【崩壊する物流業界】(02) 再配達を減らせ! 『ヤマト運輸』必死の効率化

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「ここの家はいつもいらっしゃいますよ」――。『ヤマト運輸』のパートタイマーで配達を担うフィールドキャスト歴4年の女性は、笑顔でインターホンを押した。インターネット通販の利用者は日中、自宅にいない人が多いと言われる。確実に受け取ってもらえる届け先はありがたい存在だ。この日の不在率は19%。「五十日(ゴトウビ)なので、いつもよりも不在は多いですね」。ヤマトにとって、不在対策は今や死活問題になりつつある。「お客さんの手元にきちんと届くまで何度でも届けるのがヤマトの価値」。同社の幹部は嘗て、そう言って憚らなかった。だが、インターネット通販の拡大によって、宅配物はヤマトの想像を超えるペースで増加している。人手不足によるセールスドライバーを始めとした配達員の採用難も加わり、サービスを維持するハードルは日に日に高くなるばかり。業績にも悪影響を及ぼしている(※前回参照)。再配達を減らす為にヤマトが力を入れているのが、同社の会員組織『クロネコメンバーズ』を通じたサービスの利用者を増やすことだ。一旦登録すれば、メールで配達予定日時が通知されたり、インターネット上で受け取り日時を変更できたりする。会員数は1500万を超えており、会員の利用率が上がるだけでも、2割弱というヤマトの再配達率の低下に繋がる可能性が高い。その為に、様々なサービスとの連携を進める。昨年3月には、『Amazon.com』・『楽天』・『ヤフー』のIDでヤマトのサイトにログインできるようになった。同6月には無料通話・メールアプリ『LINE』との連携を開始。“いつ届く?”・“日時変更”等、チャット感覚で操作でき、様々な申し込みができる。「メールに比べて即時にチェック頂けている」(ヤマト運輸営業推進部の荒川菜津美係長)と、手応えを感じているようだ。シンボルであるクロネコのスタンプを配付したことも手伝って、クロネコのLINEアカウントの“友だち”の数は670万を超えた。

会員サービスの強化も図る。昨年8月に導入した“Myカレンダー”は、受け取れる曜日や時間帯を事前に登録しておくサービスだ。インターネット通販での注文時に時間指定を忘れたり、日時指定がされていない宅配物が届いたりしても、登録した曜日や時間帯に届けるように自動で変更してくれる。メールやLINEで事前に配達予定の連絡も入る為、急に予定が変わった場合は都合のいい日時を指定し直せばいい。不在対策のもう1つの柱は、受け取り方法の選択肢を増やすことだ。特に期待をかけるのが、非対面で24時間受け取れる宅配ロッカーだ。昨年7月、フランス、アメリカ、オーストラリアで宅配ロッカーを展開するフランスの『ネオポスト』と合弁で、『パックシティジャパン』を設立した。49%出資する同社を通じ、宅配ロッカー『PUDO(Pick Up&Drop Off Station)』の設置を、東京や大阪を中心に進めている。一番の特徴は、『佐川急便』や『日本郵便』等、他社の荷物も受け取れる“オープン型”という点だ。「宅配各社が其々独自のロッカーを作ると、結果的に普及が遅れてしまう」(パックシティジャパンの阿部珠樹副社長)。PUDOの設置場所はヤマトのデータと照合して、「不在率が高く、配達効率が落ちているエリアを選んでいる」(同)。『東京メトロ』やJR線の駅、スーパーマーケット等に182台を設置(先月17日時点)した。PUDOの利用状況を見ると、21~0時の時間帯が44%を占める。ヤマトのドライバーが配達できる時間は8時から21時まで。21時以降にしか受け取れず、不在配達になりがちな層がよく利用しているということだ。一部エリアでは夜間の配達個数が減る等、セールスドライバーの負担軽減にも寄与し始めたという。最近は賃貸マンション等への設置が増えている他、「マンション内の宅配ボックスが不足しているので、別途、PUDOを近くに設置してほしい」との要望も出始めている。ただ、ヤマト以外では、佐川急便や中国の宅配会社『順豊エクスプレス』が一部地域で利用しているだけ。ヤマト資本の会社であるパックシティジャパンにロッカーの使用料を支払わなければならない為、二の足を踏んでいるようだ。それでも「各社にメリットを伝えて利用を促したい」と、阿部副社長は意気込む。2022年度までに5000ヵ所という壮大な設置目標を立てている一方、政府も再配達解消へ宅配ロッカーの支援に前向きだ。来年度から5年間に亘って、PUDOのようなオープン型の宅配ボックス設置について、費用の半分を補助する為の予算案を作成した。国のバックアップを受けて、設置場所が更に増えるのは間違いない。

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利用者に行動の変更を促すだけでなく、ヤマト自身も配達効率を改善する為の抜本的な見直しを図る。その中核が、『NEKOシステム』と呼ばれる基幹システムの刷新だ。これまで7度改良が重ねられてきた同システムを、今年、7年ぶりにリニューアルする。8代目となる新システムのポイントは、集配関連の機能拡充だ。配達ルートの選定はドライバーの経験に頼るところが大きかったが、新型はデジタル化された配送情報を基に、端末が最適な配送ルートを示してくれる。新人のセールスドライバーにとっては強い味方となり、ベテランにとってもルートを再検証するきっかけになる。『ヤマトホールディングス』の山内雅喜社長は、「集配効率が高まる」と期待する。ライバルの宅配会社と協力した効率化の取り組みも始まっている。藤沢市にあるヤマトの物流拠点『ネクストデリバリースクエア』。中を覗くと、ヤマトの荷物の他に、“佐川急便”・“JP(日本郵便)”と書かれた台車が置かれている。ここは、東京ドーム4個分ほどの工場跡地に『パナソニック』がスマートシティ事業として手掛けた『Fujisawaサスティナブルスマートタウン(SST)』の一角だ。ここに370世帯が暮らしており、戸建て住戸の他、福祉施設・教育施設・商業施設が入居している。この中で昨年11月から、『西濃運輸』・『第一貨物』・『トナミ運輸』等計8社の荷物の一括配達を行っているのがヤマトだ。SST内の商業施設『湘南T-SITE』への荷物については、佐川急便と日本郵便のものも運ぶ。ヤマトが配達を一手に引き受けることで、人手不足の解消を狙った。一括配送の取り組みは、多摩ニュータウンでも試行中だ。次世代の宅配の在り方としてライバル同士が手を携え始めたことは、大きな一歩だ。再配達削減へ考えられる方法は他にもある。「1回で受け取った人には料金を割り引いたり、ポイントを付けたりという方法も考えられる。宅配会社は消極的だが…」(国土交通省幹部)。あの手この手を講じるヤマトだが、裏を返せば抜本策が見つかっていないということだ。荷物は今も増え続けており、効率化によるコスト削減のみで苦境を脱するのは難しいのかもしれない。 (取材・文/本誌 鈴木良英)


キャプチャ  2017年3月4日号掲載
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