【トランプのアメリカ・身構える世界】(05) “安倍1強”生まれた死角

20170314 09
“ブッシュホン”をご記憶だろうか? 自民党内の基盤が弱かった海部俊樹首相が、当時のアメリカの大統領との距離の近さを売り物にして政権運営していた様を、2人の頻繁な電話に引っかけて本紙が生み出した造語だ。1990年の『新語・流行語大賞』で銀賞に輝いた。“対米追従”と皮肉られることもあるが、日米の首脳が親密であるほど安心感を覚える日本人が多いのは間違いない。1993年に来日したビル・クリントン大統領は、レセプションに改革派を標榜していた野党党首を招いた。直後の衆院選で自民党は大敗し、結党38年目にして下野を余儀なくされた。その選挙で初当選したのが、現在の安倍晋三首相だ。昨年11月、就任前のドナルド・トランプ大統領に会いに急遽、ニューヨークに飛んだ。「実があるなら今月今宵 一夜明ければ誰もくる」と詠んだ長州の先人・高杉晋作が念頭にあったろうか。残念ながら、首相のそうした“誠意”は、“型破り”大統領にあまり通じていないようだ。首相周辺は、外務省に「主要国で最も早い首脳会談を設定せよ」と螺子を巻いたが、狙っていた今月27日の会談は実現しなかった。就任後の電話も、イスラエル等に先を越された。

「『トランプ大統領が信頼できる指導者だ』との考えは変わらない」。首相は国会で力説した。トランプ大統領が『環太平洋経済連携協定(TPP)』離脱の大統領令に署名したのは、その半日後。政府は、「TPPによって国内総生産(GDP)が3.2兆円押し上げられる」としてきた。その消滅は、アベノミクスには打撃である。昨年の参院選で与党が振るわなかった東北地方選出のある自民党議員は、「日米自由貿易協定(FTA)交渉をすることになれば、選挙への影響はTPPの比ではない」と心配する。損得勘定が見え難い多国間交渉と異なり、「農業分野で押し込まれる」とみるからだ。然りとて、自由貿易の旗手を自任してきた首相が、「2国間交渉はしない」とは言えまい。日本は、安全保障をアメリカ軍に依存している負い目もある。次期駐日大使に就くウィリアム・ハガーティー氏は元々、ライバル候補を支持していた。交渉能力の高さを評価されてトランプ陣営に加わったのは昨夏だ。駐日大使には色々なタイプがあるが、“テクノクラート型”の場合、成果を上げようとしゃかりきになりがちだ。“ミスターガイアツ”と呼ばれたマイケル・アマコスト氏がそうだった。市場重視型個別協議(MOSS)・構造協議(SII)・枠組み協議…。1980~1990年代、日米は激しい貿易摩擦を経験した。あの重苦しい日々が戻ってくるのだろうか。今、与党にも野党にも、首相を脅かす政治勢力は見当たらない。そこに、外から齎された想定外の死角。安倍政権の進む先に激動が待っている。 (編集委員 大石格) =おわり


⦿日本経済新聞 2017年1月25日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 国際ニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR