【科学捜査フロントライン】(14) 「科学捜査と“足で稼ぐ”捜査の融合が必要」――小川泰平氏(犯罪ジャーナリスト・元神奈川県警刑事)インタビュー

犯罪捜査も、昔と比べて大きく変わってきた。嘗ては神奈川県警刑事として現場を駆け回り、現在は犯罪ジャーナリストとして現場に足を運ぶ小川泰平氏に、科学の力による現場捜査の進化と変化について聞いた。 (聞き手/フリーライター 鈴木光司)

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――現役時代、またジャーナリストとして見た“現場”において、最も著しく進化した科学捜査は何でしょうか?
「これは何といっても、防犯カメラですね。その中でも特筆すべきは、画像解析度が高まったこと。そして、あまり注目されていませんが、カメラの価格自体が安くなったことです。警察も官庁で予算がありますから、低価格のほうがより導入が進め易い。解析度に関しては、顔や数字の認識が著しくアップしています。元々、数字は0~9までしかないので、パターン化できるというメリットはありますが、それでもナンバープレート等の特定は昔日とは雲泥の差です。それと、防犯カメラの台数が増えていることに、低価格が影響していることは間違いないでしょう。言うまでもなく、“数”は重要で、顔の認識にしても1枚の写真じゃ難しいが、現場には左の横顔、コンビニのカメラには右の横顔、駅のカメラは上から…と、異なった写真を組み合わせて一致させることで、人物を特定することができます」

――現場での初動捜査にも、防犯カメラは影響しているのですか?
「一昔前は、事件が起きたら『聞き込みに入れ!』、今は直ぐ『防犯カメラを押さえろ!』ですよ。アプローチの仕方が随分変わりました。勿論、今でも聞き込みはしますよ。でも、昔は“情報=生き物”だと言われていました。『生き物だから新鮮なうちに食べましょうよ』と。これを“情報を食う”と我々は言うのですが。例えば、人は一晩寝ると認識していた情報が薄れます。こちらから見れば劣化する訳です。更に困ったことに、生のままの情報に異なる情報が混ざることもある。最初は見たままの情報だったのに、夜になるとニュースを見て、翌日の午前中にはワイドショーを見て、段々とバイアスがかかってくる。『犯人は男だ』等と報道されると、本当は男か女かわからないのに、目撃者の情報の中では“男”になってしまう。昨日聞いていれば『男か女かわからない』という生の情報が取れたのに、様変わりしてしまうこともあるのです。しかし、防犯カメラは生き物じゃないし、よっぽどのことがないと劣化はしません。ただ、消してしまう可能性があるので、『早く押さえろ』という話にはなりますが。兎も角、今の捜査はそういうところから始まります」

――今や300万台以上とも言われる日本の防犯カメラですが、それを全て捜査に活用することは可能なのですか?
「勿論、警察がお願いする形にな ります。ですから、持ち主から協力を得られないということもありえます。但し、今の日本では余程のことがない限り、拒否されることはないと思います。それに、警察も人権に対しては十分配慮をしていますので、捜査で映像を確認する際は、不審者(容疑者)のところだけを撮影するようになっています。余分なところは一切撮影しない。事案によっては借りてくる場合もありますが、その時は信頼関係になりますね。それでも、捜査に必要なのに拒否ということになれば、捜索差押許可状の発付を得て、法的な処置を行うこともあります。まぁ、先に述べたように先ず、そのようなことはありませんが」

――つまり、現在の捜査では防犯カメラを押さえれば、容疑者の特定も可能であると。
「いやいや、それは違います。よく勘違いされることがあるのですが、防犯カメラはあくまでも捜査の裏付けのた為。あくまでも容疑者の足取り等は、現場の刑事がきちんと取っています。そこから絞っていって、その先に防犯カメラがあるということです、原則的には。目撃証言をここまで追ったけど、後が途切れている…その先に防犯カメラという具合ですね。尤も、今は防犯カメラを主に(捜査を)やっているのは事実ですから、防犯カメラが先になる場合もあるでしょう。どっちが先かは言い辛いですが、そこは捜査上のテクニックも多少あると考えてもらえれば、と」

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――防犯カメラの映像から容疑者を特定していくに当たって、以前と変化した面はありますか?
「いつからとははっきり言えませんが、各都道府県警に防犯カメラのチームが置かれるようになりました。専属のチームですね。ただ、そうは言っても見るのは人間ですから、色々と制限はあります。テレビの刑事ドラマみたいに、ピピピッと画像が一致して…なんてことはありませんから(笑)。実際に人が見られる時間は、2時間から3時間が限度ですね。それ以上は見せてくれません。通常は午前中の3時間。それを見たら、後は他の人間に交代です。やはり、集中力が肝要ですからね。私も『5時間続けて見ろ』と言われたら無理です。尤も、その日の事件で今夜中にやるという時は、多少の無理をしても映像を見ることはあるでしょうけど」

――防犯カメラの映像を見る時に重要なことは何でしょうか?
「やはり、異なった人物ですね…違和感。そこは大切です。わかり易い例でいうと、連続放火等がそう。これは服装・所作でわかります。中でも靴は顕著ですね。火災の現場にいる人は大体、サンダルかなんかです。近所の人がちょっと出てきたようなケースが殆どですから。深夜にきちんと革靴なんていうのは、やはりチェックします。服装でも、背広にシャツなんていうのはあまりいません。季節にもよりますが、精々ジャージにダウンを羽織っただけとか。何れにしても、ここでも防犯カメラの解析度が高まったことによって、より精度の高い捜査ができるようになりました」

――最近の捜査で防犯カメラが大きな役割を果たした事件というと、何が挙げられますか?
「碑文谷の事件(※2016年6月24日、88歳の女性が目黒区の碑文谷公園でバラバラ遺体となって発見された事件。28歳の無職の男が逮捕)や、相模原の障碍者施設で19人を殺害した事件等は、防犯カメラの存在が大きいですよね。相模原の事件にしても、以前なら出頭した際、捜査員としては『血だらけだから(犯人に)間違いない』と思うだろうけど、その為の裏付けは必要だった。この場合は、防犯カメラが目撃者の役割を果たしてくれています。現場から逃げているところが写っていますからね」

――今後、防犯カメラの性能、また解析力のアップで、犯罪捜査はより正確に、迅速になっていくでしょうか?
「10年後・20年後には、容疑者、或いは行方不明者が自動販売機のボタンを押したらわかる…という時代がくるかもしれません。でも、今の時点では科学捜査と足で稼ぐ捜査を融合させていく必要があると思います。私もDNAが出てきた時は、『凄いものが出てきたな。これで否認のしようもないだろう』と思いました。しかし、100%ではない。足利事件(※冤罪が確定した幼女連続殺人)のようなこともある。最近の事件では、某サービス業のトップが射殺された事件がありましたよね? あの現場では、煙草の吸い殻が遺留品としてあって、DNA型鑑定で暴力団幹部のものとわかっている。しかし、それだけでは仕方がない。実際、幹部が現場で“仕事”をするような立場ではないということは、地元の刑事ならわかっていた訳ですから。このように、科学捜査にも限界はあるし、昔の捜査だけでは勿論ダメで、双方が必要だと思います。私が現役の頃は、“現場百遍”と言われました。今でも、それはあると思います。捜査に行き詰まったら現場に戻るのは基本です。その上で、日々進歩する科学捜査があるなら、これ以上、心強いことはないですよ」


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