調剤薬局で偽造薬品、背景に経営悪化の構造問題――高額薬がターゲットに、“時給5000円”“家付き”待遇

20170214 09
C型肝炎治療薬『ハーボニー配合錠』の偽造品問題の全体像が見えてきた。偽造品は、奈良県を中心に59店舗を展開する薬局チェーン『関西メディコ』の店舗で受け取った患者の通報で発覚した。製造元の『ギリアドサイエンシズ』が関西メディコの店舗を調べ、偽造品5ボトルを発見。その後、厚生労働省が流通経路を追跡し、複数の問屋で更に10ボトルが見つかった。ハーボニーと差し替えられた中身は、サプリメント『ネイチャーメイド スーパーマルチビタミン&ミネラル』や漢方薬『小青竜湯』等。偽造品を問屋に持ち込んだ人物は特定されていないものの、大手卸を介さない非正規ルートの実態が明らかになった。見つかった偽造品には外箱や添付文書が無かったが、ボトルの外観は正規品と同じ。病院で廃棄されたボトルを流用した可能性が高い。ギリアドは、来月上旬までにボトルの使用を中止し、新たな包装方式を前倒しで導入する。調査会社『アイエムエスジャパン』によると、ハーボニーは昨年7~9月まで4四半期連続で国内医療用医薬品の売り上げトップ。価格は28錠入りボトルが約153万円。『小野薬品工業』の癌免疫薬『オプジーボ』と並ぶ高額薬の代表で、偽造の対象として目を付けられた可能性がある。従来、国内で見つかる偽造品は、インターネット通販を通じて個人輸入したものが大半だった。それに対し、今回は調剤薬局が処方したもの。偽造品を手にした患者は、服用前に異変に気付いた為に、健康被害者は出なかったが、調剤薬局への信頼が揺らいでいる。

通常、調剤薬局は『メディセオ』や『スズケン』等の大手卸から医薬品を仕入れる。だが、関西メディコは昨年5月、東京や大阪の“現金問屋”と呼ばれる業者からの仕入れを開始。現金問屋とは、調剤薬局の在庫等を現金で買い取り、それを大手卸よりも安く売る中間業者。少量多品種の在庫を抱える薬局では、在庫が膨らみ易いこともあり、現金問屋は調整弁として機能している。関西メディコは現金問屋との取引について、一部メディアに「安かったので仕入れた」等とコメントした。ただ、中小の『パパママ薬局』ならいざ知らず、関西メディコは奈良県最大のチェーン。「購買力を生かせば大手卸とも有利に交渉できた筈」と、東京都内の薬局経営者は首を傾げる。今月3日に厚生労働省で開かれた『医薬分業指導者協議会』でも、関西メディコへの批判が集中。『日本薬剤師会』の山本信夫会長は、「『患者や国民の命を、薬剤師は一体どう考えているのか?』と問われても仕方がない。このようなコメントをする薬剤師資格を持った仲間がいることに、嫌悪感を抱く」と強く非難した。ただ、偽造品の原因が「関西メディコの管理体制だけにある」とは言い切れない。非正規の流通ルートが広がる背景には、調剤薬局全体を覆う苦境がある。その1つのきっかけが、昨年4月の調剤報酬改定だ。“月間に法人としての処方箋受け付けが4万回を超え、特定の医療機関への集中率が95%超の薬局”の基本調剤料が引き下げられた。病院近隣の“門前”立地に頼る調剤薬局チェーンに対し、患者により高い付加価値を提供する経営を促す意図がある。この改定が、中堅の調剤薬局チェーンを直撃した。薬局専門のM&A(合併・買収)を手掛ける『MACアドバイザリー』の花木聡社長は、「一般的に30店舗を超えてくると、受け付け回数が4万回に届く」と話す。『アインホールディングス』や『日本調剤』のような数百店舗を傘下に持つ企業は、M&AやIT投資等によって効率を高めることで乗り切れる。

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一方で、余裕が無い中堅以下の薬局チェーンでは、「多くが赤字に転落する可能性がある」(同)。関西メディコも収益減が直撃する中堅で、調剤報酬改定の翌月に現金問屋からの仕入れを始めている。調剤薬局の収益悪化に拍車をかけているのが、薬剤師の人件費高騰だ。調剤薬局の出店ラッシュが起きたのは2000年前後。それから約20年が経過し、当時製薬会社のMR(医薬情報担当者)から転じた薬剤師の多くが、引退の時期に差し掛かっている。更に近年、薬剤師の研究職や病院勤務志向が強まっており、薬局を選ぶ若手も大手企業に流れがちだ。人材派遣会社のウェブサイトを比較すると、地方での薬剤師の人手不足は顕著だ。一般的な派遣会社における高給業種はIT技術者や通訳で、時給は3000円台が多い。一方で薬剤師専門サイトを覗くと、地方では時給5000円強の求人が珍しくない。“住居付き”・“引っ越し代全額負担”・“年収800万円超”等、景気の良い言葉が並ぶ。人件費増は当然、薬局の経営を圧迫する。売価から仕入れ値を引いた薬価差益は縮まり、調剤薬局は儲かり難い構造が続いている。加えて、ジェネリック(後発薬)も取り扱わなければならなくなり、在庫は膨らみ易い傾向にある。薬価改定が毎年になれば、仕入れ業務での負担は増す。ドラッグストアと違い、調剤薬局の業界は集約が進んでいない為、大半が零細企業だ。国は『健康サポート薬局』という制度をスタートし、目指すべき薬局像を示している。だが、夜間・休日・在宅への対応等、高いハードルを越えるのは大手でないと難しい。仮に健康サポート薬局になれても、現状では売上増に直結し辛い。今月初旬段階では、再発防止に向けた具体策は発表されていない。一握りの業者による悪質な事件なのか、それとも薬剤費抑制が生んだ構造的な問題なのか。どちらと見るかによって、その中身は変わってくる筈だ。 (取材・文/本誌 上木貴博)


キャプチャ  2017年2月13日号掲載
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