【教科書に載らない経済と犯罪の危ない話】(35) ラオスのリゾート地で会った金正男との忘れ難き政治談議

金正男が暗殺された。2月13日、マレーシアのクアラルンプール国際空港での出来事だった。第一報は韓国・KBSの速報だったが、詳細はわからず、情報は錯綜していた。軈て、女スパイによる毒殺というまるで映画のような展開に、世界中が大騒ぎである。そこで、本来ならバンコクの入管難民施設での続編を書くつもりだったのだが、急遽、金正男の話にさせてもらった。金正男に初めて会ったのは、ラオス北部のヴァンヴィエンという小さな町だった。ラオスの首都・ヴィエンチャンから、曲がりくねった山道をバスで走ること約4時間。山に囲まれた長閑な町だが、ホテルや酒落たレストランの並ぶリゾート地で、欧米人の旅行客で賑わっている。ヴァンヴィエンは何も無い町だが、空は青く美しい。未舗装の道路には、車より牛や鶏のほうが多いような所だ。唯一の観光資源がマリファナやアへン等だったが、今では取り締まりが厳しくなっているらしい。2012年、タイのタクシン・チナワット元首相がヴィエンチャンを訪れた時、筆者は友人とヴァンヴィエンにいた。当時、メインストリートのレストランやバーには、昼間から水パイプでマリファナやアへンを吸う欧米人の姿が見られた。店の看板に“HAPPY”という文字が書いてあれば、麻薬が置いてある。マリファナがトッピングされたビザは“HAPPYピザ”だ。ヴァンヴィエン初日の夜、通りの外れにある割と真面そうなレストランに入った。すると、奥の席に3人組のアジア人が食事をしていたのだが、その中の1人に見覚えがあった。金正男だ。私は英語で、「正男さん、こんばんは」と声をかけてみた。「こんばんは」。彼は美顔で答えた。

「一緒に写真を写してもらえないか?」と私の友人が頼むと、「食事をご馳走するから勘弁してくれ」と大袈裟なジェスチャーで手を操る。その顔がとてもチャーミングだったのを鮮明に覚えている。金正男と一緒にいた男たちは、顔つきから朝鮮民族だと思われた。ヴァンヴィエンには北朝鮮系の飲食店もあるので、不思議ではない。彼らは1時間ほどで店を後にしたが、食事の間、金正男は終始和やかだった。アメリカや中国の政治体制について、自分の見解を解説してくれた。彼は国際感覚に優れており、とても知的でフレンドリーな男だった。金正男がヨーロッパとアジアの国際金融舞台で有名なことは、あまり知られていない。マカオとシンガポールでカジノのハイローラー口座を使ったマネロンでも、相当な額を熟していた筈だ。スイスの銀行にも強いコネクションを持ち、トラスト(信託)・ファンド・企業向けファイナンスも得意だったと思う。2度目に彼と会ったのは、シンガポールの総合リゾートホテル『マリーナべイサンズ』。偶然、筆者の知人が彼と一緒にビジネスをしていた。その時は北京からシンガポールへの資金移動を計画していたが、「他国の監視が厳しくて難航している」と嘆いていた。金正男が暗殺された国がマレーシアだったのは、彼の活動を考えれば不自然ではない。何故なら、マレーシアには彼と関わりのあるカジノ運営会社『ゲンティングループ』があるし、北朝鮮大使館もある。その為、工作員も活動し易かった筈だ。それに、マカオやシンガポールではボディーガードによる警備も厳重で、何より土地が狭くて暗殺の実行が難しい。それから、マレーシア北部の木材関連企業には北朝鮮人労働者が多く、大きなコミュニティーもある。両国の間係を考えても、暗殺の舞台としては好都合な国に違いない。あの愛嬌ある笑顔が二度と見られないのは、とても悲しい。 (http://twitter.com/nekokumicho


キャプチャ  2017年3月7日号掲載
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テーマ : 国際問題
ジャンル : 政治・経済

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