バブル崩壊後の“失われた時代”、安く長く人を働かせることに競争力を求めた企業は確かにあったし、今もある。こうした日本型労働の慣行を改革する上で参考としたいのが、アメリカ企業の働き方だ。先ず、アメリカ企業には長時間働く慣行は無いのか。シリコンバレーにあるアメリカ系企業での勤務経験の長い大澤氏に聞くと、「日本の労働基準法に当たる公正労働基準法(FLSA)から除外される“エグゼンプト(exenpt)”、即ち残業代支給対象外の労働者として採用されると、1日16時間以上働く。日本企業の管理職に当たるエグゼクティブになっていない若い社員も含めてだ」と指摘する。アメリカ企業は、職能資格ではなく職務給。“ペイフォージョブ”と呼ばれ、職務にお金がついてくる仕組みだ。マーケティング部門の責任者なら、例えば基本給20万ドルと成果給10万ドル(※半分は株で支払う)、購買責任者なら其々5万ドルと3万ドルといった形だ。

20170213 08
マーケティング・購買・開発・国際等、部門によって格が異なり、同じ部長クラスで年収は違う。日本企業のように、人事部が社員の人事権を持つことはなく、部門長が異動・昇格・解雇等の人事権を持つ。日本企業は“人にお金がついてくる”のに対し、アメリカ企業は“仕事にお金がついてくる”のだ。日本人は総合職で会社に忠実なのに対し、アメリカは専門職で職務に忠実とも言える。アメリカ企業のエグゼクティブは概ね3%しかいないが、年収は非常に高く、社内の年収格差は大きい。日本企業の管理職は20~30%を占め、年収格差はアメリカ企業に比べればそれほどではない。能力不足と評価されてしまう等して解雇されることは日本に比べて多いが、アメリカでは“それなりの会社でポジションに就いた”という実績があれば、転職は容易だ。ただ、日本企業が職務給制を導入するのは構造上、難しい。大卒一括採用が主流であり、組合員なら皆、“ノーエグゼンプト”(※労基法の対象)である。それでも、グローバル化の波に直面する中で、日本企業も職務給の要素を取り入れていく必要に迫られる。さもなければ、世界から優秀な人材を確保できない上、日本の優秀な若者が海外に行ってしまうからだ。日本の職能資格制は謂わば、人事のシステムとして“ガラパゴス”状態なのである。こうした中、日本型労働の慣行にアメリカ型のメリットを柔軟に取り入れた人事で注目したいのが、『キリンホールディングス』の取り組みである。同社は10年ほど前から、職能資格と職務給とを併用した人事システムを導入している。従来、管理職になる年齢より若い社員でも、管理職となり、統括部長や研究所の幹部といった高いポジションの仕事を担えるのだ。つまりは、若くして重要ポストに就けるのである。目標管理による成果部分は厚くなるが、達成すれば年収は大きく増える。更に、組合員も対象とした職務の公募制も、1990年代から運用している。この先、アメリカのように、職務の内容が明確に示される職務給制を導入し、部下に職務外の仕事をさせて長時間労働をさせてしまった管理職にペナルティーを科す仕組みを入れれば、長期間労働の回避に繋がる。管理職は、“部下の残業規定を職務毎に盛り込める”といったメリットもある。また、日本では未だ成熟していない中途採用市場が今後拡大していけば、若くして重要ポストを経験した人材は、いざとなれば現在の会社を辞めて転職する道も開けてくるのだ。 (取材・文/フリージャーナリスト 永井隆)


キャプチャ  2016年12月13日号掲載
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