【読解力が危ない】(04) 本離れ防げ…魅力伝える

20170215 02
先月27日夜、JR東京駅近くのイベント会場は、約300人の熱気に包まれた。来場者が耳を傾けたのは、6人の書店員によるお薦め本のアピール。ジャンルは、小説から言語学を扱ったノンフィクションまで幅広い。『ビブリオバトル』と呼ばれるゲームで、5分間の発表時間内に本の魅力を紹介し、来場者が読みたい本を投票で決める。ゲスト参加した作家の浅田次郎さん(65)は、「本を読むと、自分の中で想像力が膨らむ。それから美しく楽しい時間が過ごせる。これがやっぱり、読書の素晴らしさだと思う」と語りかけた。取り組みは約10年前、大学院の勉強会で取り上げる本を探す為に発案された。『ビブリオバトル普及委員会事務局』によると、昨年は外部に公開されたものだけでも、全国で1271回が開かれた。本を手に取るきっかけ作りとして注目されており、近年は中高生や大学生がお薦め本を紹介する大会も増えている。ただ、若い世代の本離れは深刻だ。『全国大学生活協同組合連合会』(東京都杉並区)の2015年の調査によると、1日の読書時間がゼロの大学生の割合は45.2%で、34.5%だった2012年以降、増加し続けている。

高校生も同様で、『全国学校図書館協議会』(東京都文京区)の2016年調査では、1ヵ月に1冊も本を読まない生徒が、2013年より12.1ポイント増えて57.1%に上った。こうした状況に、出版社も危機感を強めている。『新潮社』は2013年から、『中高生のための新潮文庫ワタシの一行大賞』を始めた。前年までは読書感想文コンクールを行っていたが、心に残った1行を選び、理由を纏める形式に改めたところ、約1万通だった応募が倍増した。同社広報宣伝部の馬宮守人次長(56)は、「自分の感性で1行に纏わる体験を語れる点が受け入れられた」とみている。高校生が直近1年の直木賞候補作から1作を選ぶ『高校生直木賞』という取り組みもある。『文藝春秋』が支援しており、全国大会では各校代表が激論を交わす。昨年は30歳女性が主人公の作品が選ばれたが、「心がえぐられ過ぎて辛い」「自分が成長したら、もう一度読み返したい」等の意見が3時間半も出続けた。ビブリオバトルを考案した立命館大学の谷口忠大准教授(38)は、「これまで読書のインプットの面ばかりが強調されてきたが、中身を理解し、自由に表現するアウトプットにも光を当てるべきだ」と指摘する。本を読み、自分の考えを表現する――。それが読解力向上に繋がる。


⦿読売新聞 2017年2月2日付掲載⦿
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