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【水曜スペシャル】(424) 結末は“お家騒動”に…山口フィナンシャルグループに食い込んだ日銀OBの来歴

地銀界にあって中国地方の雄とされてきた『山口フィナンシャルグループ』。しかし、グループに君臨した吉村猛会長が追放される事態に。その背後には吉村会長の独断専横と、日銀出身コンサルタントの存在があった。 (取材・文/本誌取材班)



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山口FGは12月24日に臨時株主総会を開き、前会長兼グループCEOの吉村猛(※左画像)の取締役解任を諮る。解任劇の発端は、消費者金融を専門とする新銀行設立に向けた吉村の独断専横とされる。だが、この新銀行構想の陰には、ある日銀OBの存在がある。今回、本誌取材班は山口FGの取締役会で配布された内部資料を独自入手。資料からは、宛ら地銀を“食い物”にしようとした日銀OBの姿が浮かび上がる。“新銀行プロジェクトで入社する6名の報酬について”。5月28日、山口県下関市にある山口FGの本店で開かれた取締役会で、吉村はそう題した内部資料を配布した。吉村は“全国区”の消費者金融専門の新銀行を設立する方針と併せ、新銀行のCEOとそのスタッフ計6人を6月1日付で外部から迎え入れると説明した。取材班が入手した資料は、その6人の報酬に関するものだ。驚くべきは、その額である。資料には、CEOの報酬として「固定で年1億円、初年度のみ、入社に伴い現在の会社で喪失する繰延報酬分2100万円を入社一時金として上乗せ」と記された。山口FGが2021年6月に提出した有価証券報告書によると、同グループには報酬総額が1億円を超える役員は存在しない。山口FGにとっては法外とも言える報酬である。新銀行のCEOに就き、この報酬を受け取る予定だったのが、日銀OBで外資系コンサルティング会社『オリバーワイマングループ』の前日本代表パートナーである富樫直記だ。資料には参考として、富樫の過去3年間の報酬も記載されている。それによると、過去3年間の平均で1億680万円を受け取っていたという。

資料に記された6人のうち、富樫を含む4人はオリバーワイマンからの移籍者である。うち、エンゲージメントマネージャーの報酬は基本給が2000万円とされた他、秘書は基本給が600万円とされた。有価証券報告書によると、山口FGの従業員の平均年収は528万円である。移籍するスタッフの報酬も、山口FGの従業員の平均年収を上回る。残りの2人は外部から採用である。1人は富樫の社用車の運転手である。当時、大手タクシー会社に勤める運転手を固定で年600万円で採用するとされた。そして、もう1人が富樫の兄である。大手ベンダーに長く籍を置いた富樫の兄は、IT統括という肩書きで迎え入れられることになっていた。その報酬は固定で年5000万円とされ、“タクシー通勤(会社負担)”という細やかな項目まで盛り込まれた。親族やスタッフを丸抱えで山口FG入りしようとしたこの富樫は、一体何者なのか。富樫は1984年に早稲田大学を卒業後、『日本銀行』に入行。日銀時代はアメリカ留学やロンドン駐在も経験した他、金融機関の立ち入り検査を担う旧考査局等にも籍を置いた。銀行経営に関する著作も多く世に出す等、「業界では名の知れた存在」(地銀関係者)という。日銀退職後の1999年には金融コンサル会社のトップに就いた。この会社は当時、『フューチャーアーキテクト』(※現在の『フューチャー』)の子会社。あるIT業界関係者は、当時の富樫の活動の一端をこう明かす。「富樫は日銀のキャリアを全面に出し、(フューチャー会長兼社長の)金丸恭文と組んで、信金や地銀に猛烈に営業をかけていた」。2010年にオリバーワイマンの日本法人トップに就いてからも、地域金融機関を相手にビジネスに勤しんでいたとされる。特に、信用金庫等地域金融機関の幹部への接待攻勢は激しかったとされ、「夜の銀座やゴルフ、ヨットでのクルージングといった手厚い接待で、多くの信金幹部が篭絡されていた」(信金関係者)という。山口FG関係者によると、富樫と山口FGとの縁を深めたのは、吉村の前任トップの福田浩一(※2018年に逝去)。だが、吉村は福田以上に富樫を重用した。「地銀では経営戦略を担う人材が不足し、コンサル頼みになる」。前出の地銀関係者がこう明かすように、日銀OBという金看板を持ち、地銀経営にも明るい富樫は、軍師に打ってつけの存在だったというわけだ。今回、吉村解任の一因ともなった新銀行構想も、富樫のアイデアとされる。山口FGが2021年10月に公表した調査報告書によると、5月に開かれた取締役会で配布された新銀行プロジェクトの資料も、オリバーワイマンが作成したものだ。

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つまり、吉村は富樫の新銀行構想に全面的に乗っかり、トップに富樫を指名したわけである。富樫からすれば、まさに“上げ膳据え膳”である。とはいえ、吉村の解任で全てはご破算となった。吉村の権限逸脱を結論付けた山口FGの調査報告書は、吉村が新銀行構想を独断で進めたことに加え、新銀行のトップ人事やその巨額報酬も取締役会に諮らずに進めたことを逸脱行為として挙げている。報告書によれば、吉村は取締役会に諮ることなく、2021年3月に富樫に採用の内定を出している。それを受け、富樫は4月にオリバーワイマングループ日本代表パートナーを退任している。この動きに、前出の山口FG関係者からは「富樫はCEO就任を既成事実化しようとした」との声が上がる。これは、その後の吉村の言動からも窺える。吉村は新銀行構想と富樫のCEOへの起用を行内で発表して以降、取締役会等の場で「(富樫には)既に内定を出しており、取り消せば損害賠償問題になる」等と繰り返していた。吉村が富樫の採用に教に拘っていたというわけだ。山口FGは11月、新銀行設立の検討を中止すると発表した。現社長の椋梨敬介は大手紙のインタビューに対し、「新銀行構想は地方創生に貢献していくべき当社のビジネスモデルに整合しないと判断した」等と答えている。一方の富樫と吉村は緊密に連携し、現経営陣への反攻の機会を窺っているという物騒な話もある。「今回の件で、金融当局からオリバーワイマンに関するお触れが回っている」。別の地銀関係者はそう明かす。地銀に集り過ぎた高いツケとなったといえようか。 《敬称略》


キャプチャ  2022年1月号掲載
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