【風俗嬢のリアル】(02) シズカ(30)の場合――2日連続ヤクザのお客様

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山口県を出たシズカは、鳥取県米子市のデリへルで10日間働いた後、京都に移動していた。既に、京都の人妻デリへルで働き始めて1週間が経っている。その店に寮は無く、代わりに京都市内の四条通沿いにあるゲストハウスに滞在していた。「わ~、インべさん、こんにちは」。部屋の近くから電話をすると、シズカは弾むような声で現われた。べージュのパンツにグレーのトレーナー。前回と同じ服に見えたが、よく見ると、グレーのトレーナーは僅かにデザインが違った。鉄筋コンクリートマンションのエレべーターを上がると、その一室が宿泊先のゲストハウスだ。玄関を開けて直ぐにトイレとバス、キッチン。奥にある6畳ほどのフローリングに、セミダブルベッド・2人掛けソファ・ミニテーブル・液晶テレビが置いてあり、絨毯や布団カバーはアジアンテイストで統一されていた。キッチンにはミニ冷蔵庫と調理器具が一通り揃えてあり、洗濯機に物干し台まで完備されている。どれも真新しく、一見すると1人暮らしの女の子の部屋そのものだ。ホテルより快適に見えるその部屋を、シズカは1泊2000円程で借りて、1人で使っていた。絨毯に座り、買ってきたパンをテーブルに広げ、タリーズコーヒーでテイクアウトしたカフェラテを渡すと、シズカは「わー、凄い! こういうの初めて飲みます。スタバとか絶対行かないし」と大袈裟に喜んでくれた。ふと見ると、カーテンレールに下がったハンガーに、淡いパープルのブラジャーが干してある。細かいレースの施された上品なデザインだが、よく見ると肩紐が黒ずみ、毛玉だらけだ。

隣のハンガーには、胸元の大きく開いたべージュのワンピースも干されていたが、ペラペラのナイロン素材で、袖にくっついた黒のレースが如何にも安っぽい。接客用の服にも全くお金をかけていないことは明らかだった。「ワンピは5年前にOFF HOUSEで確か500円で買ったやつですね。今、着ているグレーのトレーナーは、広島のOFF HOUSEで600円。仕事用のハイヒールもOFF HOUSEです」。『OFF HOUSE』とは、全国チェーンのリサイクルショップのことで、シズカは私服も仕事服も殆どそこで購入しているようだった。「本当にお金を遣わないんだね。お酒落したい欲求は無いんだ?」。素朴な疑問を投げかけると、シズカは不思議そうな顔をした。「お金遣うのに恐怖感があるんですよね。それに、お酒落な店に買いに行くのが怖い。何度か行ってみたけど、店員さんに顔を覗き込まれて『何かお探しですか?』って言われた瞬間、怖くなって逃げました。『ここは自分のいる場所じゃないな』って。でも、5年前にSMクラブで働いていた時の店長が見栄えに煩い人で、『お洒落しろ』って言うから、そっからは意識するようになったんですよ」。お酒落を意識した結果が、リサイクルショップの服であることに驚いた。「旅の途中だから無頓着なのか」と思ったら、決してそうではないようだ。「大学4年間は、ほぼ毎日、サンキューマートで買った作業用のツナギを着ていたんですよ。1回だけ古くなって買い換えましたけど」。旅に持ってきたタオルは、何と中学時代にバスケットボール部で使っていたものだという。15年以上も同じタオルを使い続けている理由は、「未だ使えるから」である。デリへルの仕事で、一般的なOLより稼いでいる筈のシズカに、物欲は全く無いのか聞いてみると、「皆は何にお金遣うんですかね?」と逆に尋ねられてしまった。京都の街は、美味しそうなもので溢れていた。新幹線を降りて、時間潰しにフラフラ歩いて見つけた錦市場は、食べ歩きスポットとして有名な観光地だった。ズラッと並ぶ商店には、串に刺さった熱々の練り物・揚げたてのコロッケ・行列の出来るタコ焼き屋・イカ焼きの良い匂いが漂い、涎が出そうな誘惑の通りである。しかしシズカは、食べ物にも頓着が無いようで、京都に来てからの食事はいつもと同じだった。玄関に転がったゴミ袋の中には、ポテトチップスや『うまい棒』の空き袋が沢山入っている。「朝起きて、ご飯は食べないかな。何かあったら口に入れるけど。最近は、ラブホテルから無料で取り放題だったうまい棒を沢山持ってきたので、それをずっと食べていましたね。初めてやきとり味を食べたけど、美味しかった」。折角京都にいるのに、駄菓子で胃袋を満たすとは何ともったいない。因みに、一番好きな食べ物はハードグミだという。

