【科学捜査フロントライン】(11) 「公正中立な鑑定が難事件を解決に導く」――冨田光貴氏(『法科学鑑定研究所』所長)インタビュー

当シリーズで科学鑑定の最新技術を紹介してくれた『法科学鑑定研究所』。今回は、捜査機関や裁判所等から科学鑑定を受任している同所の冨田光貴所長に、民間の鑑定機関の必要性を訊いた。 (聞き手/フリーライター 永井孝彦)

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――どのような経緯で、法科学鑑定研究所は設立されたのでしょうか?
「元々、民間による鑑定はありました。例えば、科捜研のOBで、筆跡であれば筆跡だけを何十年も続けてこられた先生がやっていた訳です。ですから、一般の方は、民事で何か鑑定が必要な時は、其々の専門の先生に依頼していました。しかし、鑑定は総合的な見地に立ったほうが好ましい場合も多い。一例ですが、1枚の文書の鑑定を行うに当たり、筆跡鑑定が適しているのか印影鑑定が適しているのか。そうではなく、DNA型鑑定や指紋鑑定等と組み合わせて行ったほうが、有効な結果が得られる場合もあります。欧米では、民間の総合鑑定機関が多くの刑事や民事案件の科学鑑定を行い、社会的な地位を確立させていますが、日本にはその機能を十分に果たす機関が無かったことから、当研究所はスタートしました」

――現在、東京のオフィスでは何人の方が働いているのですか?
「12人です。他にも、嘱託鑑定人として在籍頂いているスペシャリストの先生方や、国内外の専門機関と提携して、あらゆる科学鑑定に対応できる体制を整えています」

――オフィスには20代・30代の若い方が多いですね。警察OBの方々が中心だと思っていたので意外です。
「国内外の大学出身者で、理系専攻の若手研究者が中心です。日本の警察OBの他、外国の現職捜査官に師事する研究者もいます。『こういう科学的な鑑定技術は、広く民間でも運用されるべきである』と賛同して下さっている方々のご指導とご協力があってこそです」

――公式ホームページを見ると、警視庁や道府県警も取引先となっています。警察からの依頼の割合はどれくらいですか?
「全体の業務量の2割くらいが警察です」

――警察は自前の鑑定機関を持っていますが、何故依頼があるのでしょう?
「警察からは画像鑑定とDNA型鑑定の依頼が多いのですが、これらの鑑定は職人技的要素があります。何かボタンを押せばソフトウェアや機械が勝手にやってくれるものではなく、経験とそれに裏打ちされた技術が必要な訳です。日本の警察は極めて高い鑑定技術と経験を有していますが、犯罪の多い地域とそうではない地域もあり、鑑定において日本全国津々浦々の警察が等しく経験を積んでいるという訳ではないことが1つ。もう1つは、スピードが要求されるような事案の鑑定です」

――科捜研のサポートということですね?
「先程も申し上げましたが、科捜研は極めて高い鑑定技術と経験を有しています。例えば、DNA型鑑定の場合、いつも100%の結果が得られれば良いのですが、現場資料の良し悪しで70%の結果しか得られないようなこともあります。そのような場合、残りの30%に対して異なるアプローチでセカンド検査を試みるのが、我々民間の鑑定機関です」

――よく知られている事件で、鑑定に関わったものはありますか?
「ニュースに出るような事件で、水面下でお手伝いさせて頂いたものは数多くあるのですが、守秘義務があり、具体的には挙げられません」

――民事はどんなクライアントが多いのですか?
「最も多いのは弁護士からの依頼で、親子関係のDNA型鑑定・遺言書の筆跡鑑定・交通事故鑑定が中心です。交通事故鑑定では、実際に事故がどのようにして発生していたのか、スピードが何㎞出ていたのか等を検証します。また、保険会社からは、誰が運転していたのかを調査する鑑定依頼が多くあります。若し運転者が酒を飲んでいれば、当然、免責ですから」

