【仁義なきメディア戦争】(16) 『君の名は。』ヒットの裏側…映画界を変えるSNSの拡散力

20170306 08
映画『君の名は。』(東宝)は興行収入176億円を突破し、日本の映画興行史上稀に見るメガヒットとなった。その理由を考えれば考えるほど、わからなくなる。というのは、この20年ほどの日本映画は、テレビ局の力を頼ってきたからだ。『フジテレビ』を始め、各局が映画製作に乗り出し、ドラマの映画化等、そのメディアパワーをフルに生かして、企画からプロモーションまでを担ってきた。「テレビ局抜きで日本映画はヒットしない状況だ」と、誰もが信じていたと思う。『君の名は。』は、そんな常識を吹き飛ばした。製作委員会にテレビ局は名を連ねていない。しかも、監督である新海誠氏の作品は、これまで全国20館程度のインディペンデント的な公開だったので、今回が初めて東宝と組んだ“メジャーデビュー”作品だ。このヒットの謎を解こうと彼方此方で情報収集をしたところ、“狩猟型から農業型へ”とでも呼ぶべき潮流の変化が見えてきた。過去作品で、新海監督は劇場公開の度に、全ての映画館でサイン会を行ってきた。ファンたちとの交流を大事にする“会いに行けるアニメ作家”だ。公開終了後はレンタル店を通じて中高生に受け継がれ、この10年間、静かに少しずつファンを増やし、育ててきたと考えられる。『君の名は。』では、公開までに様々なプロモーションが展開された。

6月末に『KADOKAWA』から小説版が出て、公開前日の8月25日までに50万部も売れた。計4万人という規模で試写会を開催した。『RADWIMPS』が歌う劇中楽曲は、公開直前に発売された。『サントリー』のコラボCMや、映画自体のテレビCMも放送されている。公開を迎えると、『ツイッター』上で人気が爆発した。“君の名は”を含むツイート数を見ると、公開日に急増した後、翌週末に更に高まり、9月4日には実質39万件/日に達した(右画像)。今年上期の大ヒット作『信長協奏曲』(フジテレビ・東宝)が実質4万件/日だったことを考えると驚愕ものだ。実際、関西大学学生の田中麻美さんが大学生100人を対象にアンケートを行った結果を見ると、『君の名は。』を見た学生は73人。劇場まで足を運んだ理由として1位の回答は、「ツイッターで話題になっているのを見て」だった。『君の名は。』を“農業型”と呼ぶのは、テレビのメディアパワーを駆使して力業で観客を呼び込む“狩猟型”の手法とは180度違うからだ。10年の長い時間をかけて人々と交流し、ファンを種から育ててきた。今回の大規模公開でも、細かな施策を地道に展開し、肥料を撒いて世話をするように告知した。公開後にツイッターで拡散されると、興味が無かった層にも伝播し、テレビCMが更に認知を広げ、話題を増幅する役割を果たした。ただ、テレビ局が製作に加わった映画のように、特定の局の番組に出演者が1日中登場し、宣伝する必要はなかった。ソーシャルメディアの登場で、“農業型”のヒットは、これまでも彼方此方で見受けられた。だが、記録を塗り替えるようなメガヒットは初めてだ。ソーシャルなコミュニケーションが、既存のメディアを凌駕するパワーを発揮できた初の事例だと言える。『君の名は。』が示すのは、非常に大きなパラダイムシフトではないか。 (メディアコンサルタント 境治)


キャプチャ  2016年11月19日号掲載
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