【大震災から6年・福島で生きる】(02) 農の格付け、風評の影

20170308 07
「国の検査をクリアしているし、安全だという確かな情報があれば、風評には流されない」――。先月上旬の週末、アンテナショップ『日本橋ふくしま館』(東京都中央区)で洋梨を購入した主婦(64)は、笑顔を見せた。原発事故直後、“福島県産”の消費は著しく落ち込んだ。『大田市場』で働くある青果卸の担当者は、「福島の桃が出回る2011年8月頃は全く買い手がつかず、衝撃を受けた」と振り返る。「汚染された桃を食べさせるのか」と根拠も無く客に責められた小売業者の話も耳にした。当時の福島産桃の卸値は1㎏195円と、事故前の半値以下。昨夏は400円前後で推移した。担当者は、「ほぼ正常に戻った。風評被害はあまり感じない」という。農林水産省の統計によると、生産量が多い中通り産のコシヒカリ(2016年産)の相対取引価格は、平均で約1万3700円。全国の全銘柄平均より約630円安いが、差は縮まった。価格推移だけを追うと、風評被害は相当程度薄らいでいるようにも取れる。

しかし、生産者たちは寧ろ危機感を強めている。産地としての“格付け”が下がったままだからだ。例えば桃。事故前は山梨・福島・長野の順に高い値が付いた。今は長野に逆転された状態が続く。また、福島産だけを扱っていた小売店が、事故後に他県産との併売に切り替え、それが固定化している。牛肉の取引現場に“福島相場”という言葉があるという。前年価格を参考にした安値が定着し、嘗て競い合った宮城・栃木との差が埋まらない。傾向は他の生産物にも当て嵌まり、新潟県の魚沼産と並ぶ高級品だった会津産コシヒカリは、ゆめぴりか・つや姫等に取って代わられ、中価格帯に甘んじている。「避けはしないが、同じ品質・価格なら敢えて福島産は選ばない」――。福島相場の裏にあるこんなムードが続けば、生産者の意欲を削ぎ、後継者不足が更に深刻化しかねない。産地として再びランクアップする道はあるのか。難題への挑戦は既に始まっている。福島県郡山市の『鈴木農場』。3haの畑に、珍しい品種の野菜を植え付ける。ほっそりとした形で目を引く御前人参は、甘みが強く、ジュースに最適だ。こうした野菜・種・苗を郡山ブランドとして売り出す。放射線検査結果と共に、旨み等“おいしさの数値”をホームページに表示する。ここ数年間、放射線に関する客からの問い合わせは一度も無く、生産量は震災前を上回っている。経営者の鈴木光一さん(54)は、「震災で、後継者問題等、前からあった課題がはっきりした。福島産の魅力を如何に消費者まで届けるか、考えながら一歩進むきっかけになれば、悪いことばかりじゃない」と考えている。

■福島県産の購入、「躊躇う」15%超
消費者庁が2013年2月から半年毎に被災地域・東京都・大阪府等の大都市部で実施する調査は、福島産を敬遠する傾向が根強いことを裏付ける。福島県産を躊躇う人の割合は、2013年2月が最多の約19%だったが、以降の調査でも15%を上回る高止まりが続く。農林水産省は来年度予算案に、風評被害の実態調査の経費を計上した。流通のどの段階に問題があるのか、生産者や流通業者らから聞き取る。極端に安い価格で買い叩くといった事例に対して、指導や助言をする。通常国会に提出した福島復興再生特別措置法の改正案に、規定を盛り込んだ。福島県も、昨年度に初めて首都圏の量販店20店舗で、福島県生産物の取り扱い状況を覆面調査。来年度以降の結果と比較し、販促活動に生かすことにしている。


⦿日本経済新聞 2017年3月5日付掲載⦿




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