ヒット作連発の裏で利益独占・製作スタッフ搾取…守銭奴映画会社『東宝』のボロ儲けシステムを暴く!

『シン・ゴジラ』や『君の名は。』等のヒット作を飛ばし、邦画界で一人勝ち状態の『東宝』。だがその裏では、『ドワンゴ』の川上量生が跳梁跋扈し、制作スタッフや若手監督が少ない報酬で搾取されていた。そんな日本映画界のブラックな実態とは――。 (取材・文/フリージャーナリスト 小石川シンイチ)

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観客動員420万人・興行収入61億円と、平成ゴジラシリーズ以降、最高動員を記録したことが明らかとなった『シン・ゴジラ』。日本で初めてフルCGで表現されたゴジラが、“巨大不明生物”として東京湾に登場し、川崎市・大田区・千代田区と日本を破壊しまくる。ゴジラに立ち向かう政府関係者は、内閣官房副長官(長谷川博己)・内閣総理大臣補佐官(竹野内豊)・アメリカ大統領特使のカヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)だ。ゴジラが暴れ回り、アメリカ軍は総攻撃を計画するにも拘わらず、儀礼ばかりの大会議で何も決まらない内閣は、2011年3月の東日本大震災による東京電力福島第1原発事故における当時の民主党政権のバタバタぶりを彷彿とさせる等、極めてシニカルな視点も持ち合わせていることも、ヒットの要因だろう。「今回のゴジラは12年ぶりに日本で作るもので、公開までネタバレを防ぐ為にマスコミへの試写も限定し、口コミ効果を狙いました。元々、ゴジラが好きだった40~50代の男性が中心でしたが、総監督が庵野秀明氏とあって、エヴァンゲリオンを親しむ20~30代の観客が集まるようになりました。また、庵野監督らしく、大量の情報量を詰め込んでいるので何度か見たほうが楽しめるとあって、リピーターが増加したのです」(映画評論家)。脚本・総監督は、テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズで海外にも多くのファンを持つ庵野秀明。監督・特技監督は、平成ガメラシリーズで特撮監督を務め、『進撃の巨人ATTACK ON TITAN』で監督を務めた樋口真嗣だ。現代の怪獣特撮においては、これ以上ない陣容である。「また、今回の作品は、同じ東宝のヒットアニメ“君の名は。”が製作委員会方式を採っているのとは対照的に、製作委員会方式ではないということが大きな特徴です。東宝は、複数の企業に出資させる製作委員会を一大ビジネスモデルとして構築してきました。今回 は、庵野総監督が製作委員会方式を好まないタイプの上(※『エヴァンゲリオン新劇場版』は全て庵野の製作会社『カラー』等の自社製作)、東宝映画の市川南社長が責任を背負い、権利を独占しようという目論見が成功しました」(同)。

