【震災6年・未完の事業】(08) 福島観光、風評との闘い

20170310 14
会津の名峰・磐梯山を眼前に望む福島県北塩原村の『裏磐梯ライジングサンホテル』(旧名は『ホテル白雲荘』)。戦後暫くして開業し、白虎隊に代表される会津若松市の歴史に触れたり、冬場はスキーをしたりする旅行客を、年間2万4000人受け入れてきた。その内の6~7割は、修学旅行やスキー教室等、宿泊を伴う教育旅行客だった。だが震災後、福島第1原子力発電所の事故もあり、2011年4月以降に宿泊予定だった県外の学生約1万3000人分がキャンセルとなった。当時の運営会社は「事業は継続困難」と判断して、震災の2ヵ月半後には廃業。支配人以下の従業員11人が全員解雇された。廃業時に支配人だった山口公一さん(65)は、「福島という県名だけで危険視された。突然の通告でなす術が無かった」と振り返る。当時は福島県大熊町の避難者約60人を受け入れていたが、従業員の田中みゆきさん(52)は「寮を出て行かねばならなくなり、それまで支援する立場だった私たち自身が“被災者”になった」と話す。ホテルは別の企業が引き継いで同年末に再開したが、現在も年間宿泊客数は震災前の7割程度に留まる。

福島県は現在、教育旅行の誘致に力を入れている。2015年に福島県を訪れた観光客は約5031万人と、2010年比約88%にまで回復した一方で、同年度に県外から教育旅行で来た学生は約27万7800人(2936校)と、2010年度比約55%に留まるからだ。同県は1000を超える学校や旅行業者を巡る“誘致キャラバン”を実施しており、同年度からは震災後に初めて教育旅行で訪れた学校に、バス1台当たり上限5万円の助成を開始。2度目以降も一定の条件の下、バス1台当たり3万円を助成している。それでも、関東地方のある中学校の校長は、「保護者から『放射能は怖い』と言われれば、行き先を変えざるを得ない」と打ち明ける。「高さ10m近い津波で、集落が全滅したんです」。福島県いわき市の土産物店『山六観光』では先月1日、代表の鈴木一好さん(65)が、修学旅行に訪れた熊本学園大学付属高校(熊本市)の1年生85人に熱弁を振るった。美空ひばりさんのヒット曲『みだれ髪』の舞台となった塩屋埼灯台は、店とは目と鼻の先。嘗ては年間約9万人が訪れていたこの地も、観光客は半分となった。家族連れや団体客の笑い声が響いていた店舗2階の食堂は閉鎖された。今は、押し寄せた津波が岸壁にぶつかる瞬間や、瓦礫に塗れた市街地の様子等の写真約70枚が、木製のボード一杯に貼られている。津波で親族20人を失った。悲しんでいるばかりではなく、「この体験を後世に伝えよう」と2012年4月から語り部を始め、その相手は優に3万人を超えた。「観光業の復活なくして、福島の復興はない。『福島は安全』『被災地を助けたい』と感じた子供が大人になれば、風評被害は自然に消える」と信じている。


⦿読売新聞 2017年3月9日付掲載⦿
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