東西の2大ドヤ街(西成・山谷)に暮らす男たち――クスリ・女・酒、“流れ者”が多く暮らす2つの街に潜入ルポ

日本の2大ドヤ街として知られる“西の釜ヶ崎(西成)”と“東の山谷”。ドヤ(簡易宿泊施設)が密集するこれらの地域には、昔から日雇い労働者たちの他に、生活保護受給者、更に罪を犯したりした逃亡者が多く住まうという。そんな2つの街では日々、何が起きているのだろうか。そこで今回、ドヤの管理人に頼み込み、数日間に亘って様々な人々にインタビューを試みた。 (取材・文・写真/フリージャーナリスト 花田歳彦)

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先ずは、宿の前で煙草を吸っていたAさん(推定60代)に話を聞いた。「西成のドヤに住み始めて20年以上は経つかな。ここに来た理由は、ここしか行く所が無いからや。仕事はしてへん。生活保護貰とる。ここに来て直ぐに、刃物で刺されたんや。そんで足が自由に動かなくなり、仕事もでけへん。だからここに住んどる。家族? そんなん忘れたわ。ずっと音信不通やからな。その日をどうやって暮らすかで精一杯。それよりもギャンブルやな」。続いて話を聞いたのは、既に酔っ払っていたBさん(推定70代)である。「生活保護が振り込まれたんや。そのカネで飲んどる。そのうち、日雇いの仕事が入るから平気やろ。そうや、生活保護を受けながら仕事をしとる。バレやしないわな。けど、今は生活保護も煩いから、そんな人間も少なくなってるんとちゃうか。この前も生活保護Gメンいうのに捕まって、区にカネ返せ言われたヤツがおったしな、気ぃ付けるわ」。と、ここで比較的年齢が若いと思われる男性がいたので、話を聞いた(Cさん・推定30代前半)。「これは顔も名前も出ないんやろな?(※勿論、「全て伏せる」と伝えた) わしはシャブの小売りをしとる。年が明けたら止めるわ。何故かって? 暮れから正月にかけては役所や警察の人間が少ないからな」。ここで気分を害したのか、Cさんはその場から去ってしまった。このように、話の途中にプイとどこかへ行ってしまうケースは、この街ではよくあることだ。その後も数人に声を掛けたが、話を聞かせてくれる人間は中々少ない。漸く話を聞けたのは、それから2時間ほど経った後、日雇いで仕事をするDさん(自称70歳)である。「仕事は月に10日くらい行って、後は寝とるな。それで7~8万もろて、ここのドヤ代払って、後はカスカスや。けど、他に行くとこなんぞあらへんからな」。一部を除き、日本中で経済不安が巻き起こる中、この街も例外ではない。Dさんに話を聞いていると、目の前にリヤカーを止めた人間がいた。Eさん(推定60代)がDさんの顔見知りとわかり、話を聞くことになった。

