満州でボロ儲け・政界工作・労組潰し・社員の自殺…映画『海賊とよばれた男』は真っ赤な嘘! 『出光興産』の超絶ブラックな正体

累計発行部数364万部を突破した百田尚樹原作の小説『海賊とよばれた男』が映画化され、全国で公開されている。だが、そのモデルとなった『出光興産』は、とんでもないブラック企業だった! “人間尊重”・“大家族主義”と嘯きながら、裏では労働者を搾取する――。そんな出光の真っ黒な真実を暴く! (取材・文/フリージャーナリスト 小石川シンイチ)

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「日章丸、万歳!」と叫んだ。次の瞬間、全員が口々に「日章丸、万歳!」「国岡商店、万歳!」と叫んだ。狭いキャビンの中に「万歳!」の声が何度も轟き、軈てその声は1つになった。「日本、万歳!」――。百田尚樹氏の小説『海賊とよばれた男』(講談社)でも描かれている『日章丸事件』の万歳シーンである。同作は累計発行部数364万部を突破し、映画化。全国東宝系の映画館で上映されている。主人公の国岡鐵造を演じるのは『V6』の岡田准一で、監督は山崎貴。明治・大正・昭和の時代、名もなき青年だった国岡の生涯を通して、『国岡商店』が数々の苦境を生き抜きながら大企業へ成長していく様が描かれている。この作品は、石油元売り大手『出光興産』の創立者である出光佐三の立志伝を基にしており、そのストーリーのクライマックスがこの日章丸事件だ。敗戦後の占領下では、石油の元売り業者は石油の取り扱いを許可されたものの、軒並み欧米の国際石油資本(メジャー)との不利な提携を強いられ、それを受け入れざるを得ない状況だった。消費者も高い石油を買わされていたのだ。そのような中で、独立民族資本の出光に、イランから「半値の安価な石油を提供する」という話が持ち込まれた。但し、当時のイランは嘗ての宗主国であるイギリス資本の支配から抜け出そうと、石油の国有化を表明していた。それに怒ったイギリスは、ペルシャ湾に艦隊を派遣し、港を封鎖。イランの石油を買おうとするタンカーには、実力行使も辞さない構えだった。関係国は緊張状態にあったのだ。しかし、「日本復興の為には、石油メジャーに牛耳られた状態から脱し、消費者本位の石油施策を促すことが必要だ」と確信した出光佐三は、強行突破に出る。それが日章丸事件である。

