インターネット上で話題騒然…グーグルマップによって明らかになった“樹海村”に行ってみた!

昭和41(1966)年9月25日、富士の西湖は記録的な豪雨に見舞われた。山津波に襲われ、集落はほぼ崩壊。被害者は94名を数えた。生き残った村民は近隣の精進村に移り住み、民宿を開いた。その集落は、いつの間にかインターネット上で“謎の樹海村”と噂されていた――。 (取材・文・写真/『とうもろこしの会』 吉田悠軌)

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インターネットの発達は、人々から“未知のロマン”を奪っていった。グーグルマップの衛星写真であらゆる場所を確認できる時代、少なくとも日本国内に未知の秘境などあり得ない。嘗ての“杉沢村伝説”のようなオカルト的想像力は最早、発揮され難い時代となったのだろうか。ただ、事はそう単純ではないようだ。皮肉にも、グーグルマップによって“発見”されたオカルトスポットが、ここ数年話題となっている。通称“樹海村”。「青木ヶ原樹海の奥に謎の集落が存在している」といった都市伝説である。緑深き富士の樹海に孤立する人工的な長方形の空間と、そこに並ぶ建物群。この樹海村には一体、どんな秘密が隠されているのか…。「完全閉鎖された立入禁止の村」「犯罪者たちの逃亡集落」「政府の秘密研究施設」と様々な憶測が語られたが、勿論、それらは事実ではない。先ず、インターネット上で出回っている画像自体がトリックだ。周囲が原始林だけに見えるように、恣意的なトリミングや位置ずらしがなされている。少しズームを引いたり、北東の方角をチェックすれば、国道の『富士パノラマライン』に面し、観光地の精進湖が近いこともわかる。中央自動車道やJRまでは車で30分。とても秘境と言える立地ではない。この精進集落では、住人の多くが民宿業を営み、最盛期には24軒もの民宿が連なっていた。嘗ては70もの世帯が居住、郵便局や小学校も存在する立派な町だ。とはいえ、この集落も地方ならではの少子化・過疎化の波に曝されている。精進民宿村の代表的な宿『樹海荘』のご主人に、お話を伺ってみた。「若者が外に出ちゃうから跡継ぎも無くて、今は民宿も11軒しか残っていないよ。小学校も5年前に廃校したべ」。この土地は元々、樹海に大きな穴が空いていた地域だったという。それを昭和42(1967)年に整地し、山側の集落が昭和46(1971)年に引っ越してきた。だから、人工的な長方形の区画となっているのだ。「当時は国が民宿業を奨励したから、民宿村になって。確かに、昭和47~49年は山ほどお客さんが来て、『廊下でもいいから泊めてくれ』と頼まれていたな」。しかし、レジャー産業の変遷により、若者が富士五湖で遊び、民宿に泊まる風潮も衰えた。富士山の世界遺産登録も、それほど観光客増加に繋がっていないそうだ。

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このような知名度の急落が、精進民宿村を“謎の樹海村”とする都心伝説の一因となったのだろう。ただ、「抑々何故、精進集落が人工的に造られたのか?」という疑問は残る。「それはもう、『西湖のほうで大災害があったから、うちらも危ない』と北の尾根から引っ越したんだべ」。昭和41年9月25日未明、関東に上陸した台風26号は、時間雨量100㎜の記録的豪雨を齎した。それは西湖湖畔において、猛烈な土石流を引き起こしたのだ。山津波に襲われた根場・西湖の2集落は、ほぼ全ての家屋が破壊され、94名の死者を出す大惨事となった。1年後、崩壊地に村を再建する危険から、住民たちは移転を決意。彼らの多くが民宿業を営み、それが現在も続く西湖周辺の民宿村となった。そして、精進集落もそれに倣って移転した…という経緯なのである。折角なので、西湖の災害現場にも足を運んでみた。現在、そこには『西湖いやしの里 根場』なる商業施設が開園しており、当時の茅葺き屋根の集落が再現されている。山の斜面に挟まれた茅葺きの家々が並ぶ光景は美しいが、昭和41年の惨状を知ってしまうと物悲しくもある。「もう、本当の隠れ里でしたよ。何度も村の近くを通り過ぎていた私も、存在すら知りませんでしたから」。地元民である施設のスタッフに、当時の記憶を尋ねてみた。平家の落人伝説もある根場は、山間に隠れるようにして養蚕と放牧を営む小村であった。車道も無く、荷車か馬車しか通れないほどの孤立ぶりだったという。昭和41年の災害時には、一帯は泥の海と化し、膝まで埋まる有り様だったそうだ。一夜にして消えた隠れ里――。まるで杉沢村のようでもあり、樹海村の都市伝説には、この村こそ相応しいように思える。現在でも災害危険地域として人が住むことは禁じられているが、2006年に漸く荒れ地を整備し、前出の西湖いやしの里がオープン。富士山周辺の観光施設の1つとして復活したのだ。関東で唯一、茅葺きの建物群が見られる為、園内には沢山の外国人観光客の姿が。彼らは恐らく、ここが94名もの死者が出た悲劇の地とは知らないだろう。筆者にしても、樹海村伝説を調べてみて初めて知った程度であるのだから。東京へ帰る前に、西湖民宿村にある災害慰霊碑に手を合わせた。“樹海の奥に謎の村がある”という都市伝説の調査は、期せずして実在する樹海の秘境集落とリンクし、災害地のダークツーリズムへと繋がっていったのだった。


キャプチャ  2016秋の号外編掲載
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