製作委員会では、テレビ局・出版社・新聞社・広告代理店等がスポンサーになることで、売上のリターンとそのメディアの権利が手に入る。一方で、映画会社としては、万が一コケた場合のリスク分散ができる上、メディアが積極的に宣伝してくれる恩恵も受け取れる。元々は、『風の谷のナウシカ』(東映)が『徳間書店』と大手広告代理店『博報堂』による製作委員会方式を採用したのがきっかけとされている。つまり、リスクを極度に嫌う日本の風土の下で『スタジオジブリ』が成功できたのは、製作委員会方式があった為とも言えるのだ。「但し、製作委員会方式はスポンサーへのリターンを計算しなければなりませんし、中身にも配慮する必要がある。例えば、“君の名は。”はベタベタなストーリー展開ですし、中堅の広告代理店“ジェイアール東日本企画”が出資している為、鉄道のシーンが象徴的に使われていますよね。“シン・ゴジラ”でも、何故かゴジラはJR東京駅と向かい合っています(失笑)。最後も東京駅が舞台となりますが、若しJRがスポンサーに入っていれば、あそこまで破壊できたかどうか…」(同)。シン・ゴジラの大ヒットは、東宝らしくない“脱・製作委員会手法”が要因となったのかもしれない。もう1つの大きな要因は、これまでのゴジラシリーズとは違い、政財界との強固なパイプができたことだ。霞が関のリアルな設定は入念な下見が可能だったからで、ボロ負けの展開にも拘わらず自衛隊の全面協力を得ることができたのも、この政財界との強固なパイプがあったからだ。「そのパイプとは川上量生氏です。川上氏は元々ゲームオタクで、後に“ニコニコ動画”を運営するドワンゴを設立し、その処世術の巧さから角川歴彦氏に食い込み、カドカワ代表取締役社長に上り詰めます。更に、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーにも食い込み、スタジオジブリのプロデューサー見習いとして働いた経験から、今やジブリファミリーの一員になっています。最近では、NHKのドキュメンタリー番組で障碍者を愚弄するようなCGを作成し、宮崎駿氏から激怒されているシーンも公開されましたが(失笑)。ジブリを通して、ジブリ作品を上映する東宝や、庵野氏とも関係が構築できました。庵野氏が2006年に立ち上げた製作会社カラーの取締役にも2013年から就任する等、庵野氏からの信頼も深いのです」(経営ジャーナリスト)。政界との関係でいえば、過去に川上氏は小沢一郎氏に7年間に亘って政治献金をして信頼を獲得し、ニコニコ動画で小沢氏の番組を独占できたエピソードがあるが、それ以上に深い人脈が以前からある。「ゲームオタク仲間で、ドワンゴの取締役にもなっている“麻生グループ”の麻生厳氏は、財務省・麻生太郎大臣の甥で、政財界に顔が利くのです。ジブリの鈴木プロデューサーに川上氏を紹介したのも麻生氏です。また、川上氏の妻は経済産業省のキャリア官僚で、クールジャパン戦略を進める部署にいました。川上氏は2013年に結婚しましたが、その披露宴の司会は庵野氏が担当したほどです」(同)。

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川上氏は、嘗ての氏家齊一郎氏(『日本テレビ』会長・故人)のような「文化の庇護者になりたい」と豪語し、今や政財界とエンターテインメント業界の橋渡し役を買って出ている(※氏家氏は日本テレビ副社長時代からジブリとの提携を推し進めていた)。“現代の政商”を目指しているのかもしれない。「但し、川上氏の人脈は、自民党・読売グループ・経産省という旧来型の“原発ムラ”という枠組みに留まってしまう。“シン・ゴジラ”を見てもわかるように、民主党政権は批判するものの、その後の自民党政権までも批判するような内容ではない。原発事故を想起させるようなストーリーにしながら、肝心の被災者は描かない等、常に現代日本の既得権者が喜ぶような映画になってしまったのです」(同)。それにしても、最近の日本映画界は東宝の一人勝ちだ。2015年の上位(邦画)を見ても、『妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』(78億円)・『バケモノの子』(58.5億円)・『HERO』(46.7億円)・『名探偵コナン 業火の向日葵』(44.8億円)・『映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記』(39.3億円)と、東宝が上位を独占している。2014年には『永遠の0』(87.6億円)、2013年にも『風立ちぬ』(120.2億円)と上位独占の上、他にも大ヒット作品を次々に放っている。「東宝は、よく言えば柔軟、悪く言えば無節操。“風立ちぬ”は反戦映画でしたが、翌年公開の“永遠の0”は戦争賛美でしたし。2003年に“ヴァージンシネマズジャパン株式会社”(現在の『TOHOシネマズ株式会社』)を買収したことにより、現在、全国に626館の上映館を所有。それに見合うだけの大作が求められる一方で、予算も他社と比べて桁違いなのです。この為、全館で上映した場合には、事実上、上位にランキングできるのです」(前出の映画評論家)。

