【労基署ショックが日本を襲う】(12) 特捜部隊の“かとく”新設で個人戦から組織戦へ戦略転換

大企業の労務担当者にとって今、最も気になる存在といえば、大手企業の長時間労働問題に特化した厚生労働省の特捜部隊“かとく”だろう。組織の運営体制や設立の背景に迫った。

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昨年4月1日、長時間労働の事案に精通した腕利きの労働基準監督官たちが、東京都千代田区九段南の『東京労働局』へと集められた。この労働基準監督官たちこそ、大手広告代理店『電通』への強制調査で世間に広く知られることになった長時間労働の特捜部隊、通称“かとく”の創設メンバーだ。かとくの正式名称は『過重労働撲滅特別対策班』。悪質な長時間労働が疑われる企業の対応に特化した専従組織である。このかとくの新設を契機として、労働基準監督署は大きく進化を遂げていくことになる。1つの労基署だけでは対応できない大規模事案や、立証に高い捜査技術を要する困難事案に対応する為、厚生労働省によって東京労働局と『大阪労働局』に新設された。全国展開する大企業を主なターゲットに定めている。「いくら現場の工場を指導監督しても、結局は制度を作る本社を叩いて変えないと意味がない。特に、長時間労働の実態把握には専門性が必要なので、特捜チームを作った」(厚労省幹部)。メンバーは何れも、事業所に立ち入って監督指導・摘発を行う労働基準監督官。特別司法警察職員として、違法な業者を検察庁に送検する権限を持っており、中でも長時間労働に関する経験が豊富なべテラン・中堅が選りすぐられたという。労基署の通常のやり方と異なり、違反が認められた場合、“是正勧告”に留めるのではなく、基本的に“書類送検”に持ち込むのがかとくの特徴だ。社員に違法な長時間労働を強いる企業には、パソコンに保存された労働時間のデータを改竄する等、労務意識の欠片も無いところが少なくない。そうした悪質なケースにも対応する為、改竄されたり消去されたりしたデータを復元する証拠収集技術『デジタルフォレンジック』を導入し、その研修にも力を入れている。かとくがこれまで書類送検にこぎ着けた案件は、全部で5件ある。

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大阪かとくは2014年12月、強制捜査に入っていた外食チェーン『フジオフードシステム』について、翌2015年8月に会社、及び店長ら実に16人を書類送検。他にも、外食チェーン『サトレストランシステムズ』やスーパーマーケットの『コノミヤ』を書類送検している。一方の東京かとくは、靴販売チェーン『エービーシーマート』やディスカウントストア大手『ドンキホーテ』を書類送検。更に、空前の規模となった電通に対する強制捜査を主導した。かとくを巡っては、厚労省が今年に入ってから組織網の拡充を図っており、その網を全国に広げているところだ。今年4月には厚労省内に、広域捜査の調整役となる本省かとくを設置した。同時に、全国47の労働局にも、長時間労働に関する監督指導を専門に担当するかとく監理官を配した。其々の役割分担について、全国の労働基準監督官のトップに立つ髙井吉昭氏は、「本省かとくは、個別に案件を持つ訳ではなく、広域に跨る事案の調整や方針決定が主な役割であり、実動部隊は東京・大阪のかとくが担う」と解説する。実のところ、かとくの新設は、労働基準監督官自身の働き方改革をも促している。どういうことか? 抑々、労働基準監督官の監督指導の比重は徐々に、工場や現場の安全管理から、職場での長時間労働へとシフトしてきている。そして、その長時間労働の事案は複雑で手間のかかるケースが多く、単独行動では限界があるとされる。にも拘わらず、労働基準監督官は検察官ほどではないにしろ、独任官的な働き方をする傾向が強い人種だった。そこで厚労省は、個人戦から組織戦へと戦略を転換し、特捜部隊を立ち上げたという訳だ。本省かとくの岡田直樹氏は、「監督官の人員は限られているので、捜査は単独でやることが多かったが、かとくが発足してチーム捜査をするようになると、取り掛かる事案もより高度で、大規模なターゲットを狙えるようになった」と手応えを感じている。かとくの増強は、長時間労働の是正への取り組みが一過性のものではなく、これから長く続く一大潮流になることを示唆する。企業側は一刻も早く、その構造変化を直視して、自社の労務管理の在り方を再点検すべきだろう。


キャプチャ  2016年12月17日号掲載

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