【大震災から6年・福島で生きる】(03) 放射線、数値で見せる

20170309 08
福島県東部の阿武隈高地に開けた飯舘村。農家の納屋で、田園の風景とは不釣り合いな装置が稼働する。『ガイガーミュラー計数管式放射線モニター』。東京電力福島第1原子力発電所事故の8ヵ月後から空間放射線量を測り続けている。モニターを設置したのは、農家の菅野宗夫さん(66)。「原発を造ったのは人間。同じ人間の知恵で地域を再生できる筈だ。実験場になってもいい」。放射線・生物学・医学…。菅野さんの元には各地から専門家が集まり、住民と協力しながら放射線に関する研究を進める。東京大学大学院の溝口勝教授(57)は、2011年6月から村に通う。「土壌物理学の研究者として、正面から扱った経験のない放射線に関心を持った」。自身が開発した器具で、土壌中の放射性セシウムの移動の有無を検証している。昨年末から東大農学部(東京都文京区)に村内100ヵ所の田圃で住民らが採取した土壌のサンプルを郵送、放射性セシウムの濃度を詳細に測る取り組みを始めた。

溝口教授は、「住民が加わることで研究と地域の再生が結び付く」と指摘する。福島県内の避難指示は、帰還困難区域を除き、来月までに解除される見通しだが、見えない放射線への漠とした不安は拭い切れない。菅野さんが強調する。「見えないから不安を生み、捉え方も人によって変わってしまう。データで可視化して判断材料にすれば、不安の領域を狭められる」。原発から流れ出た高濃度の汚染水で、沿岸の漁場も壊滅的なダメージを受けた。消費者の懸念は根強く、福島沖での漁業は今も試験操業に留まる。水面下の放射性物質はどう変化しているのか。県水産試験場は6年間、魚介類に含まれるセシウムの測定を続ける。これまでに調べた検体数は4万2369。事故直後は1㎏当たり数万Bq超という高濃度が検出されたが、一昨年4月以降の1万6347検体は全て基準値を下回っている。魚介類の出荷制限は12品目で残るものの、32品目で解除された。濃度の低下は、魚の世代交代が最大の要因だ。沿岸で採れるカレイ等の寿命は、概ね5年程度。体内のセシウムを年齢別に解析すると、事故後生まれの世代で濃度が顕著に下がっていた。当初、魚が取り込んだセシウムの半減期は40~50日と言われた。魚種によってはその通りに低下せず、「新たな海の汚染があるのではないか?」と疑念が生じたこともある。飼育試験で成長の遅い魚は、濃度低下も遅くなることを解明した。漁場環境部の根本芳春部長(48)は、「データの裏にある理屈がわかってきた」と指摘。「研究を通じ、早期の本格操業開始を後押ししたい」と話す。

■原発事故と健康、関係探る
東京電力福島第1原発事故を受け、福島県は2011年6月、県立医科大学に委託し、全県民約200万人を対象にした健康調査を始めた。事故直後の被曝線量を推定する他、事故当時に18歳以下だった県民の甲状腺癌の検査や、事故がどのようなストレスを与えているか等の調査にも取り組んでいる。甲状腺検査は2014年度から2巡目を実施し、昨年12月末までに145人が最終的に甲状腺癌と診断された。放射線との因果関係の有無について、県の検討委員会は「現時点で放射線が原因とは考え難い」との立場を取る。ただ、専門家の間で意見が分かれており、県は今後も長期的に検査を継続し、関係性を調べる。


⦿日本経済新聞 2017年3月7日付掲載⦿




スポンサーサイト

テーマ : 地震・天災・自然災害
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR