【Test drive impression】(11) 『トヨタ自動車 ヴィッツ HYBRID U Sporty パッケージ』――アクアと同じシステムを搭載するヴィッツハイブリッド登場!

高校サッカー界じゃ、昔っから「全国大会より静岡予選のほうが厳しい!」等と実しやかに囁かれたりしますが、そいつは自動車業界も同じ。特に国内販売は、昔から「メーカー間のバトルよりトヨタ内のバトルのほうが過酷だよ…」等と言われていたりします。「久々にそれを見た!」と思ったのが、今年1月のマイチェンで元祖国民的コンパクトカー『ヴィッツ』に追加されたハイブリッドモデルなのであります。抑々、ヴィッツは2000年代を席巻した元祖上質コンパクトハッチ。初代はキュートなデザインと1リッターエンジンによる低燃費と上質な走りで人気を集め、ベストセラーの『カローラ』を凌駕! しかし、その記録を2011年に軽く超えてしまったのが、同じトヨタの『アクア』。アクアは、既に国民車となっていた元祖ハイブリッドカー『3代目プリウス』の小型版。1.5リッターの高率ハイブリッドユニットを専用開発し、それを当時のヴィッツのボディーの空力を改良して載せて売ったら、これがウルトラ大ヒット! 最良モード燃費は当時のプリウスに迫る37.0㎞/リッターだわ、発進時は相当な割合で静かにEV走行をし、月2万台以上を売って新国民車になったのであります。アクアの登場以来、影が薄くなったと思っていたヴィッツ。ところが、流石はトヨタであります! 実は手堅く売れていて、月に6000台前後の販売をキープしており、常にベスト10内にランクイン。販売台数は今、最も勢いのありそうな『マツダ』の『デミオ』の全然上をいっています。それどころか、調べて驚きで、海外、特にヨーロッパじゃフランス工場で造られて、月2万台弱の好成績。中でもハイブリッドは2012年に量産化され、月に8000~9000台も売る人気車になっているんです。

そして、遂に日本でも掟破り! アクア用の1.5リッターハイブリッドをヴィッツに載せ、ハイブリッド専用車のアクアとガチンコ勝負! 今回、トヨタ内のバトルを勃発させてきた訳です。これが実際、絶妙な競争具合なんです。まさに、双子に違う服を着せて、同じ彼女を口説かせるような酷な勝負で(笑)。先ず、ビックリなのはサイズで、ヴィッツハイブリの全長×全幅×全高は以前よりちょっと伸びて3945×1695×1500で、比べるとアクアは一部グレードを除き3995×1695×1455と、ちょっと長くてちょっと低い。結果、室内、特にリアシートはヴィッツのほうが微妙に背が高い分、頭回りに余裕がありますが、逆にラゲッジはどちらもあまり広くないけど、アクアのほうが微妙に奥行きはあるという感じになってます。一方、これは趣味にもよりますが、インパネは若干カラフルで、如何にもハイテクなアクアより、オーソドックスなヴィッツのほうが大人っぽい。エクステリアも、これまたアクアのほうがわかり易く“ミニプリウス”なんですけど、ヴィッツのほうは王道の可愛さをキープ。特に、今回のマイチェンでフロントやリア共にライト回りを大きく派手にし、より踏ん張り感が増しています。で、顔の輪郭がクッキリ! シートもカラフルなアクアに対し、ヴィッツはヨーロッパ志向な地味な上質系。っていうか、「最近、ヨーロッパ車っぽく上質なデミオをライバル視したのかも?」という出来です。気になるヴィッツとアクアの最も大きな違い、それは“走り”です。ヴィッツは明らかにアクアより乗り心地が良く、ステアリングフィールもクリア。それは元々、走りに煩いヨーロッパ向けグローバルコンパクトってこともあるけど、それ以上に今回のマイチェンで大幅改良が施されています。

それも意外に地道な改良ばかりで、例えばインパネ回りは鉄板の板厚アップが3ヵ所以上も施され、ドア回りはレーシングカーもビックリのスポット溶接増し打ちまで敢行。その上、減衰力アップと動きの滑らかさを両立した新バルブ構造の前後ショックアブソーバーも搭載。一歩一歩だけど、走り味が確実に良くなっているんですね。で、肝心の燃費。ヴィッツハイブリッドの最良モード燃費は37.4㎞/リッターで、表面的にはアクアの37.0㎞/リッターに追いついていない。だが、これは見せかけで、装備充実のアクアの売れ線グレードのモード燃費は33.8㎞/リッターで、実質的にはヴィッツハイブリッドのほうが上。というか、実はエンジン効率と制御効率の見直しで燃費性能が上がっています! 価格的にもヴィッツハイブリが182万円弱スタートで、アクアが176万円強スタート。一見、アクアのほうが安いけど、装備充実モデルは188万円を突破するので…実に微妙なバトル。無論、当分は長く売られていて、値引き額も大きく、“ザ・ハイブリッド専用車!”のアクアのほうが販売は有利な筈。だけど、より小さくキュートで便利なのはヴィッツだし、そのヨーロッパテイストの大人っぽい質感や走りに魅了される人も多い筈。兎に角、トヨタがこの自社内バトルで、超激戦区たるコンパクトハイブリッドクラスを制しようとしていること間違いナシだし、2月14日にトヨタのハイブリッド車の世界累計販売台数が1000万台を突破したけど、更に増えそう(苦笑)。まぁ、ヴィッツ買ってもアクア買っても結局、得をするのはトヨタで、辛いのは販売店、悩ましい思いをするのはユーザーって構造な訳。


小沢コージ(おざわ・こーじ) 自動車評論家・『日本カーオブザイヤー』選考委員。1966年、神奈川県生まれ。青山学院大学卒業後、『本田技研工業』に入社。1990年に『二玄社』に転職し、自動車雑誌『NAVI』の編集を担当。1993年からフリーに。『週刊自動車批評』(TBSラジオ)にレギュラー出演中。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)・『マクラーレンホンダが世界を制する!』(宝島社新書)等。


キャプチャ  2017年3月13日号掲載




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