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「グミは止まらずに食べ続けられます。ポテチも開けたら1袋を一気に食べる。あとはチョコ。昔はチョコだけで1日過ごすこともあったんですよ。西友で200g198円のチョコを2袋買ってきて、1日で食べる。飲み物はお湯です。1ヵ月続けていたら、自分でもわかるほど体調が悪くなったんで、ご飯も食べるようにしたけど、1年くらいはそんな生活だったかな」。シズカは平然と言っているが、気持ち悪くなるような食生活である。最近はそこまで酷くはないようで、夜はうどんを作ったり、意識してビタミンも摂るようだ。「今日は朝11時半に起きて、柿を1個食べました。近所のスーパーで6個180円のご奉仕品があったから。本当は蜜柑を買いに行ったんだけど、1袋280円で高かったから止めたんですよ。ちゃんとした1食目は大体、出勤前の19時くらいですね」。服と同じように、食に対しても欲が感じられない。まるでガソリンを入れるように、食事を身体に押し込んでいるだけのように見える。「そうかもしれない。一応、お客様が不快にならない程度に肌の調子を保たなきゃいけないから、その為に食べる感じ。飲み物だけで空腹を抑える時もありますね」。欲が無いのに、お金を稼ぐモチべーションはどこから来るのか、私には不思議だった。シズカの働くデリへルは、名神高速道路の京都南インターチェンジ付近に事務所を構えている。通称“南インター”は、ラブホテルが密集するデリへル激戦区だ。周辺は一軒家や畑の多い住宅街だが、巨大なラブホテルが連続して建ち並ぶその一角だけが煌々と明かりがつき、賑やかに幟や看板が立っている。ちょっと外れれば、風情溢れる立派な日本家屋が点在し、ホテルの向かいでは畑仕事をするお婆さんの姿も見える。新旧入り混じる不釣合いな光景だが、年月が経っているせいか、まさしくそれが南インターの風景として街に馴染んでいた。

「今の店は割り引きセールの多い激安店で、女の子の手取りは60分6000円くらい。待機室しゃなくて、車の中で待機するんですよ。他の女の子も一緒に乗ることがあって、その状態で何時間もいるからきついんですよね。トイレに行く時も、ドライバーさんに声かけてコンビニまで連れてってもらうから、凄い気を遣うし」。狭い空間でじっとしているのは、嘸かしストレスが溜まるだろう。車はラブホ街近くに停めてあり、予約が入るとそのまま車で客の待つホテルに向かうのだという。「働いている女性の平均年齢も高いんです よ。私が一番若いのかな。大体、40代だと思う。今の店では、他の方と全然話さないんですよね。挨拶しても無視なのか、会釈だけしてるのかわからないくらいの微妙さで。ギャルっぽい方が多いかな。お年は召しているんだけど、膝上くらいの黒いブーツにミニスカートみたいな」。店のホームページを開いて写真を見ると、茶髪で派手な女性ばかりが並ぶ中、シズカだけが清楚な雰囲気を漂わせていた。あのペラペラのワンピをそれなりに着こなし、セレブっぽく見えることには驚いた。「関西に来てから、お客様に『関東でしょ』ってズバリ言い当てられることが多いんですよ。それまでは『どっから来たの?』って言われるだけで、『関東』って答えると『嘘でしょー』みたいな反応だったのに。雰囲気とか仕草だけで言われることもあるし、『プレイの仕方が関東だね』っていうのも言われました。私はそこはわかんないけど、お客様にはわかるらしいです」。そんな京都の人妻デリへルは、客層にも一癖あるようだ。「京都は濃いですよ。2日連続でヤクザのお客様に当たったんですよ。1日目の方は、刺青が入っていて小指が無くて、チンコに真珠が入っていて、刑務所の話をしてくれましたね。3時間フェラして首が痛かった。途中に休憩があって、蜜柑をくれるんですよ。めっちゃ美味しかった! 次の日もヤクザのお客様で、その方も刺青があって小指が無くて、『日本各地の刑務所にいた』って言っていましたね。ヤーさんはどこの県にもいるけど、2連続は流石に初めてでビックリしました。2人とも寂しそうに見えましたね」。山口県で聞いたミツバチ農家の話とは、えらい違いである。それでも接客に違いは無いのか、シズカにとっては特別、印象に残ることでもないようだった。

