【原発漂流・東日本大震災から6年】(上) 消えた“低廉”の2文字

“3.11”がまた巡ってくる。東日本大震災から間もなく6年。『東京電力』福島第1原子力発電所事故の傷痕は未だ深く、国内の原発は殆どが止まったままだ。東電の経営は綱渡りが続く。漂流する日本の原発はどこに向かうのか。

20170307 08
白い靄のかかった原発内部の映像が、スクリーンに浮かび上がった。今月16日夜、東京都千代田区内幸町の『東京電力ホールディングス』本社。カメラを2台つけたサソリ型ロボットが福島第1原発2号機の内部に入り込み、炉内の様子を映し出した。だが、2mほど進んで立ち往生する。厚さ数㎝の堆積物を乗り越えられず、走行用のベルトが動かなくなった。目標としていた原子炉の真下には近付けなかった。事故から6年経っても、原子炉内の状態は殆どわかっていない。東電は、溶け落ちた核燃料(デブリ)を取り出す方法を今夏に決めるつもりだ。しかし、今のままでは難しい。どこにどれだけのデブリがあるかすらわからないからだ。経済産業省は昨年末、「福島第1原発の廃炉や賠償にかかる費用の総額が21兆5000億円に上る」という試算を纏めた。3年前に示した約11兆円のほぼ2倍だ。とても東電1社で負担できる額ではないが、「これで終わり」と思っている専門家は少ない。廃炉に向けた作業の入り口にも立たない段階で弾いた数字だからだ。費用が膨らみ続ければ、ツケは何れ利用者に回る。

原発を受け入れている地元の首長に宛てて政府が出す再稼働の要請書から最近、2つの文字が消えた。“低廉”だ。これまでは、原発の電気の安さを訴えるのが慣例だった。ところが先月、『九州電力』玄海原発が安全審査に合格した際、佐賀県の山口祥義知事が受け取った要請書に、この決まり文句は無かった。「安全対策等の費用を考えれば、『原発の電気が安い』とはもう声高に言えなくなった」。経産省幹部は、こう漏らす。福島の事故の前に54基あった日本の原発の内、今、動いているのは九州電力の川内1・2号機(鹿児島県)等3基に留まる。世論や地元の反発は根強く、再稼働は遅々として進まない。それでも、「電気が足りなくなって生活や産業に影響が出る」といった混乱は起きていない。電力需要の減少もあり、原発不要論は勢いづいている。本当に、原発はもういらないのか? 目を向けなければならないのは、火力発電に頼り過ぎる弊害だ。北海道から沖縄まで、電力大手10社は4月まで3ヵ月続けて、一斉に電気代を引き上げる。昨年11月の『石油輸出国機構(OPEC)』による減産合意で、原油価格が急上昇し、それにつれて火力発電の主な燃料になる液化天然ガス(LNG)が値上がりした為だ。中東の政情不安やドナルド・トランプ政権のエネルギー政策が、原油やLNGの価格にどんな影響を及ぼすかは見通し難い。地球温暖化を防ぐ観点からも、火力発電に頼り続ける状況は危うい。大切なのは、「太陽光や風力といった再生可能エネルギーを含め、様々な電源をどう組み合わせるか?」という視点だ。政府は2015年に、2030年時点で電気の20~22%を原発で賄うのが最適とした。電力の安定的な確保を考えた時、原発を無くす選択肢はあり得ない。今年から始めるエネルギー基本計画の改定は、そこが出発点になる。


⦿日本経済新聞 2017年2月28日付掲載⦿
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