【霞が関2017冬】(09) 大阪万博誘致、オールジャパンの虚実

大阪で万博をもう一度――。2025年の『国際博覧会(万博)』の誘致を目指し、国や大阪府が急ピッチで検討を進めている。誘致委員会のトップに『日本経団連』の榊原定征会長を迎え、旗振り役となる大阪府の松井一郎知事は「オールジャパンの体制が整った」と息巻く。ただ、「(既に立候補を表明した)パリに勝つのは相当厳しい」との声も関係者から漏れる。立候補の期限が3ヵ月後に迫る中、微妙にすれ違う関係者の意見を纏め、“勝てる万博”に仕立てるには課題が山積している。先月18日、季節外れの人事異動で、経済産業省の博覧会推進室に1人の中堅官僚が呼び戻された。博覧会国際企画調整官の武田家明氏。直前までパリの日本大使館に勤務し、『博覧会国際事務局(BIE)』の日本政府代表も約4年務めた。万博とライバルのパリの双方の事情に精通する政府内でも数少ない官僚で、ミッションは明白だ。武田氏本人も、「『私以外にパリに勝てる人はいない』、そのくらいの気概でやらないと、2024年のオリンピック、2025年の万博のどちらも本気で勝ち取る気のパリには勝てない」と厳しい表情で語る。万博では、国がBIEに立候補を届け出る仕組みだ。ある国が立候補すると、誘致を競い合いたい国は、そこから6ヵ月以内にテーマや開催期間等のプランを纏め、BIEに届け出る必要がある。最大のライバルと目されるパリは、昨年11月に立候補を表明済みで、日本は今年5月22日までに立候補を済ませる必要がある。政府は、テーマ等を検討する委員会を立ち上げ、『京都大学iPS細胞研究所』の山中伸弥教授や、『吉本興業』の大崎洋社長等をメンバーに迎えた。

これまで2回開催し、“未来社会”を軸にテーマの議論は進みつつあるが、決定には至らなかった。大阪府が試算した運営費が経産省の検証で上振れする等、課題も浮き彫りになっている。一方のパリは、テーマを“共有すべき知見、守るべき地球”と早々に定めた。2015年に合意した温暖化対策である『パリ協定』の成果を背景に、各国の支持を得られ易い環境を前面に押し出した。国際的にも知名度が高いパリを相手に、経産省の官僚の間では焦りが強まっている。地元の大阪府との意識のすれ違いも燻る。ある経産省関係者は、「大阪には『あとは国がやってくれる』との意識があるのでは」との疑念を投げかける。BIEの規則では、開催費の収支が赤字になった場合には国が補填することになっている。政府側には、「来場者数が伸び悩めば、結局、尻拭いすることになる」との懸念が消えない。元々、大阪万博立候補の流れができた底流には、安倍政権と前大阪府知事・橋下徹氏の連携という政治的な動きがあった。「政権には、『万博開催を景気の起爆剤にしよう』という以外にも意図があるのでは」(財務省幹部)との見方もある。政府・大阪府・経済界がオールジャパンで結集できず、立候補の動きが盛り上がらない背景には、政治的な思惑による打算の産物という事情もある。数々の万博で日本館を企画してきた空間メディアプロデューサーの平野暁臣氏は、「万博にも、多数の客を呼び込むテーマパークと同じレベルの魅力が必要だ」と話す。理念や政治的な背景が先行するような万博では、結局、ツケは国民が払うことになる。1970年に開かれた『大阪万博』は、数々の技術革新を促すきっかけとなり、その後の経済成長のレールを敷いた。次の大阪万博がそれを再現するには、関係者の熱意と精緻な検討作業が必要になる。 (光井友理)


⦿日本経済新聞電子版 2017年2月21日付掲載⦿
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