【東芝・4度目の危機】(01) 会社が成り立たない

『東芝』が経営の重大局面に直面した。再生の道筋は見えるのか。

20170223 05
今月14日午前、東京都港区芝浦。東芝でフラッシュメモリーを成長させた立役者で副社長の成毛康雄(61)が、「メモリーを100%売る。その覚悟が無ければ、もう会社は成り立ちません」と取締役会で訴えた。夕方には決算発表の記者会見が予定されている。社長の綱川智(61)は、「会見では『社会インフラを会社の軸にする』と言わせてもらいます」と会議を締め括った。丁寧だが、これまでにない強い口調だった。18時半、予定より2時間半遅れて、綱川は会見場に姿を現した。報道陣や機関投資家等を前に深々と頭を下げ、「決算延期でご迷惑をお掛けします」と謝罪した。結局、その日は正式な決算を発表できず、1ヵ月の延期を余儀なくされた。原因は、先月半ばに届いた報告書にある。アメリカの原子力子会社『ウエスチングハウス(WH)』で、幹部が現場に度を越したプレッシャーをかけていたという内部告発が記されていた。関係者によると、名前が挙がったのは、原子力事業を統括してきた前会長の志賀重範(63)と、WH会長のダニエル・ロデリック(56)だという。監査委員会が「1ヵ月程度の調査が必要」と判断すると、ぎりぎりまで期日通りの決算を目指してきた財務担当の専務・平田政善(58)らも「諦めよう」と白旗を揚げた。2015年4月に発覚した会計不祥事で、総合電機の“名門”東芝の信用は地に落ちた。経営陣を刷新し、再起を誓うと、今年度は半導体が好調で業績が上向く。明るい兆しが見え始めたところに、大きな落とし穴があった。昨年12月21日。急遽開かれた取締役会が10秒間、沈黙に包まれた。

会長の志賀が「WHで数千億円の損失が発生するかもしれません」と報告すると、出席者は声を失ったという。漸く「もう減損した筈では?」との問いが出ると、「別件です」。社長の綱川は、「何のことなのか理解できない」と繰り返した。WHが2015年末に買収した原発の建設会社『CB&Iストーンアンドウェブスター(S&W)』で只ならぬ出来事が起きた。105億円のマイナスと見ていた企業価値は6253億円のマイナスと、実に60倍に膨らんでいた。「買収直後に結んだ価格契約が原因」と、ある幹部は打ち明ける。複雑な契約を要約すると、工事で生じた追加コストを、発注者の電力会社ではなくWH側が負担するというものだ。原発は安全基準が厳しくなり、工事日程が長期化した。追加コストは労務費で4200億円、資材費で2000億円になった。問題は、担当者以外の経営陣が詳細な契約内容を認識していなかったことにある。CB&Iは上場企業で、原子力担当の執行役常務・畠沢守(57)らは「提示された資料を信じるしかなかった」と悔しさを滲ませるが、会計不祥事で内部管理の刷新を進める最中の失態に、社内外から批判の声が沸き上がった。原子力事業全体の損失額は7125億円に上った。昨年4~12月期の最終赤字は4999億円となり、12月末時点で自己資本は1912億円のマイナスだ。先達が営々と蓄積してきた利益が全て吹き飛ばされ、遂に債務超過に陥った。1939年に発足した東芝は、戦中戦後の混乱期を生き残り、1960年代に土光敏夫ら名経営者が経営の礎を築いた。しかし、2000年以降に幾度も危機に見舞われる。ITバブル崩壊で2540億円、リーマンショックで3988億円、会計不祥事で4600億円の最終赤字を計上した。その度に、DRAM・液晶パネル・医療機器といった事業の撤退や売却を繰り返してきた。4度目の危機となる今回、周囲の目は一段と厳しくなった。決算延期と債務超過転落で、東芝株は売りが殺到した。年度末まで債務超過が続けば、上場市場は東証1部から2部に降格する。250円前後だった株価は200円を割り込み、昨日の終値は186円だ。「企業統治が機能しているのか?」。今月15日、『日本証券業協会』会長の稲野和利(63)は強い口調で批判し、東証からは「決算延期はいつものことだ」と冷めた声が漏れた。メモリー事業の経営権を手放す覚悟を決め、株の売却交渉は仕切り直しになる。綱川は同14日夕刻、「心を折らずに頑張れ。全力で取り組む」と社内放送で語りかけた。それは、自身に向けた言葉でもある。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2017年2月21日付掲載⦿
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