【東京情報】 PTAは役割を終えた

【東京発】昨年、政府の『一億総活躍国民会議』に出席したタレントの菊池桃子が、「任意にも拘わらず、全ての者が参加するような雰囲気作りがなされている。働くお母さんたちにとっては、PTA活動っていうものが難しい」と発言。インターネット上では、「よく言った」「専業主婦でも辛い」「無くしてしまえばいい」と賛同する意見が相次いだという。中学1年生の息子がいるべルギー人記者が言う。「僕は自宅に戻るのは深夜だし、女房も日中は仕事に行っている。だから、PTAから活動に参加するように言われても困るんです」。PTAは“Parent-Teacher Association”の略。保護者と教職員が協力し、子供の健全育成を図ることを目的とした社会教育関係団体だ。1948年、文部省に『父母と先生の会委員会』が設置されたことから、全国の小中学校に広まっていった。任意参加ということになっているものの、共働き世帯の増加や少子化の影響で役員のなり手が減っており、子供が在学中に必ず一度は役員をやるように、暗黙のルールとして押し付けられるケースも少なくない。アメリカ人記者が長い金髪を掻き上げた。「PTAは19世紀末のアメリカで誕生したのよ。女性解放運動の一環として、2人の女性が“母親の会”を作った。それがワシントンの“全米母親協議会”に繋がっていく。当時は女性参政権は無かったし、『女性の役目は家庭を守ることだ』と決め付けられていた。女性が社会に進出するようになっても、政治や経済といった男性主導の分野に、いきなり女性が参入するのは難しかった。それで、社会進出の第一歩として教育の場が選ばれたの。だから抑々、PTAは女性たちの為に作られた組織なのよ」。

当初のPTAの働きは目覚しかった。児童労働法や少年法の制定に尽力し、予防接種や給食を制度化。幼稚園を作ったのもアメリカのPTAの功績だ。フランス人記者が顎鬚を撫でる。「日本にPTAを持ち込んだのはGHQだから、日本のPTAはアメリカとほぼ同じものと考えていい。戦前・戦中の日本にも“保護者会”はあったが、これは学校設立にカネを出した地元の名士が学校運営に口を出す為の組織だったようだ」。ベルギー人記者は日本人女性と結婚している。「その話は、僕は義父から聞きました。昔は“父兄会”と言ったそうです。戦争中には父兄会が募金を集め、陸軍墓地に寄付していた。父兄会といっても、半分は母親だったそうですが。義父が通った学校は、自転車屋の息子や提灯張りの息子も通っていましたが、住友家や鴻池家の子息もいた。そうすると自然に、父兄会の会長に社会的地位のある人が就くようになる。また、父兄会の中心メンバーも良家の保護者ばかりになった。それにはいいところもあり、子供が原因のトラブルがあっても、父兄会会長が仲裁に入れば大体収まったそうです。義父は、『昔は子供の言い分を真に受けて問題をややこしくすることもなかった』と言っていました」。戦争が激化すると父兄会どころではなくなり、学校制度もバラバラになってしまった。そこで、戦後は教育現場の再生の為に、GHQの持ち込んだPTAをそのまま嵌め込んで対応したのだろう。更にアメリカは、教育使節団を日本に派遣し、制度が機能しているかを確認している。アメリカ人記者が事務所のソファーに凭れかかる。「アメリカは発祥の地だから当然だけど、イギリスや韓国にもPTAがあるわ。でも、PTAが存在しない国も多いようね。ロシア・台湾・スイス・オーストリアにも無い。スイスなんて教育水準が高い国だから、ありそうなのに」。私が以前住んでいたドイツにも、PTAは無かった。小中学校のクラスでは親が2人ほど選ばれて、連絡係をやらされる程度だ。保護者が学校に口を出すことは基本的に無い。一方で、ドイツ人は交通ルールやマナーに厳しく、他人の子供でもきちんと叱る。だから、教育に対する関心の高さとPTAの有無は、あまり関係が無さそうだ。

ベルギー人記者が溜め息を吐く。「PTAの誘いがあまりに煩いので、うちの女房が何度か会議に参加したんです。そしたら、『バカばかりで何も決まらないわ!』とプンプン怒りながら帰ってきました。会議のテーマは、女子生徒のスカートの長さ。その程度の話を、お喋り好きな数人のお母さんたちが、やれ長いだの短いだのと取り留めも無く話す。他の母親は黙って聞いているだけ。『子供たちの明日を左右するような議題は1つも出なかった』と言っていました」。初期のPTAは、子供を守る制度を作った。教育現場の整備も行った。それが完成してしまえば、他にやることは無い。しかし、組織だけは残るので、バザーの手伝いをしたり、ベルマークを集めたり、どうでもいいことをやらざるを得ない。仕事をしている母親には、PTA活動は重荷になる。“子供の為”という名目があるせいで断り難いのだろうが、既にPTAは役割を終えたと思う。アメリカ人記者が珍しく同意する。「当初のPTAは女性の社会進出が目的だったけど、今は寧ろ、その理念にそぐわないものになってしまっている。社会構造が変化したのだから当然ね。それと、『PTA役員に報酬を出せばいい』という意見もあるけど、私は反対だわ。お金で解決するような話ではないし、報酬の金額や誰に払うかで揉める筈。そんなことに話し合う時間を費やすのは無駄でしかないわ」。ベルギー人記者が話を纏めた。「これだけSNSの利用が広がっている時代なんですから、インターネット上で保護者会をやればいいんですよ。メーリングリストでもLINEグループでも掲示板でもいい。誰でも都合のいい時間に参加できるし、会議に参加するプレッシャーも無い。何かを決める時には、期限を設けて投票できるようにすればいい。月に1回学校に集まって、ダラダラ議論するより余程いいと思います」。まぁ、それが優等生的な解答なのだろう。問題は、その“ダラダラ議論すること”が大好きな人があまりにも多いということだ。 (『S・P・I』特派員 ヤン・デンマン)


キャプチャ  2017年2月23日号掲載
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