1953年、自社のタンカー『日章丸』を送り出し、買い付けと日本への輸入に成功。映画の中で描かれているように、タンカーが帰港する川崎港で「万歳!」という大衆の叫び声が実際にあったのかどうかは知らないが、当時の日本では議論を呼んだ事件だった。これを機に、出光の名は民族資本として一大ブランド化。『日本石油』(現在の『JXエネルギー』)に続いて、石油元売り業界2位にまで上り詰めたのだ。書店では松下幸之助等と並んで、出光佐三は昭和を代表する経営者の1人に崇め立てられつつある。しかし最近、出光は別の意味で再び世間を賑わせている。石油業界再編の渦中にいるのだ。先細りする国内需要と価格競争の激化で、危機感を抱く経済産業省が業界再編を後押しし、業界首位の『JXホールディングス』と『東燃ゼネラル石油』が経営統合に合意。売上高11兆3656億円の巨大企業となる。それと並んで、出光と『昭和シェル石油』の合併話(※売上高5兆7378億円の業界2位になる)が進んできた。2大大手体制で、欧米の石油メジャーに対抗していこうという動きなのだ。JXと東燃ゼネは臨時株主総会での承認を経て、2017年4月に統合新会社『JXTGホールディングス』の発足を予定し、順調に進んでいるが、もう一方の出光と昭和シェルの合併は暗礁に乗り上げている。出光は創業家の反対によって、合併の延期に追い込まれているのだ。抑々、出光株の33.92%は創業家(※出光佐三の家族創業家の代表は佐三の長男で89歳の出光昭介)の所有だ。1981年、95歳で出光佐三が亡くなった後も、家族重視で、株式を公開せずに経営を行ってきた。しかし、競争の激化もあり、2006年に株式公開に踏み切ったのだ。その後も、石油持株会社の『ロイヤルダッチシェル(RDS)』が日本市場から撤退を決めた為、出光が買収を検討したが、すぐさま創業家が反対。買収は頓挫した。しかも、その理由がはっきりとしない。関係者の間では、「創業家は『外部資本が入ると創業者の理念が崩れる』と反対している」と言われている。創業者の理念とは、“人間尊重”・“大家族主義”だ。例えば、現在も出光には形式的な規定があるだけで、事実上の定年は無く、“社員自身が会社人生の潮時を決める”といったもので、“人間尊重”の精神で、働く人に重きを置いており、タイムカードも労働組合も無いのだ。だが実際は、こうした社風は大嘘で、本当は創業家の威光が弱まってきていることに対し、“影響力を誇示したい”という老人の我が儘が反対させているだけのようなのだ。「出光の人間尊重・大家族主義なんて大嘘です。同社の歴史を見てみればわかりますよ。日章丸事件の美談なんて所詮、イランの安い石油を買って国民に高く売った銭ゲバ事件なんですから」(労働ジャーナリスト)。

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出光佐三は明治18(1885)年、福岡県宗像郡赤間村に生まれ、商売人の家に育った。神戸高商(現在の神戸大学)を出て、外交官を志すも、「これからは石油の時代だ」と明治44(1911)年、故郷近くの福岡県北部の門司に、出光興産の前身となる石油販売店『出光商会』を創業した。海上で漁船に燃料油を販売する等、奇抜なアイデアを持ち、門司での販売を担当するが、下関まで乗り出し、他社の縄張りを荒らすことから、“海賊”との異名まで持つに至った。日本が満州に進出すると、それに合わせて満州に進出。軍閥と渡り合いながら、『南満州鉄道』の厳寒用車両油の一括納入を引き受けるに至る。「敵側にも販売している」との噂が流れ、“国賊”呼ばわりもされていたという。当時、海軍の要望で建造したのが、補給用のタンカー『日章丸1世』だ。この船は、戦争末期に撃沈されたと言われる。昭和7(1932)年には門司商工会議所会頭に、昭和12(1937)年には貴族院多額納税議員に当選するほどボロ儲けをしており、戦争末期には石油を求めた陸軍の南進に社員約200人を送り出し、27人を戦死させている。つまり、戦前の出光は満州や東南アジアで稼ぎまくったボロ儲け軍需企業だったのだ。戦後の混乱期でも「1人も路頭に迷わせない」と啖呵を切ってリストラを否定した出光だが、それどころか旧軍人を引き受けている。中でも有名なのが、“大佐”3人を重役級に近い待遇で入社させたことだ。彼らの任務は政界工作だった。

