【原発漂流・東日本大震災から6年】(下) 東電分社化構想の波紋

20170307 09
高さ10mに及ぶ巨大な防潮堤に守られた柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)。先月1日、『東京電力ホールディングス』の広瀬直己社長は、新潟県・米山隆一知事の初の現地視察を緊張した表情で出迎えた。福島第1原発事故の教訓を踏まえて対策を講じ、訓練を繰り返す。米山知事は「安全対策を確かめられた」と語り、広瀬社長も「知事は対話を重視される方だ」と安堵した。だが、米山知事は再稼働の慎重派だ。直後に、「現状で再稼働を認められない。検証に数年かかる」と釘を刺す。同14日には、重大事故時の対応拠点の耐震性不足が判明。昨日、『原子力規制委員会』は広瀬社長を呼び、6・7号機の審査資料を出し直すよう要請した。先行きは険しさを増すが、東電が再稼働に拘るのは経営再建の要だからだ。6・7号機が動けば、年1000億円の利益が出る。合理化は限界に近付き、「事故処理の資金を捻出する為には再稼働が欠かせない」と主張する。“原子力の分社”――。昨年10月25日、経済産業省が突如として公にした素案に、東電社内は騒然とした。経産省は、事故を起こした東電が再び原発を動かす難しさが身に沁みている。ならば、本体から切り離して他社と組み、東電だけが前面に出ない形にすればどうか。東電改革を議論する委員会の資料に“分社”の文字を忍び込ませ、反応を探った。

波紋は大きかった。真っ先に反発したのは、柏崎刈羽原発が営業圏内にある『東北電力』だ。「提携や再編は全く念頭に無い」。原田宏哉社長は怒りを隠さない。地元との信頼構築が不可欠の原発で、「急に違う主体が出ていくのはあり得ない」。火力で東電と提携する『中部電力』ですら、勝野哲社長が「メリットがわからない」と明言し、『関西電力』は西日本で他電力との仲間作りに動く。今の電力業界を支配するのは、「福島事故の負担に巻き込まれてはたまらない」という強い警戒感だ。結局、委員会が昨年12月に纏めた提言から、“分社”の文字は外れる。だが経産省は、“共同事業体の設立”という表現で、再編志向を色濃く滲ませた。東電の広瀬社長は「他社との再編を進めたい」と表明したが、肝心の相手が見つからない。福島事故の処理費用は21兆5000億円に達する見込み。内、東電は廃炉や賠償で15兆9000億円を負担する。これまでに約1兆2000億円を支出したが、今後は年5000億円を30年間払い続ける必要がある。震災後に国が筆頭株主になった東電は、暫く国家管理が続く。原発の行く末にもう1つ、大きな問題が浮上した。『東芝』の経営危機だ。『三菱重工業』や『日立製作所』と並ぶ原発メーカーの東芝は、アメリカの子会社『ウエスチングハウス』に絡む7000億円超の損失に揺れる。東芝は海外事業を縮小する一方、国内は続ける方針だが、電力各社に「再稼働や廃炉に影響が出てくるのではないか?」との懸念が広がる。東芝の社外取締役を務める『経済同友会』の小林喜光代表幹事は、「(原発事業が)一企業で成り立つのか考えなければならない」と業界再編の必要性を訴える。原発再稼働は、電気料金の引き下げに繋がる。再稼働が進まなければ技術や人材も確実に細っていくが、それを避ける為の再編は展望が開けない。消費者や産業界に恩恵を齎して福島復興に繋げるシナリオは、未だ現実味を欠いている。

               ◇

西岡貴司・江渕智弘・浅沼直樹が担当しました。


⦿日本経済新聞 2017年3月1日付掲載⦿
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