【男の子育て日記】(42) ○月×日

10月13日 一文の成長が著しい。この日は靴を買ってきて、家の中で履かせて歩く練習。バランスを取るのが難しいのか、ゾンビのような歩き方がまた可愛い。全く誰に似たんだ。

10月14日 妻が買ってきた『カワイ』のミニピアノで遊ぶ。出鱈目の鍵盤叩きに頬を緩める。これが知らないガキだったら逆さ磔だろう。将来は辻井伸行のような世界的ピアニストになるのかな。

10月15日 最近、引力の法則を発見したようで、ソファに座っている時等、手にあるものを下に落として興味深そうな顔で見ている。将来はニュートンのような偉大な物理学者になるのだろうか。誰に似た?

10月17日 初めての小児皮膚科に連れて行く。妻がインターネット上で見つけた病院なので、てっきり一緒に行ってくれるのかと思いきや、違っていたようで、俺は俺で真性の方向音痴なもんだから、到着する頃には予約時間を遥かにオーバー。途中、妻から怒りのメール。「ふさ何か悪いことした? チンチン切るわ、もう」。御慈悲を…。

10月18日 組み立て椅子に座らせて、妻が一文に離乳食を食べさせる。その様子はまるで母親のようだ。産んだだけだと思っていたが。「ヤリマン、母になる」「何か言った?」。一文が笑っている。兎に角、一文が可愛い。自分の中に、こんなにも何かに対して“可愛い”と思う感情があったなんて、この子が生まれるまで知らなかった。かずちゃん先生、教えてくれてありがとう。

10月19日 「昨夜は里芋とゴボウのそぼろご飯と、カレイとひじきの煮物を食べさせました」と、保育園の連絡ノートに記入。「どんな味付けをされているか教えて下さい」と返ってきた。「キユーピーのベビーフードです」とは書けず。

10月24~27日 妻、東京でテレビの仕事。快適。昔から言うじゃないですか。“妻は元気で留守がいい”。『クイズプレゼンバラエティーQさま!!』(テレビ朝日系)を見ていたら妻が出てきた。「問題です。『山椒魚は悲しんだ。彼は彼の棲家である岩屋から外に出てみようとしたのであるが――』。この本の著者は?」。妻が早押し。「山椒魚!」。妻の顔面アップに、“夫は作家・樋口毅宏”というプロフィールが被さる。目眩がしてテレビを消す。3日後の『白熱ライブ ビビット』(TBSテレビ系)。司会の国分太一さん、「三輪さん、東京にいる間はどなたが赤ちゃんを見ているんですか?」「夫です」「そうなんだー」。絶妙の受け答え。やっぱり天才。太一さん、樋口家では妻が産んで僕が育てています。

10月28日 そういえば、カワイのミニピアノで全然遊んでいないことに気付く。もう飽きたらしく、薄らと埃が積もっている。「かず、お前、ピアノはどうしたんだ? もう世界への道は諦めたのか?」。ケラケラと笑う。可愛いったらありゃしない。全く誰に似たんだ。


樋口毅宏(ひぐち・たけひろ) 作家。1971年、東京都生まれ。帝京大学文学部卒業後、『コアマガジン』に入社。『ニャン2倶楽部Z』『BUBKA』編集部を経て、『白夜書房』に移籍。『コリアムービー』『みうらじゅんマガジン』の編集長を務める。2009年に作家に転身。著書に『日本のセックス』(双葉文庫)・『ルック・バック・イン・アンガー』(祥伝社文庫)・『さよなら小沢健二』(扶桑社)等。


キャプチャ  2017年3月9日号掲載
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