「当時、出光はGHQの石油政策を探る必要がありましたし、アメリカ軍が接収していた海軍燃料廠の払い下げを受けて、大製油所を作ろうと考えていたのです。そこで、元大佐たちを暗躍させ、政界への献金バラマキを行い、狙い通りの払い下げを成功させました。その結果、徳山製油所(山口県)の建設が可能になり、数少ないタンカー製造も割り当てを得ています。そのタンカーが日章丸2号なのです」(経営ジャーナリスト)。この日章丸2号が、イランからの安価な石油を川崎港に運んできた日章丸事件の船だ。この日章丸事件も、宗主国であるイギリス資本の支配から抜け出そうとするイランの助けとなり、「石油メジャーに牛耳られた石油価格の高さに苦しむ日本の消費者を支えよう」という狙いであれば素晴らしいが、実際には日本の石油価格は殆ど下がらなかった。イランの石油が入り出してから、僅か5%安くなっただけだ。「敢えて安い値段で売らなかったのは、政府の申し入れもあって、業界を混乱させない為だ」と、出光は周囲に語っている。だが本音は、「イランに行ったほうが半値という安さで仕入れられるから」ということに過ぎないのだ。安く仕入れて、日本では高く売ってボロ儲けした訳だ。川崎港で万歳したのは、本当は出光佐三だけだったのではないか。しかも出光は、会社が儲かっても株式公開せず、美術品購入に浪費しているのだ。「出光美術館もある為、出光では美術品については損金算入することができる。その為、税金をできるだけ払わず、美術品を購入してきたのです。これまでは上場してなかったので、投資家のチェックが入らずに秘密主義で済ませることができました。更に、銀行から借り入れしたカネを投資に充てる有利子負債経営も出光の特徴。投資家への配当をケチった上に、『銀行の金利を損金算入して税金を減らそう』という目論見です。その結果、1990年代半ばに出光グループの有利子負債は2兆円に上っていました。但し、2000年代に入ると、こうした経営スタンスには流石の金融機関も離れがちで、あの住友銀行さえ消極的になった為、株式公開に踏み切らざるを得なくなったのです」(同)。また、「石油業界内でも自主独自路線で“民族系”を貫いた」というのも嘘だ。「戦前はアメリカ系のカルテックスとの提携を模索していますが、結局、規模が小さいことから敬遠されて、カルテックスは日石との提携を選んだ。つまりは、規模が小さいことと、会計上の秘密主義があって、提携する外資がこれまでなかったというのが実情なのです」(同)。

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「社員は出勤簿がないために牽制しあうせいか早朝出勤を励行し、また残業手当が支給されないにもかかわらず5時に退社する者は女子社員や特別の用事がある者を除いて皆無に等しく、夜7時、8時まで仕事をさせられることは、ざらにあった」「4月1日の早朝、田崎たち新入社員は代々木の明治神宮参集殿に集合するよう命じられた。明治神宮に参拝し、皇居を遥拝したあと、国歌を斉唱した」――。これは、企業小説家・高杉良のデビュー作『虚構の城』(講談社)の1シーンだ。この作品もまた、出光をモデルにしたものだが、リアルに内情に迫った作品として評価が高い。ワンマン社長の労組潰しや、労組発足に加担したと疑われる主人公を通産省(現在の経済産業省)の接待担当に配属し、銀座接待を繰り返させて翻弄する様子が描かれている。この中でも描かれているのは、“社員自身が会社人生の潮時を決める”といった“人間尊重”の精神の裏側だ。定年が無いので、ワンマン社長に気に入られた人間は何歳になっても居続け、気に入られない人間は早期退社するように仕向けられる。労組発足の動きがあれば潰しにかかるという“出光家本位”のワンマン会社なのだ。当然のように、出光では1999年に自殺者も出ている。「出光興産から出光タンカーへ出向し、経理等を担当していた男性社員(当時43)が鬱状態になり、同年7月末に自殺しています。遺族は2001年、新宿労働基準監督署に労災申請するものの、2003年に同監督署は不支給の決定を下します。再審査も退けられましたが、遺族が『上司の“死ね”等の厳しい叱責が自殺の原因である』として、処分取消を求めて訴訟を起こしています。その訴訟で東京地裁は、『企業における一般的な(叱責の)水準を超えていた』として、遺族の請求を認め、『労災である』との判決を下したのです」(前出の労働ジャーナリスト)。創業家は美術品を愛好し、労働者は自殺する――。これが、“人間尊重”と謳いながら労働者を搾取する“ブラック企業”出光の正体だ。健全な企業に生まれかわる為にも、出光はさっさと経営統合して、創業家を追い出したほうがいいだろう。


キャプチャ  第17号掲載
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