【変貌する報道・アメリカから】(01) 地方紙消え、弱まる監視

新聞報道が社会で果たす役割の1つが、公権力の監視である。インターネットが普及する中、大きな変化に立たされているアメリカの報道現場から、その意義を考えたい。

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『落下傘(報道)を超えて』――。メディア批評で知られるアメリカの専門誌『コロンビアジャーナリズムレビュー』の電子版に今月6日(現地時間)、こんな見出しの記事が掲載された。ドナルド・トランプ大統領の当選で問われた有力紙等の“失敗”を検証する内容だ。「最も不誠実で腐敗している」とメディア批判を繰り返すトランプ大統領の言動が、一部の国民に支持されている。その背景にあるのは、メディアと国民の間に広がる意識のずれだという。トランプ大統領が多くの票を得たのは、産業が衰退し、雇用が失われた中西部等の工業地帯だった。同誌の記事は、「メディア全体で記者の割合が大都市に偏る傾向が年々強まり、ニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルスの3都市だけで5分の1を占める」と指摘。その上で、「大都市から偶に“落下傘”のように地方へ取材に行っても、地元の深刻な実情や住民らの本音を理解できなかった」という見方を紹介した。“忘れられた人々”。トランプ大統領がそう呼んだ支持者らが住む地域では従来、多数の地方紙が地元が抱える課題を報じてきた。しかし、そこにアメリカの新聞業界が直面している構造的な危機があるという。

抑々、一般向けの全国紙は『USAトゥデイ』しかない。世界的に有名な『ニューヨークタイムズ』・『ワシントンポスト』の両紙も、日本の新聞のような取材網が全米各地にある訳ではない。これに対し、地方の中小の都市や町単位で存在する新聞は1000を超える。アメリカでは、州によって制度も法律も大きく違う為、こうした地方紙が歴史的に重要な情報源になってきた。ところが、インターネットの普及等で広告収入が大幅に減り、10年前の半分以下まで落ち込んだ。資金力の弱い新聞が廃刊し、大規模なリストラも相次いだ。『ニュース編集者協会』によると、アメリカの新聞記者らは、2003年の5万4200人が2014年は3万2900人と、約10年で4割も減った。「行政の不正が見えなくなった」。2011年の『連邦通信委員会(FCC)』の報告書では、地方紙の弱体化による地域社会への悪影響が紹介された。人口約4万人のカリフォルニア州ベル市では、2000年頃に地元紙が廃刊。その後、市の幹部らが違法に給与を引き上げ、1人当たり最高でバラク・オバマ大統領(当時)を上回る年約79万ドル(※当時の為替レートで約6700万円)を得ていたことが、2010年に発覚した。住民は贅沢な暮らしぶりを見て、何年も前から不審に思っていたという。しかし、“地元紙が消えた街”では市政を取材する記者がおらず、『ロサンゼルスタイムズ』の記者が噂を聞きつけて調べるまで、明らかにならなかった。「7つの投資グループが、倒産した地方紙等を格安で買収し、全体の約3割を所有している」。昨年10月、ノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究チームが発表した調査結果だ。投資グループは地域と縁が無く、短期的な利益を目的に転売や廃刊を繰り返しており、「各地で更なる“ニュース砂漠”が広がる可能性がある」と警告した。研究チームのペネロペ・アバナシー氏は、同報告書で強調する。「人々は今、スマートフォン等で、嘗てないほど多くのニュースを得られる。だが、デジタルの洪水から地元のニュースは殆ど流れてこない」。


⦿読売新聞 2017年2月21日付掲載⦿
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