“安心して産めない国”を作り上げた『日本産科婦人科学会』の大罪――カネ儲けに勤しむ学会幹部、「福島で働きたい」という女医の夢が幻に

20170221 09
2016年生まれの子供の数が、1899年に統計を取り始めて以来、初めて100万人の大台を割り込む見通しとなり、日本の少子化は加速度を増す。晩婚化・経済事情・保育所問題…。その主因が指摘され、政府はその対策に腐心するが、どんなに策を弄したところで、産婦人科医がいなければ産みたくとも産めない“お産難民”が続出してしまう。だが今、「産科医は日本産科婦人科学会の主導した利己的な制度により激減しており、人手不足に拍車が掛かっている」という不都合な事実は殆ど知られていない。元凶である『日本産科婦人科学会』の幹部は、自らの蹉跌など知らぬ顔で、濡れ手で粟の如くカネと利権を貪る。そして、その体質が産科医のなり手を更に遠ざける悪循環に陥っている。産科医は子供の減少を凌駕するスピードで減っており、このままでは医療現場の絶滅危惧種になりかねない。日本の産科医療が崩壊の瀬戸際にある現実を示すのは、皮肉にも、同学会の代議員で『日本産婦人科医会』の常務理事である日本医科大学の中井章人教授が、2014年11月に発表した報告に凝縮されている。2012年度の産科医数は1万868人で、10年前より166人減。新たに産科を希望する医師は、2010年度の491人から2013年度には390人へ急降下した。地域格差も深刻の度を増す。東京都と沖縄県の人口10万人当たりの産科医数は11.1人だが、茨城県では4.8人と2倍以上の開きがある。この現状を踏まえ、報告書の中で対応策が提言されている。曰く、「産科医が減少する理由は、長時間に亘る過酷な勤務体制である。それを改善する為には、都道府県毎に地域の中核に“基幹施設”を設け、10~20人の産科医をそこに集約する。産科医の数が多ければ、当直や休日勤務の回数が減る」――。当時、産科医を筆頭に病院関係者は、何でも自分たちのお墨付きを強要する学会の提言を受け入れた。それが全くの逆効果になり、地方の産科医不足に拍車を掛ける事態になるとも知らぬままに。その誤謬の影響は全国で相次ぐが、ここでは『東京電力』福島第1原発事故の惨禍を被った福島県の事例を明らかにしたい。

舞台は、原発事故の現場に隣接する南相馬市。震災前に5つの分娩施設が存在したが、現在は2つを残すのみで、病院は『南相馬市立総合病院』だけだ。原発事故後、避難した市民が帰還した為、同病院の分娩数は震災前のレベルを超え、今年度には年間230件に達した。これに対応する常勤医はたった1人だ。あまりに多忙で、彼は何度も辞意を漏らしている。そんな南相馬市に救世主が現れた。滋賀医科大学を卒業して初期研修中の女性医師が、南相馬市で産婦人科へ進むことを熱望した。ところが、産科医として被災地に寄り添おうと決心した彼女の夢は打ち砕かれた。『福島県立医科大学附属病院』の産科・婦人科の幹部医師から、彼女に諦めさせるメールが届いたのだ。「南相馬市立総合病院の産婦人科は、単独で専攻医は採れない施設です(現在も将来も)。基幹施設の福島県立医大学の研修プログラムで派遣されるのであれば可能という解釈でいいと思います。しかし実際は、産婦人科が1名しかいない病院に専攻医を派遣することはありません」。専攻医とは、専門医の資格を目指す医師のこと。産科医の専門医資格の取得を目指す若手医師は、学会が認定した“基幹施設”に所属し、そこから一定期間“連携施設”へ派遣される。基幹施設は主に大学病院、連携施設は地方の病院だ。要するに、彼女が南相馬市で働いても「産科の専門医にはなれない」という通告だった。福島県立医科大学産科・婦人科の藤森敬也教授も、「産科医は学会の専門医資格が無ければ生きていけない。症例数の少ない南相馬市立総合病院には医師を派遣できない」と周辺に語る。彼女の母校の産婦人科教授までが、自らの医局入りを勧めるメールを送り、「どこで研鑽を積むにせよ、研修プログラムの外でいくら技術を磨いても、残念ながら世間はそれを認めない」と諫めた。何れも、学会が勝手に決めたルールに縛られているからだ。何故、日本産科婦人科学会は専門医制度に拘るのか。これまでも、専門医は各学会が独自に認定してきた。「専門医の質に学会間でバラツキがある」という指摘を受け、専門医の質を評価する為の第三者機関である『日本専門医制評価・認定機構』(現在の『日本専門医機構』)が発足した。この組織の運営を主導したのは、2014年5月に同機構の副理事長に就任した京都大学産科・婦人科の小西郁生教授(当時の日本産科婦人科学会理事長)。専門医の評価を目的としてきた機構は学会と結託し、特定の病院に勤務しなければ専門医の資格を取れないよう、制度を改悪したのだ。「産科医療を崩壊へ導く諸悪の根源は日本産科婦人科学会です。この学会が大手を振るっている限り、日本の産科医療は絶対に良くなりません」。ベテランの産科医も、基幹病院への若手医師の集約を一刀両断する。学会は「過重な労働を軽減する」として、産科医を1ヵ所に集める拠点化を推し進めた。ところが、この独善的な構想が“絵に描いた餅”と化しているからだ。産婦人科の場合、福島県を含む24の県では、基幹病院は大学付属病院しかない。ただでさえ数が少ない医師をそこに集中させれば、基幹病院から遠い地域では、櫛の歯が欠けるように産科医が消えていくのは自明の理だ。