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――他に、一般企業からの依頼はありますか?
「一般企業からは様々な鑑定依頼があります。近年増加しているのが、自社製品の異物混入事件に対する鑑定です。この他、社内の窃盗事件に対する防犯カメラの画像解析や指紋鑑定、社員が経費として提出する領収書の改竄検査等で、段ボール一杯の領収書が持ち込まれることもあります。あと、怪文書の鑑定も非常に多く、誰が作成したものかを指紋鑑定やDNA型鑑定等を用いて探ります」

――個人からの依頼もありますか?
「勿論、あります。やはり、親子関係のDNA型鑑定が多く、有名人による親子官邸が報道されると、依頼が急増します。離婚係争中の場合、子供を妻が引き取れば、夫は養育費を払っていくことになりますから、夫としては念の為であっても、『本当に自分の子供かどうかを確認しておきたい』というケースが多いです。反対に、『出産した子供が夫の子なのか、それとも不倫している男性の子なのかを確認したい』という妻からの依頼もあります。どちらのケースにおいても、辛い結果が出ることが少なくありません」

――やはり、金銭が絡む案件が多い訳ですね。
「民事の場合は殆どがそうですね。浮気調査の依頼も数多くあります。慰謝料や離婚条件の設定に大きく関わりますから」

――具体的には、どのような調査をするのですか?
「基本はDNA型鑑定です。下着に付着した体液から着用者本人以外のDNAが検出されれば、浮気が疑われます。更に、浮気相手の特定も可能になります。下着の他、使用済みティッシュ・避妊具・アダルトグッズが持ち込まれることもあります。後は画像データの改竄ですね。日付を変えてアリバイを作る訳ですが、パソコンに詳しい人がデータを弄ったとしても、改竄の痕跡は残ります」

――民事の裁判で、鑑定結果がどのように使われているのですか?
「我々が提出する検査報告書や鑑定書は、基本的に裁判所や弁護士等の法律家を交えた話し合いにおける1つの客観的資料という位置付けです。しっかりとした科学的根拠を示した結果であったとしても、その結果のみで裁判の勝ち負けが決まる訳ではありません。しかし、方向性を左右する重要な役割があることは確かです。時には、依頼者にとって期待に反する不利な鑑定結果になることもありますが、そういう時でも嘘偽りの無い真実を提出します」

――仕事として法科学鑑定に携わる中で、法科学鑑定の意義はどのようなものだと考えていますか?
「ドラマ等の題材になることで、科学捜査というものが広く知られるようになりましたが、法科学鑑定がどのようなもので、一個人の生活とどのような関わりがあるのかを認識している人は少ないと思います。しかし、誰でもある日突然、交通事故の被害者になるリスクがあります。サインをした覚えのない借用書が出てきて訴えられるかもしれません。以前に交際していた女性から、見てもいない子供の養育費を請求されるかもしれません。いつ何時、思いもよらない大きなトラブルに巻き込まれるかもしれません。いざ自分に降りかかってきた時は、客観的で科学的な証拠を用意し、自分の名誉と財産を守らなくてはなりません。また、濡れ衣を着せられた場合は、何としてでも疑いを晴らさなくてはならないでしょう。そういう時に、客観性のある真実を示すことができるのが法科学鑑定なのです」

――今後の法科学鑑定の課題は何だと思いますか?
「民間で行われている法科学鑑定の中には、残念ながら、十分な検証がなされないまま、依頼者偏向の立場で作成された報告書や鑑定書を目にすることがあります。民間における法科学鑑定の信頼性をより高いものにし、広く一般に認められる地位を確立するには、当たり前のことですが、鑑定技術の向上だけではなく、我々の鑑定結果によって関係者の名誉や財産に多大な影響を及ぼす可能性があることを自覚すると共に、公正且つ中立に鑑定を行うブレない意志を持ち続けることが絶対に必要です。この継続こそが、法科学鑑定に従事する全ての人への課題だと思います」


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