こうしたシステムは、映画が不人気だった1970~1980年代に構築されたものだ。「東宝は元々、戦時中に阪急グループ創始者である小林一三が東京に進出する際、当時の大歓楽街だった浅草に対抗し、『有楽町を一大歓楽街にしよう』と、有楽町駅周辺の開発計画を進める為に設立されたのがきっかけです。小林一三の考えは、当時、大流行の映画館を作ること。しかも、『映画の製作から上映まで一手に引き受ければボロ儲けができる』と考えて、駅前の不動産を買い進めたのです。戦後、隆盛を極めた映画業界ですが、テレビにその主役の座を奪われると、流石の東宝も経営が危ぶまれるようになりました。しかし、そんな東宝の経営を支えたのは、売上高の3~4割を占めるとされる不動産の賃貸収入だったのです。つまり、不動産の賃貸収入で安定している為、映画が大きくコケない限り経営は安泰というビジネスモデルを構築できたのです」(前出の経営ジャーナリスト)。更に、1980年代になると、映画の大コケリスクを補うかのように製作委員会システムが整備され始め、東宝にとっては安心して映画のプロデュースに専念できるような環境が整ったのだ。「東宝は不動産事業も強い。だからこそ、2015年に新宿コマ劇場跡地にオープンした新宿東宝ビルに建設されたゴジラの実物大頭部“ゴジラへッド”も話題になりました。権利関係が複雑な歌舞伎町の一等地を纏め上げられたのは、単なるエンターテインメント企業の力ではないでしょう」(同)。そして、東宝は人件費の圧縮にも成功している。「映画業界の中で、大規模なリストラを真っ先に行ったのが東宝なんです。それも、戦後直後と1970年代の2回、大規模なリストラを行っています」(労働ジャーナリスト)。1回目は、3次に亘る“東宝争議”だ。創業者の小林一三が公職追放で追われた1946年から1948年まで、戦後活発化した労働組合と経営陣の対立に加え、労組内でも思想による路線対立が起き、スト決行時にはアメリカ軍の戦車や軍用機まで撮影所に出動する戦後最大の争議となったのだ。「こうした経営陣の反動・管理化を嫌った映画監督らは東宝を離れ、更に主要な幹部は追放されました。おかげで東宝は落ち着きを取り戻しましたが、ヒット作品が出なくなります。そうした中で、小林一三が公職追放から復帰しました。そして、全国に100館の自前の劇場を持つ“百館計画”をスタートさせると共に、信頼のおける経営陣に総入れ替えします。そして新体制の下、1954年に黒澤明の“七人の侍”と、特殊技術監督・円谷英二の“ゴジラ”(本多猪四郎監督)が大ヒットして復活するのです」(前出の映画評論家)。

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1950~1960年代は、映画業界の全盛期。しかし、その後はテレビ時代の到来と、ライバルである『東映』の実録モノ大ヒットに加え、小津安二郎から山田洋次へと連なる堅実な『松竹』のファミリー路線に挟まれて、エリート臭漂う東宝の作品は次第に敬遠されるようになる。「この当時、小林一三も亡くなった東宝は、東宝争議に懲りて、新入社員は縁故採用中心で、大々的な採用は控えていました。その上、ゴジラシリーズと黒澤作品も世間から飽きられてきた為、危機感を覚えて再びリストラを行います。働き盛りの40代以上を多く抱える撮影所を“東宝映画”として分社化し(1971年)、撮影所が作る映画でも、配給の東宝側がGOサインを出さない限り上映することができなくなったのです。東宝側は事実上、配給と上映館に専念し、売れる映画を作れる製作会社であれば、東宝映画以外の映画も上映する独立システムを採用したのです。自由化という名の、体の良い首切りです。多くのスタッフはテレビ業界に流れ、他の映画会社もこの流れに従いました」(前出の労働ジャーナリスト)。今では映画製作はゴジラシリーズのみで、東宝は映画会社というよりも不動産賃貸業者であり、映画製作委員会の胴元的業者なのだ。「映画料金1800円という一律価格も、配給と上映館を押さえた東宝の力によるものとされています。また最近、映画監督の是枝裕和氏がとあるインタビューで、『(取り分は)日本だと5割が劇場で、残り5割の内の1割を配給会社、4割が製作委員会に渡る。多くの場合、監督には配分が無いんですよ。僕は交渉するようにしていますが、日本でお金の話をするのはあまり好まれない。“1%の成功報酬を交渉するのに、何でこんなに苦労しなければいけないんだろう”ってつくづく思っていた』と語り、日本映画界で若手の監督たちが活躍できない原因を指摘していました。東宝にとって、日本の映画界は都合のいい仕組みなのです」(同)。安っぽいお涙頂戴の映画を見るよりも、若手監督と製作スタッフたちが搾取される一方で、“オヤジ転がし”の川上量生的な人物が跋扈する邦画界を見ているほうが泣けてくるではないか――。


キャプチャ  2017年2月号掲載




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