20170221 10
それでも、大学付属病院での研修が若手の成長を促すなら、地域医療の歪みも一時的なものとして我慢の余地があろう。しかし、それは逆効果だった。何故なら、大学病院では経験が積めないからだ。例えば、福島県立医科大学附属病院での分娩数は462件(昨年度)で、常勤医は19人、滋賀医科大学医学部附属病院は469件(昨年度)で、常勤医は15人だ。医師1人当たりの経験数は其々、年間に24件・31件と極めて少ない。通常、市中病院の分娩数は、常勤医1人当たり80~150件程度だ。大学付属病院に若手医師を集めても、それに見合う場数は踏めない。通常の分娩数を熟せなければ、真面な産科医が養成される訳もない。“1ヵ所に集めて医師の負担を軽減し専門医を育てる”という絶対矛盾により、妊婦の数と医師の数に大きな不均衡が生じ、地域から産科医が消えていく。本末転倒も甚だしい愚策だ。産科医不足は、何も地方だけの話ではない。観光地でもある神奈川県鎌倉市がいい例だ。鎌倉は1939年に腰越町、1948年に大船町と深沢村を合併したが、旧鎌倉地域では高齢の産科医が引退した後、何と産科医ゼロが続いた。2007年度は1274人の出産があったが、この内の761人は市外で産まれた。鎌倉市役所の職員は、「市民から『里帰り出産すらできない』とお叱りを戴く」と嘆く。産科医ゼロを解消すべく設立されたのが、『ティアラかまくら』という八床の鎌倉市医師会立の産科診療所だ。毎年、鎌倉市から6000万円程の補助金を受けながら、200件前後の出産を手がけている。安堵も束の間、この診療所の継続が危ぶまれている。常勤医師が確保できないからだ。現在、この診療所の常勤医は70代の男性医師が1人だけ。慈恵会医科大学等から派遣される4人の非常勤医師と共に診療に当たっているが、院長に何かあれば診療所は閉鎖せざるを得ない。鎌倉市のような首都圏の街でも、これが実態なのだ。