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「(※リヤカーには空き缶の山)そうや、これで3000円にはなる。今日はミナミ周辺まで。換金は週に3日くらい、毎日歩くのしんどいからな。けど、大阪市内やったら平気やで。家族? そんなん忘れたわ」。ここまで数人に話を聞いたが、皆、家族の事に触れると口を噤んでしまうのは何故だろうか…。続いては、ドヤの仲間と思しき3人組(F・G・Hさん、何れも40代)である。「(ワシらは)刑務所仲間や。皆、罪名が違うけどな。ワシは窃盗。こいつ(Gさん)は覚醒剤取締法違反で、こいつ(Hさん)が傷害や」(Fさん)、「偶然、ここで再会してな。初め、ワシがここで暮らし始めたら、噂を聞いてこいつらが集まってきたんや。仕事はしてない。ワシら前科者で住所不定やで。どこも雇ってくれるとこあらへんのや。生活保護や。誰も他人のことを気にしない。喧嘩なんかも、止めたら反対にとばっちりが来るような街や。そこが気に入っとる。何でも見て見ぬ振りが一番や」(Gさん)。Hさんは、最後まで一言も口を開かなかった。最後に、今回の西成での聞き込みで、最も印象に残った人間の話を紹介しよう。Iさん(50代)は、周囲一帯の元締めをしているという。「そこらにホームレスおるやろ? そいつらから毎日、ショバ代を1人100円貰ってるんや。カツアゲちゃう、守り代や。ヤツらに何かあっても警察なんか来んから、ワシが守ってやるんや。それで月に20万くらいになるんや。ワシは、こう見えて昔は一家を構えてたんや。俗に言う組長やな。だけど、上部組織が無くなって、そのままカタギになり、ここに流れ着いたんや。ヤクザと揉める訳なんかあらへん。皆、ワシより貫目が下の人間ばかりやからな」。実際に他の人間から話を聞いても、このIさんがホームレスからショバ代を貰っているのは事実のようだ。その後、Iさんに聞き忘れたことがあり、教えてもらった携帯電話に電話すると、「お客様の都合により…」とアナウンスが流れた。聞き取りを続けていると、この街には今も様々な“ワケあり”の人間が多く居住していることが明らかになってくる。どんな人間の過去も詮索されない街。それ故、過去を消したい人間にはうってつけの街――。それが西成の釜ヶ崎だという印象を持った。

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東日本一の労働者街として知られる山谷。今でこそ外国人バックパッカーが安宿を求めて多くうろついているが、ドヤが密集するこの地域は、昔ながらに日雇い労働者たちが多い。一般的に“山谷”と言われているが、東京都の地図上にそのような表記の地域は存在しない。現在の地名で言うならば、台東区清川・日本堤・橋場・荒川区南千住に跨る地域の俗称と考えていいだろう。2016年10月某日、筆者はこの街の観察を行う為、山谷の入り口であるJR南千住駅に降り立ってみた。すると、丁度夜勤明けと思われる労働者の集団に遭遇した。彼らが取った行動、それは“駅を降りたら一服する”だった。これは、釜ヶ崎も見た筆者が知る限り、東も西もお馴染みの光景と言っていい。今は都内の駅前は殆どが喫煙禁止区域であり、この駅前も当然、その区域に該当するのであろう。しかし、彼らにそのような常識は全く通用しない。「この集団をついて回れば今の山谷がわかるであろう」と思い、暫く彼らを尾行してみることにした。南千住の駅に架かる歩道橋を渡り、『東京スカイツリー』方向に少し進むと、アニメ『あしたのジョー』にも出てくることで知られる有名な交差点・泪橋に辿り着く。

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この付近には、江戸時代の処刑場である小塚原があり、刑場に行くのにここにあった橋を渡った為、この名が付けられたと言われている。尾行した集団の殆どは、その泪橋交差点を渡り、路地を右折し、其々のドヤへと散っていった。そのドヤの先へ行くと、これは西成にもある類似施設である『労働者福祉センター』という溜まり場に行き当たる。ここは労働者の生活を支援したり、仕事を斡旋する場所だ。日曜日の為、閉館していた同センターだったが、奥から人の声がする。覗いてみると、行き場の無い労働者数人による宴会が行われていた。これも、こういった場所ではよくある光景なのかもしれない。しかし、相違点も幾つかあった。西成では、休日ともなると娯楽を求める労働者の姿を多く見掛け、同時に活気もあるのだが、山谷にはそんな活気が一切無い。溜まった洗濯物を洗う為にコインランドリーがせわしなく動いている以外に、人の姿はほぼ皆無と言っていいだろう。人の姿を求めて、小さな泥棒市が立っている筈の公園にも足を運んでみたが、数個のブルーシートが立ち並ぶだけで、人の姿は見掛けなかった。この街の人たちは、どこに消えてしまったのか? ドヤに逼塞しているのか、ギャンブルでもしに場外売り場にでも行ったのか――。今も昔も、こういった労働者街には、この種の謎が常に付き纏うのだ。


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