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「京都で驚いたのは、末期癌で余命宣告されているお客様ですね。ご自宅に伺ったんですけど、酸素吸入の大きい機械が置いてあるんですよ。プレイ中も咳き込んで中断したり、他の女の子とは鼻から酸素吸入しながらプレイしていたみたいです。『ただ死を待っているだけなんだ』って、朗らかな顔で言っていましたね。車に戻ったら、ドライバーさんから『お客さん、元気だった?』って聞かれたんですよ。昔からの常連さんみたい」。そう言うと、シズカは身悶えした。因みに、京都の前の山口のデリへルでは、福岡のJR博多駅前陥没事故で復旧作業をし終えた作業員が作業着のまま客で来たり、米子のデリへルでは「鳥取地震で家が壊れた」と話す客も多かったそうだ。「風俗嬢という仕事は、短時間で人の人生に触れるものなんだな」と感心していると、シズカはニッコリ微笑んだ。「仕事として好きですね、デリへルが」。京都でもシズカは、せっせと観光に勤しんでいた。朝は11時に起きて観光へ行き、夕方にゲストハウスへ戻って、食事をしてから出勤。仕事は夜間で、毎日20時から朝方4時頃まで働いているという。めまぐるしい毎日だ。「観光は未だ一般的なところしか行っていないですね。自転車を借りて嵐山へ行ったり、伏見稲荷へ行ったり、金閣寺も壬生寺も行きました」。シズカは、観光案内所で貰ってきたパンプレットやチラシを絨毯に並べると、これから行く予定の場所を説明してくれた。和菓子手作り体験・宇治市源氏物語ミュージアム・京料理展示大会等々。今回は外国人が喜びそうな、如何にもな観光地はかりである。シズカは、それらの日程をチェックして手帳に書き込み、観光を終えると二重線で消している。まるでノルマを熟すかのようだ。手帳の中は、書き込んだ文字で真っ黒だった。「今回のメインは、京都で年越しをすることですね」。大晦日と元旦は店を休み、除夜の鐘を聞いてゆっくりするのだという。その為、京都はいつもより長めの1ヵ月弱の滞在だった。

