【霞が関2017冬】(10) 所有かシェアか…“無人運転”が迫る未来

政府は、成長戦略を作る『未来投資会議』(議長・安倍晋三首相)で、2020年に達成すべき自動運転に関する2つの実用化目標を掲げた。高速道でのトラックの無人隊列走行と、無人運転車による移動サービスの実現だ。政府が作成した資料に多数並ぶ“無人”の文字は、2020年を完全自動運転の普及元年としたい強い意向の現れと言える。政府の動きは、運転手ありきの立場を崩さない自動車メーカーを揺さぶる。「究極の願いである交通事故死傷者ゼロに貢献し、渋滞を解消する」(トヨタ自動車)、「運転者が“自動運転モード”を選ぶと、安全・快適な高度な運転支援ができる」(ホンダ)、「運転者がいる前提で、2018年に高速道、2020年に市街地で自動運転技術を市販化」(日産自動車)――。大手自動車メーカー3社に、自動運転にどう取り組むかを聞いたところ、このような答えが返ってきた。自動運転は何れも無人ではなく、運転手がいることが前提となっている。政府と自動車メーカーには距離があるようにみえるが、“2020年に無人運転の実用化”と大々的な目標を掲げて大丈夫なのか。工程表の作成に携わった官僚に尋ねると、「無人運転の“市販車”とは書いていない」。工程表の文言は、“無人自動走行による移動サービスの実現”だ。無人運転バスの実用化に取り組む『DeNA』や、『ソフトバンク』子会社の『SBドライブ』等、IT企業の取り組みを主眼に置いたという。自動車メーカーにも配慮する。『IT総合戦略本部』は、自動運転実現へのシナリオに“高度安全運転支援車”(仮称)という新たな概念を導入する方針だ。高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違いをセンサーで防いだり、ドライバーの具合が悪くなった際は路肩に自動駐車したりする。

「運転者による運転を原則とし、世界一安全・安心な自動運転車を開発する」というもので、「トヨタとホンダは好反応」(関係者)という。核となるのは自動運転技術だが、自動車メーカーの意向と合致する。自動車メーカーが無人運転に対して表向きには慎重な理由の1つには、車に運転を制御できる人が必ず乗っていることを前提としている『ジュネーブ条約』等の問題がある。ただ、これはIT企業にも同じことが言える。自動車メーカーには、別の根深い問題がある。「無人運転が実用化すれば、将来的に自動車メーカーは所有を前提とするビジネスモデルの転換を迫られる」(経済官庁幹部)という点だ。仮に完全自動運転車が実現すれば、必要な時に車を呼ぶと好きな場所にタクシー感覚で移動することができる。自分が運転しなくてもいいので、車を保有する必要性が無くなる。トヨタは、全国に5000店超の販売網を抱え、その大半が独立資本だ。「転換が必要なのはわかっている。販売店がシェアサービスの主体になって生き残らないといけない」(トヨタ関係者)。ある経済官庁の幹部は、「2年前は無人運転なんて議論にもならなかったが、ここ1年で耳を傾けてくれるようになった」と、自動車メーカーの姿勢の変化を肌で感じている。背景にあるのは、完全自動運転車の市販に急速に舵を切る欧米メーカーへの危機感だ。日産のカルロス・ゴーン会長兼社長兼CEOは、今月下旬に開かれた『国家戦略特区諮問会議』の後、記者団に対し、「無人運転を商用にすると(会議で)説明した」と発言。ホンダは『Google』系と完全自動運転技術の共同研究を開始する検討を始めており、「完全自動運転を考えていない訳ではない」。自動運転普及に向けた問題は、技術開発や法律だけではない。「自動車メーカーがシェアビジネスを受け入れられるか」という覚悟も問われている。 (大島有美子)


⦿日本経済新聞電子版 2017年2月28日付掲載⦿
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