【震災6年・未完の事業】(05) 高台移転、高齢者に負担

20170309 04
岩手県大槌町の沢舘三枝子さん(75)は、買い物かごのカボチャ・豚肉・仏壇用の花等をリュックサックと手提げバッグに詰めると、重そうに持ち上げた。東日本大震災前は、沿岸の安渡地区で隣にスーパーマーケットがある家に住んでいた。今は、同じ沿岸のショッピングセンターで買い物をして、約1.5㎞離れた海抜6.5mの寺野臼沢地区の自宅に帰る。「こんな不便なことになるなんて」。同地区には、防災集団移転促進事業で移住する98戸分の宅地と災害公営住宅40戸が造られ、現在、約90世帯が暮らす。沢舘さんの夫・健介さん(81)は肺気腫を患い、酸素ボンべが手放せない。「夫の為にも早く仮設住宅を出たい」と考え、玄関前にスロープがある災害公営住宅に入居した。ただ、町営バスは1~2時間に1本。週2回、往復400円かけてショッピングセンターに通う。5㎏入りのコメやサラダ油等、重いものを運ぶと、高齢の身に堪えた。今年に入り、車を持つ近所の知人が週1回、一緒に買い物に連れて行ってくれるようになった。でも、気兼ねする。「小さくてもいいから、近くにスーパーがある地域になってほしい」。同じ悩みを抱える高齢者は多い。内陸部や高台は、車を持たない高齢者には不便だからだ。

大船渡市のNPO法人『さんりくWELLNESS』は、仮設住宅の高齢者をスーパーまで送迎する活動をしてきたが、集団移転先の集落や災害公営住宅でも活動を始めた。理事長の熊谷侑希さん(32)は、「仮設住宅を出た高齢者の需要も多い」と話す。読売新聞の纏めでは、岩手・宮城・福島3県の沿岸部では、計308地区で防災集団移転が行われている。小さな集落が移転で更に小規模化するケースも多く、移転世帯が10戸未満の地区が全体の約3割、98地区に上る。宮城県石巻市桃浦地区では、海岸近くの海抜約40m地点に宅地が造成され、5世帯が集団移転した。住民6人の内、5人が65歳以上。高齢者が過半数を占めて社会的共同生活の維持が困難になる、所謂“限界集落”だ。区長の甲谷強さん(88)は、「このままでは10年後に集落が崩壊してしまう」と危機感を募らせる。湾奥部にある桃浦地区は震災前、65世帯170人が暮らしていた。嘗て牡蠣養殖で栄えた集落も、後継者不足で高齢化が進んだ。津波で6人が亡くなり、住民は子供等を頼って次々と市街地に移住。地区に残ったのは、集団移転した5世帯を含む12世帯21人だ。集団移転を選んだ1人の今野さだ子さん(86)は、「住み慣れた海の近くなのは良いのだけれど…」と零す。両膝に痛みがあり、外出時は手押し車や杖が欠かせない。心臓の持病で、バスとタクシーを乗り継いで市内の病院に通う。自宅からバス停まで、急な坂を下って約1㎞歩く。薬を多めに処方してもらい、通院を2ヵ月に1回に減らした。「帰りは5~6回休みながら、何とか家に辿り着く。辛いが、自ら望んだ場所なので仕方ない」と自分に言い聞かせる。集団移転した住民の為に乗り合いタクシーを運行する自治体もあるが、全ての集落をカバーするのは難しい。神戸大学の室崎益輝名誉教授(防災計画)は、「集団移転は津波からの安全性を優先した計画なので、行政には住民の生活を守る責務がある。買い物や交通の不便さを解消しなければ、人口は更に流出してしまう」と警鐘を鳴らす。


⦿読売新聞 2017年3月6日付掲載⦿
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