【Global Economy】(25) 東南アジア、中国へ多額の原料輸出…“トランプ税”の2次被害者

アメリカのドナルド・トランプ政権に対し、東南アジアの国々が警戒感を強めている。トランプ大統領が敵視する中国からアメリカへの輸出を制限しようとすれば、東南アジア経済にも大きな打撃となるからだ。 (本紙バンコク支局 辻本貴啓)

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タイ南部のナコンシタマラート県。一面に広がる天然ゴム農場を営むソンポーン・ワワンチットさん(53)が、不安そうに語った。「今のゴム相場では、生活できるギリギリの収入しか得られない。トランプ大統領の登場で、相場はまた下がるのではないか」。タイは世界最大の天然ゴム生産国だ。輸出するゴムの6割が中国に向かう。中国の工場で自動車用タイヤやゴム手袋等の最終製品になり、アメリカや中国国内等の市場に送り出される。天然ゴムの値段は2013年頃から下がり続けてきた。中国経済が減速し、需要が冷え込んだからだ。昨年1月には5年前の2割の水準まで落ち込んだ。ゴム価格の下落で多くの農家が苦境に陥り、タイ経済が停滞する一因になった。そこに、アメリカでトランプ大統領が誕生した。トランプ大統領は選挙期間中、「中国からの輸入品に45%の関税をかける」と訴えた。大統領就任後は、輸入品に事実上課税する“国境税”を検討している。中国からアメリカに輸出するタイヤに高い税金がかかれば、対米輸出が減り、原料となるタイ産ゴムの中国への輸出も落ち込んでしまう。同じ天然ゴム生産国のマレーシアやインドネシアにも波及する。『東南アジア諸国連合(ASEAN)』にとって、中国は最大の貿易相手国だ。ASEANの輸出総額に占める中国の割合は15%に上る。例えば、マレーシアは電子部品を、インドネシアは石油等の資源を中国に輸出する。

中国は経済が発展しているものの、人件費は比較的安く、加工や組み立てが行われる。完成品は中国国内で販売される他、日米欧の巨大市場に輸出される。アメリカの企業も、東南アジアや中国で、各国の特性やコストに応じて分業体制を築いてきた。全てをアメリカ国内で賄うよりも、人件費の安さ等で効率が良いからだ。『Apple』は、ベトナムやマレーシア等で作った部品を使い、『鴻海精密工業』(台湾)の中国工場でスマートラォン『iPhone』を組み立て、アメリカを含む全世界で販売している。半導体大手の『インテル』は、ベトナム工場で中央演算処理装置(CPU)を生産する。CPUはパソコンに欠かせない部品。コンピューター大手の『デル』が中国に構える生産拠点にも、インテルがベトナムから供給しているとみられる。東南アジアでは、トランプ大統領が「雇用や投資をアメリカに戻す」と訴えていることへの懸念も強い。フィリピンでは、アメリカのIT企業からコールセンター等の業務を受託するビジネスが、好調な経済の原動力になっている。だが、一部のアメリカ企業はアメリカ本国に拠点を戻す計画を検討し始めている模様だ。地元紙の『フィリピンスター』電子版は、「アメリカの保護主義はフィリピンにとって悪い兆候だ」と伝えた。マレーシアでも、「アメリカから中国への投資が冷え込めば、サプライチェーン(供給網)を構成するマレーシア企業に悪影響を及ぼす可能性がある」(アナリストのシャンカラン・ナムビアー氏)との指摘が出ている。各国の企業が「製品をより低価格で消費者に提供しよう」と努めた結果、国境を超えた分業体制が出来上がった。だが、トランプ大統領の保護主義の政策は、この仕組みを壊す可能性がある。その際、モノが値上がりして困るのは、トランプ大統領の支持者を含むアメリカの人々だ。トランプ大統領を支持するアメリカの白人労働者らは、「工場が新興国に移転し、仕事を奪われた」と不満を訴える。一方、経済成長が遅れた東南アジアの国々にとっては、人件費の安きを生かし、国際的な供給網に組み込まれることが、発展に向けた唯一の道だった。自国に工場が進出してきたおかげで貧困を脱した人も少なくない。これがグローバル化の難しい現実だ。

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■経済関係、2000年代以降深まる
東南アジア諸国と中国は、特に2000年代以降、密接な経済関係を築いてきた。『東南アジア諸国連合(ASEAN)』と中国の貿易額は、1998年には234億ドル(約2兆6000億円)だったが、2016年には4522億ドル(約51兆円)に増えた。大幅な増加を後押ししたのが、ASEANと中国の自由貿易協定(FTA)だ。2000年代前半から段階的に関税の削減・撤廃が進められ、2010年に協定が発効した。中国の人件費が経済発展に伴い上昇したことも、企業の東南アジアへの進出を加速させた。東南アジア諸国が経済発展に向けて期待していたのが、『環太平洋経済連携協定(TPP)』だった。協議に参加した12ヵ国には、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイの4ヵ国が入っていた。インドネシア、フィリピン、タイも関心を表明した。しかし、トランプ大統領 はTPPから離脱する大統領令に署名。これにより現在、東南アジアでは「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉を加速すべきだ」との声が急速に高まっている。ただ、RCEPも関税・投資・知的財産保護等のルールを巡り、各国の思惑が異なる。早期に妥結できるかどうかは見通せない。一方、中国は経済圏構想『一帯一路』を実現する為、東南アジアとの経済関係を一段と強めようとしている。外交では、南シナ海の主権を巡るべトナムやフィリピンと中国との対立が続く。トランプ大統領の誕生で、東南アジアの政治・経済には不透明な要因が重なり合っている状況だ。


⦿読売新聞 2017年2月24日付掲載⦿
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