【大震災から6年・福島で生きる】(04) 危ういハコモノ頼み

20170310 07
福島県双葉町は、来月以降も全町避難が続く。先月中旬、いわき市で業務する町役場に住民が集まり、復興産業拠点の建設計画に関する説明会が開かれた。商店や飲食店が入る産業交流センターや、廃炉に関わる企業が利用できる研究施設等を整備。一時帰宅者向けの宿泊施設も作る計画だ。土地の造成だけで数十億円の費用がかかる見通しで、国の福島再生加速化交付金を充当する。「廃炉も終わらないのに、こんなに多くの人が戻るとは思えない。計画は楽観的過ぎる」。避難先の埼玉県から参加した女性(70)は、10年後の人口を2000~3000人と想定した計画に首を捻った。維持費を誰が負担するかが定まらないことも気に掛かる。女性は、「同意できるのは住民の為の宿泊施設くらい。現実的な話とは思えなかった」。2時間を見込んだ説明会は、40分で終了した。双葉町は2009年、財政破綻の恐れがあるとして、早期健全化団体の指定を受けた。核燃料税等、原発立地自治体としての歳入がありながら、大規模な公共工事で財政悪化を招いた。

震災当日、7147人いた人口の内、約14%が住民票を他の自治体に移動し、今年度の復興庁の調査には、62.3%の住民が「戻らないと決めている」と回答。人口流出による税収減が、帰還後の町財政を待ち受ける。「住民を繋ぎ止める為に、地域の将来像を示す必要がある。しかし、国の支援が無ければ財源は賄えない」。町の幹部が、産業拠点計画に隠れた行政のジレンマを明かす。復興事業が進まず、現在は震災前の13倍にあたる約546億円の基金がある。だが、財政担当者は「帰還後を見据えれば、自由に使えるのは極一部だ」と話した。川内村でコミュニティー支援を研究する一橋大学大学院生の藤原遥さん(27)は、「原発に代わる産業を作ろうとする意識が、復興計画をハード整備に偏らせている」と指摘する。2012年1月に帰村宣言し、最も早く帰還が始まった川内村は、約8億9000万円で室内プールを建設した。富岡町は、複合商業施設に30億円の事業費を投じた。来年4月には総事業費約24億円をかけ、双葉郡地域の緊急医療を担う『ふたば医療センター』(仮称)が新設される。手厚い交付金が支給される国の復興・創生期間は2020年度まで。避難自治体を中心にハコモノ建設が過熱する。乱立する計画は復興に繋がるのか。住民の雇用を目的にした施設にも拘わらず、従業員が集まらない事態も起きているという。川内村の遠藤雄幸村長は、「同じような施設ができて、どこかがスクラップになる場面もあるかもしれない」。前出の藤原さんは、地域の中での研究を通じて、「“住民の結び付きをどう再生させるか”という視点が、ハード整備より重要ではないか」と感じている。

■「地域の活力、生かす道を」  福島大学・清水修二特任教授(地方財政論)
福島県の市町村は元々、財政基盤が弱い自治体が多い。国や県の補助金・交付金への依存度が高くなり、成果が見え易いハード事業に偏りがちな側面がある。また、補助金等の使途には制限があり、活用する場合の手続きも煩雑だ。外からの力をあてにするだけでは、復興は覚束無い。自治体と住民が協力し、地域内の活力を生かす道を探る必要がある。各種組合等の住民組織を再生させ、地域の核になる人材が活躍できる事業に、より多くの予算を割くべきだ。


⦿日本経済新聞 2017年3月8日付掲載⦿




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