こうした現実にも拘わらず、何故同学会は基幹施設への医師の集約を進めるのか。「産科医の労働環境の改善や若手の育成の為」と言うが、甚だ疑わしい。この仕組みで利益を貪る学会の面々が存在するからである。同学会を取り仕切る25人の執行部は、大学教授らで構成される。理事長は東京大学の藤井知行教授、24人の副理事長・常務理事・理事の内、22人は大学教授で、残りの2人は元大学教授だ。前出の福島県立医大学と滋賀医科大学の教授は理事である。この執行部の所業は、お手盛りのルールを作り、「これに従わないと産科医としてやっていけない」と脅しているようなものだ。弁護士は、「優越的地位の濫用だ」と指弾する。そればかりか、同学会の幹部は学術的な議論などそっちのけで、カネ儲けと勢力拡大に勤しむ。理事の大半は国公立大学の教授で、民間企業と兼業する場合は“本給と同額まで”という内規が一般的。そこで、「もっと稼げるように…」と、彼らは学会を使い勝手の良い財布として利用する。「学術交流だ」と言い張れば、旅費や飲食費だってつけ回すことができる。実際、学会の資金は潤沢極まりない。昨年度の収入は7億5900万円で、内訳は会費が2億7300万円、学術集会関連が2億6000万円。総資産は9億3200万円にも上り、8億2100万円もの現預金が唸る。支出は、旅費交通費に1億円、学会会場費・運営費で1億5400万円、更に人件費が1億4300万円…。学会幹部の放蕩ぶりは推して知るべしだ。学会の集金システムは巧妙化が進む。『日本婦人科腫瘍学会』・『日本周産期・新生児医学会』・『日本産科婦人科内視鏡学会』・『日本生殖内分泌学会』等、多数の関連学会を立ち上げ、独自に専門医を認定するようになった。各学会の幹部で重複する大学教授の名前が散見される。学会の数が増えた分、専門医は年間何十日も関連行事に参加しなければならなくなった。首都圏の場合、東京の医師は日帰りできても、地方の医師は泊まりがけで出席せざるを得ない。当然のことながら、患者の診療は疎かになる。学会幹部は、“学会”という名の財布にカネを集めると同時に、自分の小遣い稼ぎにも抜かりはない。医局員の応援と称し、関連病院へ毎週、アルバイトに赴く。5時間程度の勤務で10万~15万円が相場で、若手は5万円、准教授は8万円程度である。病院経営者は、「顧問料として月額30万~100万円を支払うケースもある」と明かす。兼業を隠す狙いから、NPOに一旦寄附をして、そのカネをわからないように戻す裏技を駆使する不届き者も後を絶たない。患者からの謝金も懐に積もっていく。こうした学会幹部の金権体質・強権的な体質こそが、産科医療衰退の真因なのだ。一事が万事、権威主義的でお手盛り。最たるものが、大学付属病院の運営である。最高学府たる東京大学のブランドは鉄板で、若手の研修希望者が押し寄せる。ところが、東大では彼らに十分な経験を積ませるだけの症例が熟せない。患者や医師仲間から見放されているからだ。東大には73人もの常勤医がいるのに、分娩数は年間凡そ800件。子宮・卵巣癌の手術数は、年間150件に過ぎない。1人の医師が1年間に経験するお産は10件、癌の手術は2件という計算になる。

20170221 11
常勤医20人で年間に約1800件の分娩を熟す『愛育病院』(東京都港区)、常勤医16人で430件程度の子宮・卵巣癌の手術を熟す『がん研有明病院』(東京都江東区)とは比べるべくもない。専門医が技術を習得するには、場数を熟す必要があることは論を俟たないが、このままでは臨床能力が低下するばかり。だが、これは東大だけの話ではない。どこの大学付属病院の産婦人科も、状況は似たようなものだ。臨床経験を積めないのに、過剰な医師を抱え込む。若手医師は、教授にとって使い勝手の良い安価な労働力だ。人件費で赤字を出しても、補助金で穴埋めされる。これが、大学教授たちのモラルハザードを招く。上の腐敗ぶりに倣うかのように、現場の医師たちも超えてはならない倫理の一線を超えていく。東京都内の産婦人科勤務医は、「専門医取得の症例数を稼ぐ為、子宮癌患者が放射線治療を希望しても、子宮全摘を勧めるのは珍しくない。放射線治療も子宮全摘も治癒率は変わらないのに、その医学的事実を隠して子宮全摘を促しているのです」と明かす。子宮を摘出しない放射線治療でも効果が同じなら、温存を望む人は少なくないだろう。これまでに、手術と放射線治療を比較した多くの臨床研究が実施されてきたが、子宮癌の治療では、子宮全摘と放射線治療に大きな差が無いことがわかっている。なのに、手術件数を確保し、自らの専門医の資格を守る目的で子宮を摘出してしまう産科医がいるのだ。温存の道も選べた患者は泣くに泣けない。「産婦人科の医師は激務で訴訟も多く、なり手がいない」。同学会の主張を鵜呑みにし、そのまま垂れ流してきた厚生労働省と大手メディアの報道は真実を伝えていない。学会幹部の権益を守る個利個略が、産科医を目指す若手の夢を粉砕しているのだ。南相馬市に背を向けざるを得なかった冒頭の若手女医は独白する。「中国は最近、一人っ子政策撤廃で産科医を増やす方針を打ち出しました。中国で働くことも真剣に考えています…」。こういった「地域の医療に貢献したい」という真っ当な志も潰してしまう同学会の幹部がのさばる限り、この国の産科医療に将来は無い。


キャプチャ  2017年2月号掲載
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

透明なゆりかご(1) [ 沖田×華 ]
価格:463円(税込、送料無料) (2017/2/20時点)




[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

【送料無料】コウノドリ DVD-BOX/綾野剛[DVD]【返品種別A】
価格:16416円(税込、送料無料) (2017/2/20時点)


スポンサーサイト

テーマ : 医療・健康
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR