【経済の現場2017・韓国農業】(下) 野菜転向で競争力

20170314 06
1棟が1haを超えるビニールハウスとガラス温室が並ぶ。韓国南部の晋州市にある農場は、まるで工業団地のようだ。生産しているのは、鮮やかな色合いのパプリカだ。この内の約3割は、日本向けに輸出している。地元の『大谷農協』輸出課のパク・ジュンブム課長(51)は、「嘗ては、親が子に『農業を継ぐな』と言っていたが、最近は若者のUターンでどんどんハウスが増えている」と話す。輸出型に転換して、農家の所得が上がっていることが大きい。嘗て、主に作っていた胡瓜や南瓜等は、販路を確保するのが難しくなっていた。韓国政府が自由貿易協定(FTA)に力を入れる中、大谷農協は輸出で稼ぐことができる作物への転換を決意した。海外市場の調査をすると、日本がパプリカをオランダから輸入していることがわかった。晋州市の気候はパプリカの栽培に適している上、オランダより圧倒的に日本に近い。「日本で初めて見た」(同)という野菜だったが、手探りで生産を始め、2006年から輸出を始めた。『国連食糧農業機関(FAO)』等によると、韓国の農業分野の国内総生産(GDP)は世界23位と、日本(同10位)より低いが、農産品の輸出額でみると世界47位と、60位の日本を大きく引き離す。『韓国農水産食品流通公社』によると、パプリカの昨年の輸出量は韓国全体で約3万トン。10年前の2006年の2倍に増えた。

韓国中部の利川市。日本で言えば新潟県のコメどころのような風景は、近年、大きく変化している。水田の中にビニールハウスが点在するようになったのだ。市内で農家を営むリ・キュトクさん(56)はコメの専業農家だったが、4年前から韓国では焼き肉に欠かせないサンチュ等、葉物野菜への転換を始めた。これまでに、自己資金で3haの農地に37棟のハウスを建て、今ではコメの生産からは撤退した。野菜はコメに比べて、生産に手間がかかる。それでも手取り収入は、コメを生産していた時の年2400万ウォン(約240万円)から年1億ウォン(約1000万円)と約4倍に。鮮度が求められるサンチュは輸入品とも競合せず、FTAによる影響もあまり受けない。韓国の農業白書によると、農地全体に占める野菜の耕作面積は、2010年の11%から2015年には16%に拡大した。『利川南部農協』のゼン・サンジン常務(56)は、「生産をコメだけに依存していないので、農家の経営リスクも少なくなっている」と話す。国内市場が縮み、コメが余って米価が下がる――。日韓両国の農家が直面する課題は共通する。それでも韓国は、各国とのFTA発効をきっかけに、海外市場をより意識し、コメ以外にも活路を見い出そうとしてきた。ただ、アメリカのドナルド・トランプ政権は、今月1日に議会に提出した通商政策の報告書で、米韓FTAの見直しに言及しており、先行きが不透明な面もある。韓国の農政に詳しい大東文化大学経済学部の高安雄一教授は、「韓国では、市場開放に対する危機感が、農業の競争力強化に結び付いてきた。日本もブランド化や品質向上で、市場開放にも対応できる筈だ」と指摘する。

               ◇

経済部 蔵本早織が担当しました。


⦿読売新聞 2017年3月3日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 経済・社会
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR