日本最北端の越冬ホームレスに密着――「慣れれば全然寒くないよ」、気温-7℃の路上で寝る人々

日本最北の政令指定都市・札幌市。1月の最低気温が-7℃に達する極寒の地である。これだけ寒ければホームレスをするのは到底無理だと思われるが、そんなことはない。札幌にも年間を通してホームレスが存在する。2016年1月の『ホームレスの実態に関する全国調査』の結果では、札幌市内に33名のホームレスが確認されている(※道内全体では35名)。日本最北端のホームレスたちは、如何にして厳しい冬を越すのか。どこで寝て、何を食べているのか。非常に興味深い。11月、筆者は東京から遥々札幌へ、ホームレスの潜入取材へ出掛けた――。 (取材・文・写真/フリーライター 長田龍亮)

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札幌市中心部には、北はJR札幌駅から南は市営地下鉄すすきの駅までの、南北に1.8㎞、東西には1.2㎞に及ぶ広大な地下通路がある。地上では積雪に加え、容赦のない寒風が吹きつけていても、地下へ潜れば雪も風も無く、薄着で過ごせるほど暖かい。そこを歩くと、行き交う人混みの中、薄汚れたジャンパーに身を包み、大きなショルダーバッグを肩に掛けて歩いていたり、ベンチに座って静かに目を閉じる等、所々にそれらしき姿が目に付く。地下通路がホームレスたちの昼間の居場所になっているようだ。昼間はここで暖を取れるが、地下鉄の終電後、0時半から5時までの間は、地下通路は閉鎖されてしまう。その間は札幌駅構内にも入れない。では、ホームレスたちはどうするのだろうか? 「若しかしたら、札幌のホームレスたちにとっては“魔の5時間”なのだろうか?」等と考えながら、彼らの様子を窺った。23時、ホームレスたちの多くは、地下通路から札幌駅と隣接するバスターミナルへ移動した。間もなく、ターミナル内に全部で6ヵ所ある地下通路入り口のシャッターがガラガラと音を立てて閉ざされると、ホームレスたちはシャッター前の階段の踊り場に新聞紙や段ボールを敷き、そこに寝袋や毛布を並べ始めた。加藤(仮名・74)は、バスターミナルを寝床にして11年になる。「寒くないですか?」。愚問かもしれないが、率直な疑問を投げかけてみた。「全然寒くないよ。でも、最初の1~2年は寒くて苦労したよ。お兄さんもこれから路上やるなら覚悟したほうがいいよ。慣れるまでは本当にきついから。えっ、寝袋持ってないの? それじゃあ無理だ。寒くてとても寝れないよ」。この時、「寝袋は炊き出し会場で貰える」と教えてくれた。加藤の寝床は、バスターミナル内の階段と壁との間にある1畳ほどの空間だ。そこへ新聞紙を床一面に敷いて、更に厚手の銀マットを敷くと、その上で寝袋を3枚重ねにする。その中へ入れば寒さは感じないそうだ。「バスターミナルは、風はあるけど、雪も雨も来ないから寝るには最適だね」。

話をしていると突然、ターミナル内が消灯し、突如として辺りは暗闇に包まれた。暗くなったバスターミナル内に寝ているホームレスを数えてみると、11名であった。彼らは翌朝5時に駅の入り口が開くまで、ここで寝袋の中で身体を丸めて過ごすのだ。「どこの階段が誰の場所というのは、暗黙の了解で決まっている。皆、古い人ばかりだから、新しく来た者が矢鱈に人の場所に寝ると喧嘩になるよ」。近くに居合わせたホームレスから、そう言われた。「観光客とかサラリーマンが階段に座り込んでいることもある。そういう場合は、俺らは何も文句言わない。その人が立ち去るまで待つ。一般の人とトラブルを起こして、『ホームレスは出ていけ』ってなったら困るから」(同)。他にも、商店街のベンチで寝る者や、24時間営業の『ドン・キホーテ』の店内をうろついて時間を潰す者、ファストフード店やインターネットカフェを利用する者等、夜間の過ごし方は色々あるようだ。取材当日は、朝から雪だった。それでも「全然寒くないよ」という加藤の言葉は信じ難く、何故、こんな寒いところでホームレスをしているのか、疑問を抱いた。「もっと暖かい地域へ移動すればいいのに」と。毎週水・金曜日の13時40分から、札幌駅近くにある旧印刷工場の建物で炊き出しを行うのが、地元のボランティア団体『みなずき会』だ。温かいうどん・おにぎり2個・お茶が振る舞われ、使い捨ての髭刺り・歯ブラシ・カイロ・古着・靴下等から、冬を越すのに必需となる寝袋や防寒着まで貰える。みなずき会が活動を始めたのは15年ほど前。炊き出しには毎回、40名ほどが訪れるという。他にも炊き出しを実施している団体は幾つかあり、支援団体が定期的にホームレスの元を訪問して、何か困ったことはないか聞いて回る等、民間による様々な支援がある。「中には、ホームレスに生活保護を受けさせて保護費を搾取する“貧困ビジネス”も存在している」(支援団体職員)。ここら辺は東京と同じ現象だ。これら民間の団体とは別に、札幌市の職員もホームレスに声かけをしている。市の目的は、ホームレスたちを生活保護に繋げること。だが、長年ホームレスをしている人たちは「生活保護は受けない」と頑なである。札幌のような厳寒の地域では、冬のホームレスは下手をすれば命の危険が伴う。それだけに、行政の支援も手厚い。ホームレスが生活保護の申請をした場合は、札幌市が契約しているカプセルホテルに、申請をしたその日からアパートが決まるまでの間、そこに宿泊できるというから驚きである(※11月から3月末までの厳寒期に限る)。これだけの支援があっても、何故彼らはホームレス生活に拘るのか。「未だ体が元気だし、生活保護は必要ない。若し病気になったりしたら、その時は保護に頼ろうと思っているよ」と加藤は言う。

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加藤の生活は、朝、バスターミナルで起きると駅構内へ移動して、改札前の待合所のべンチに座る。そこで拾ってきた新聞や本を読んだり、仲間のホームレスと話したり、21時頃まで時間を潰す。その後はバスターミナルで寝る。毎日、それの繰り返しだ。「札幌駅から外に出ることは殆どない。駅の中で食べる物は買えるし、ATMはあるし、洗濯は障害者用トイレで手洗いできるし、駅には何でもある。駅から出るとすれば、月に2~3回、銭湯へ行く時ぐらいかな」。加藤は北海道出身ではない。「元々は東京なんだ。47~48歳の頃、両親を看取ってから北海道に来た」のだという。理由は、母の実家が函館にあったからだ。「暫くは函館にいたけど、札幌に来てみたらもう、人も街も気候も全てが良くて、好きになっちゃった。東京へ帰りたいなんて、これっぽっちも思わないよ」。たとえ-7℃の地であっても、“住めば都”なのだろうか。今回の取材の間、「何故、極寒の札幌でホームレスをするのか?」という問いをずっと考えていたが、若しかしたら、そこには“暖が取れて寝場所がある”以上の深い理由等ないのかもしれない。事実、ホームレスの居住環境としては、他の地域と比べても快適なほうに入るだろう。取材の最終日、加藤の元を訪ねた。お礼の言葉と、「いつかまた会えたら嬉しいです」と別れを告げた。帰京して暫く経ったある日、「札幌では15年ぶりとなる60㎝を超える積雪があり…」というニュースが伝えられていた。こんな日でも加藤はバスターミナルで寝るのだ。心配になったが、加藤はきっと「全然寒くないよ」と、平然としていることだろう。

■「週3で仕事はしているよ」…ある派遣社員ホームレスの告白
ホームレスは、全員が無一文という訳ではない。よくコンビニで買い物をしているし、ATMで現金を引き下ろしている姿を目撃する。収入源は何だろうか。道内出身の男性(50)は、寝床はバスターミナル。ホームレス歴は3ヵ月だ。「家は無いけど仕事しているよ。週3日くらい覇権で働いている」。派遣先で引越しの手伝いや倉庫作業等をして、日当6500円。日当を貰った日は、インターネットカフェに泊まるのだという。以前は生活保護を受けて、アパートで暮らしていたというが、「担当が煩いんだよ。『働け働け』って。そればっか。それで担当と喧嘩して、保護止めちゃったんだよ。それで家賃払えなくなって…」。現在働いている派遣会社には、路上生活のことは内緒にしている。履歴書には、以前住んでいたアパートの住所を書いたそうだ。今後の展望は、「これから寒くなるし、また保護受けようか考えている」とのこと。別の60代後半の男性は年金受給者であり、2ヵ月に1回、8万円ほど入るらしい。「食べていくだけならそれで間に合う」という。

■「誰も本名は知らないよ」…これが札幌ホームレスのローカルルールだ!
「僕らは仲良くなっても、プライベートの事は聞かない。余計なことは聞かないし、喋らない。だから、名前で皆、呼び合っているけど、それが本名なのかわからない」(前出の加藤)。寝袋等の寝具は、いつも“隠し場所”がある。背負って歩いている人もいる。そんな札幌ホームレスたちの中で、地下通路に、台車に溢れんばかりの荷物を乗せて、押して歩くお婆さんがいる。その姿は、かなりのインパクトがあり、目立つ。他のホームレスに聞くと、「あの人、3年くらい前からいるよ。最初はあんな大荷物じゃなかったんだよ。段々と荷物が増えて、台車で押して歩くようになった。誰とも話さないから、皆、詳しくは知らない」という。若く見えるが、推定70歳だろうか。支援団体が声をかけても、耳を貸さない。「生活保護は受けません。私は普通の暮らしなんて求めていないの。皆さん、生活保護に頼ることしか考えないんだから、本当に考え方が貧しい」。何か哲学すら感じるが、恐らく崇高な理念を持ってホームレス生活を送っているに違いない。 《敬称略》


キャプチャ  2017年2月号掲載

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