「でも、年明けの2日・3日には京都を出て、次の県に移るんですけどね。年初めと姫始めだけ京都でやって」。“姫始め”といっても、店でのプレイのことである。因みに、去年の年末年始は、熊本のデリへルの寮で1人、漫画『ONE PIECE』を読んで過ごしたらしい。今年の正月も勿論、1人である。シズカに友だちは1人もいない。それは、初めて会った4年前から同じだった。携帯電話のアドレス帳に登録されている電話番号は、今で勤めた風俗店の幾つかと、個人名は私1人である。「そうなんです。見てく下さいよ、私の携帯」。差し出された携帯電話のメールボックスを見ると、受信履歴は今、勤めている京都のデリへルと、私からの連絡のみだった。しかし、そんな話をするシズカの顔は、どこか誇らしげだ。「大学時代は友だちがいた」というが、いつから今のような状態になったのだろう。「アドレス帳を完全に消去したのは、3年前の世界一周に行く前、住んでいた部屋を引き払う前夜ですね。というか、携帯電話を解約するんで消さなくてもよかったんですけど」。当時、シズカは持っていた荷物を殆ど全部捨てて、部屋を引き払っている。そして、解約する携帯電話のアドレス帳も真っ新にして、日本を飛び立った。その際、私の携帯電話とアルバイト先等、3つ程の連絡先を紙に書いて残したという。何だか、シズカと繋がっていることが奇跡のように感じられた。「学生時代も、友だちからメールが来ても、返信は3日後とか、しないで無視とかしていたんですよ。友だちと呼べる人たちに自分からメールをすることも、覚えてる限り、1回も無いですね。連絡事項でならあるけど、『今、何している?』みたいなたわいもないものは一切無い」。因みに、大学生活はとても楽しかったようで、卒業後も科目等履修生として計7年も通ったという。日本一周の旅をしながら色んなものを見て、色んな人に会っているのに、その出来事を誰かに話して共有したくはならないのだろうか。「ないないない。誰かに言いたいとかはないですね。プライべートでは人と喋りたくないし」。シズカはきっぱり否定した。「旅先で仲良くなることもあるけど、その場その場で一期一会で別れられる人としか話さないですね。若者だと、直ぐ『連絡先教えて』ってなるじゃないですか。面倒臭い。聞かれたくない。話しかけられたくない」。更に理由を聞くと、シズカは難しい顔をした。「“いい人を演じないといけない”っていう義務感があるんで。仕事モードになっちゃうんですよ。プライべートで仕事はしたくない」。ある県では、仲良くなった店の女の子からしつこく連絡先を聞かれ、仕方なく嘘のメアドを紙に書いて渡したという。「連絡先を交換すると、『いつでも繋がるよ』みたいな感じじゃないですか。何か気持ち悪い」。

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一期一会が好き――。シズカはそう頻りに言った。それは客に対しても同じだ。「1回こっきりのほうがいいんです。その1回で最高にいいサービスをして、いい気分で帰ってもらって、次にホームページを見た時はもういない。『あんないい子、二度と会えないな』って思ってほしい気持ちもあるんですよね。短期間の内に2回目来られちゃうと、『1回目の時以上のサービスをしなきゃ』っていう気持ちが生じるので、面倒臭い。中途半端は嫌なんです。お客様のとこへ向かう時から、お別れしてドアを閉めた瞬間まで、ずっと気を張っているんで。関係がずっと続いていたら、多分身が持たない」。シズカの真面目さが窺えるエピソードである。人といる時は、ずっと気を張っているのだろうか。「観光で地方のバスとかに乗ると、私しか乗客がいなくて、運転手さん側から話しかけてくることがあるんですよ。『あ、ヤバい、話さなきゃ』みたいな感じはある。でも、時間が決まっていればいいんです。バスだったらバスを降りるまでと区切りが決まっているので、こっちも時間配分を考えて運転手さんを楽しく過ごさせようみたいに思う。でも、飲み屋とかで隣のオジチャンに話しかけられるとかは絶対嫌ですね。それだと何時までとかないじゃないですか」。区切りが決まっていると安心する――。考えてみれば、シズカの旅はまさにそうだ。日本各地のデリへルを短期間で移動し、常に終わりが見えた状態で仕事をしている。それが一番居心地のいい関係ということなのだろうか。「あっ! そうかもしれない。そうですね。終わりが見えているほうが安心します」。シズカはハッとした顔をした。 (取材・文/写真家 インベカヲリ★)


キャプチャ  2017年2月号掲載
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