【解を探しに】第1部・漂流ニッポン(05) 老いて消えゆく故郷

20170307 11
落石が転がる細い林道を抜けると、山里の風景が広がった。昨年11月中旬、福井県境に近い岐阜県本巣市にある越波集落では、自治会長の松葉三郎さん(74・右画像)が冬ごもりの支度に追われていた。集落は間もなく深い雪に埋まり、4月まで無人となる。集会場の戸締まりを終えた松葉さんが呟いた。「あと何年、この集落を守っていけるだろうか」。26軒の家があるが、住民票を置くのは松葉さんと兄(85)だけ。2人とも愛知県や岐阜市内に自宅がある。冬の間を除き、週1回ほどのペースで越波に通う。小学校卒業後に故郷を離れた。前任の兄に頼まれ、「仕方なく引き受けた」自治会長だが、仕事ぶりは精力的だ。廃校となった小学校を集会所に改修し、1200万円の寄付を集め、寺の鐘つき堂も再建した。離れた住民には、集落の様子を伝える新聞を送る。何故そこまで? 「住民がいなければ、故郷が地図から消えてしまうでしょう」。“限界集落”という言葉が登場したのは、日本がバブルに沸いた1980年代末。「高齢者が半数を超え、共同生活の維持が困難になる」と指摘された。総務省の調査(2010年)によると、越波のような過疎集落は全国に約6万5000ヵ所あり、その内の454ヵ所が「10年以内に消滅する可能性がある」とされる。

人口が減少に転じ、「長期的には無人の集落は更に増える」(東京大学大学院の林直樹特任助教)。そこに暮らす人と同じように、地域も老いと向き合わざるを得ない。「転んで目の辺りを打っちゃって」「べっぴんさんなのにねぇ」。鹿児島県大隅半島の南端にある南大隅町の西方集落。先月中旬の夕方、公民館にお年寄りが次々と集まってきた。夕食を囲み、並んで敷かれた布団に入った後も、会話が弾んだ。集落の住民が一緒に一晩を過ごす共同生活は、同町等が約2年前から実施している。常連の猿喰信子さん(81)は、「ここで人の顔を見るだけで安心する」と相好を崩す。奈良県内に住む長女から同居を提案されているが、「先祖代々の墓を無縁墓にする訳にはいかない」と断っている。大きな集落が小さな集落を支える“横”の連携を進めるのは、富山県南砺市の西太美地区。3年前、住民有志が『地域おこし支援隊』を結成した。メンバー約60人の中心は60代。農業用水路の清掃や雪かきを有償で請け負う。地区内10ヵ所の集落の人口は計約860人で、最少は11人。支援隊を立ち上げた山崎彰さん(65)は、「支え合わなければ、いつかは自分の集落も消えるという危機感がある」と話す。老成期を迎えた故郷と、どう寄り添うか。生まれ育った土地への愛着や、周りの人々との繋がり。消えゆく故郷への思いは、合理性だけでは測れない。「水田や山林、四季の移り変わりは、故郷への郷愁をかき立てる原風景。集落が消失すれば、叙情豊かな日本人固有の感性も失われてしまう」。限界集落の概念を提唱した旭川大学大学院の大野晃教授は、そんな危惧を抱いている。

■集落だけじゃない消滅の危機
人口減少により、集落だけではなく、自治体単位での消滅が危惧されるようになった。2014年には民間シンクタンクの『日本創成会議』が、「2010年から2040年までに20~39歳の女性が半減する“消滅可能性都市”が、約1800市区町村の約半分に達する」とのリポートを公表し、衝撃が広がった。政府も危機感を募らせている。2060年に人口1億人を維持する目標を掲げ、昨年6月には集落を支える“小さな拠点”作りや、2地域居住を含む“地方居住の推進”等を盛り込んだ指針を閣議決定した。自治体も、中長期の展望を示す“地方人口ビジョン”と、5ヵ年計画の“地方版総合戦略”を今年度末までに纏める。ただ、昨秋までに人口ビジョンを公表した都道府県の内、人口増を見込むのは沖縄県だけ。如何に地域を維持していくか、厳しい状況に変わりはない。


⦿日本経済新聞 2016年1月4日付掲載⦿
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