【東芝・4度目の危機】(02) なぜ俺たちが

20170224 06
雪交じりの雨が降っていた。今月9日、三重県四日市市にある『東芝』の四日市工場。NAND型フラッシュメモリーを手掛ける新棟の起工式に、建設会社や自治体の招待者を含めて130人が出席した。半導体部門を率いる副社長の成毛康雄(61)は、「引き続きメモリーは最重要事業。四日市工場への投資も変わらない」と宣言し、関係者は胸を撫で下ろした。僅か5日後、安堵は焦燥に変わった。同14日の記者会見で、社長の綱川智(61)は「半導体はマジョリティー(過半出資)に拘らず、柔軟に外部資本の導入を検討する」と表明した。起工式に参加した関係者は、「成毛さんの発言は何だったのだろうか」と不信感を募らせる。方針を180度転換した背景に、銀行団の圧力がある。主取引銀行は、「もっと身を切る“自助努力”を示せ」(幹部)と詰め寄った。信用不安を断ち切る為にも、資金を捻出する構えを示さなければならない。成毛も「他にカネを生める事業は無い」と、同13日になってメモリー事業を手放す決断を受け入れた。

「落ち着いて仕事ができると思ったのだが…」。昨秋に四日市工場に転職してきた40代の技術者は溜め息を吐く。前の職場は、広島県東広島市でDRAMを生産する『マイクロンテクノロジー』の広島工場。業績不振による人員削減で、数十人の技術者が四日市工場に流れてきた。NAND型フラッシュメモリー市場は嘗てない好況だ。合弁相手の『ウエスタンデジタル』の人員も含め、1万人が働く四日市工場は人手不足が続く。スマートフォンの大容量化やパソコン、データセンターの記憶装置の需要増で、「今後2年間は安泰」(業界関係者)と言われる。ただ、中長期ではメモリー市場は乱高下し易い。国からの莫大な支援を受ける中国勢の動きも気にかかる。『長江存儲科技』の副董事長・丁文武(54)は、「フラッシュメモリーの新技術を取り入れたい」と海外からの技術導入を急ぐ。市場の先行きは決して楽観視できない。将来を考えると、好況の今、高値で事業を売却する銀行の勧めは合理的なのかもしれない。しかし、「小さなチップに画像やプログラムを記憶する製品を東芝が開発し、普及させたことで、今日のモバイル端末の隆盛を導いた」という自負もある。勤続20年を超える40代の技術者は、高さ50mの巨大な工場建屋を仰ぎ、呟いた。「何故、俺たちが売られるんだろう…」。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2017年2月22日付掲載⦿
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