【経済の現場2017・韓国農業】(上) FTA、動じぬ韓牛

日米首脳会談で新設が決まった『日米経済対話』では、2国間貿易の枠組みがテーマになる。日本の農業界は、“大国”アメリカと再び向き合うことになり、警戒感を強める。日本にとって参考になりそうなのは、既にアメリカと自由貿易協定(FTA)を結んでいる韓国の事例だ。米韓FTAの荒波に曝された韓国農業は、どう変わったのか。現状と課題をリポートする。

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ソウル市内にある大型スーパーマーケットの精肉売り場。“ハヌ”と呼ばれる韓国産牛肉(韓牛)と共に、アメリカ産やオーストラリア産の牛肉が並ぶ。韓牛が100g当たり5000~1万ウォン(約500~1000円)程度なのに対し、アメリカ産は凡そ半額だ。市内に住む主婦のリン・チョンミンさん(63)は、「新年等の特別な日は韓牛だけど、普段は安いアメリカ産で十分」と話す。2012年3月の米韓FTA発効後、値段が安いアメリカ産農産物の輸入が伸びている。韓国貿易統計によると、昨年のアメリカからの農産物の輸入量は、発効前の2011年と比べ、牛肉は35%、葡萄は25%、オレンジ等の柑橘類は14%増えた。それでも当初、懸念された国産品の淘汰や価格暴落等は、それほど問題になっていない。晋州市に住む主婦のキム・シンニョさん(56)は、「アメリカ産は安いけど、国産のほうが安心だから」と話す。国産志向は根強く、スーパーの売り場に並ぶ品の内、概ね半分以上は価格の高い韓牛だ。寧ろ、国産と輸入品を含めた牛肉市場全体が拡大している。国内市場が小さい韓国の経済成長には、自由貿易の推進は欠かせない。農業へのある程度の打撃を受けても、自由貿易協定作りを進めて、“開国”する道を選んできた。

国土が狭く、中山間地が多い韓国は、日本と同じように農産物に高い関税をかける等して、農業を保護してきた。政府系研究機関の『韓国農村経済研究院』は、米韓FTAの影響で、農業分野では畜産と果樹を中心に、15年間で12兆ウォン(約1兆2000億円)を超える国内生産額の減少を見込む。韓国政府が取った農業対策は、“選択と集中”だ。チリとのFTA発効に合わせて2004年に始まった“廃業支援”は、廃業後の3年間は、それまで得ていた収入を補償する制度だ。「輸入の増加により、国産価格に一定の影響が出た」と判断した場合に発動する。これまでに畜産や果樹が支援対象になり、2013~2014年には繁殖牛を育てる畜産農家の2割に当たる約1万5000戸が廃業を申し込んだ。零細農家が“退場”することで大規模化が進んだ。日本がコメ農家を中心に様々な補助金を交付し、生産性の低い小規模兼業農家を守ってきたのとは対照的とも言える。ただ、大規模化の限界も見え始めている。ソウル近郊の利川市で葡萄農園を営むユン・チェクンさん(58)は、「葡萄の販売価格が10年前の半分になった」と話す。FTA発効で、安価なチリ産葡萄が韓国に広く流通するようになったからだ。ユンさんは農園の規模を拡大し、生産量を増やしてきたが、販売価格の下落で収入はほぼ横這い。「(全体の)物価は上がっているので、昔より生活は苦しい」と嘆く。『韓国農協中央会』未来戦略部経営研究チーム長のユ・チュンコン氏は、「大規模化は一定の効果があったが、更に商品の付加価値を高める等の取り組みが重要だ」と指摘する。


⦿読売新聞 2017年2月28日付掲載⦿
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