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【ふるさと納税の今】(02) 寄付金バブル崩壊

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富士山東麓の静かな山間を流れる鮎沢川に、真新しい鋼鉄製の橋が架かる。静岡県小山町の『森村橋』(※右画像、撮影/高橋秀郎)。嘗ては紡績工場に通じていた明治期の産業遺産だ。国登録有形文化財だが傷みが激しく、町が「観光資源に」と復元に乗り出して2020年度に完成した。「コロナ禍とはいえ、町外から訪れる人は殆どいない。観光に生かせていない」。橋を見上げて、『オンブズマン小山町』の牧野恵一代表(72)が言う。人口2万人足らずの町は2014年、『日本創成会議』から消滅可能性都市とされた。対策を迫られる中、橋と関連施設の整備費11.4億円のうち、9.3億円をふるさと納税で賄った。牧野さんは指摘する。「小さな町に不相応な出費だった。大盤振る舞いの結果、財政危機に陥らないだろうか」。町は2015年度に制度に参入した。国は2017~2018年、競争過熱を見かね、返礼品を“寄付額の3割以下の地場産品”とするよう通知する。だが、町は2018年度、寄付額の4割分のAmazonギフト券を返礼品とし、全国2位の約252億円を集めた。町の一般会計当初予算の2倍の額だった。寄付を元手に、2019年度予算で目玉事業を揃えた。学校給食無料化、富士山が見える公園の整備、工業団地進出企業への補助金――。森村橋復元もその一つだ。だが、直後の2019年6月、国は通知に背いた小山町等全国4市町を制度から除外した。バブルは弾けた。制度には約1年後に復帰できたが、ギフト券は使えなくなり、寄付額は2019年度が7.9億円、2020年度は3.2億円と激減した。

2020年には、工業団地の造成で地中から大量の廃棄物が見つかったと発表。処理に11億円という想定外の支出も強いられた。一時約106億円あった基金は、今年度末には約42億円にまで減る見通し。進出企業への補助金等で今後も取り崩しが予定され、貯金は底を突きかねない。「間違った集め方が正常に戻っただけ。覚悟していた」。国に従わず混乱を招いた前町長を批判して町長選に勝ち、2019年5月に就任した池谷晴一町長は、後始末に追われた2年半を冷静に振り返る。ただ、ふるさと納税で始めた事業の行く末は心配だ。「喜ばれている給食無料化等は続けたいが、中止や縮小の議論が起きるかも」。公共施設の修繕等悩みの種は多い一方、森村橋は9月の町議会で「態々見に来る人が何人いるのか?」と指摘された。事業途中に就任した町長も「早急に作り過ぎた」と認める。町は今年度、チームを設けて財政の見直しに取り組んでいる。「一番苦しいのは、今後の5年間。何とか乗り越えないと」。同様に一度は制度を除外された他の3市町も、寄付額を大幅に減らしつつ、試行錯誤を続けている。2018年度の寄付額が全国最多の約498億円だった大阪府泉佐野市。2020年度は新たな挑戦を始めて22.5億円を集めた。事業者のプロジェクトを市のサイトで紹介。市がクラウドファンディングの仕組みを活用して寄付を募り、目標を達成すれば、市が受け取る額を事業者に補助金として出す仕組みだ。市内唯一の酒蔵で創業100年を迎えた『北庄司酒造店』。一部をカフェに改修しようと、年末までのクラウドファンディングに挑戦中だ。地酒や酒造り体験を返礼品に、目標額の7割を集めた。次期四代目蔵主の北庄司知之さん(40)は、「お酒に頼らない酒蔵にしたい。ふるさと納税の後押しはありがたい」。コロナ禍で『関西国際空港』の利用が低迷する中、市の担当者は「町の活性化に繋がるなら、市に直接お金が入らなくても価値ある取り組みだ」と広がりに期待を寄せる。佐賀県みやき町は、皮ごと食べられるバナナを特産品として開発。観光名所が豊富な和歌山県高野町は今年度、町内で使える旅行クーポンを返礼品に加えた。其々の再挑戦は、地域に根差して進められている。 (高橋秀郎)


キャプチャ  2021年12月19日付掲載
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