【変貌する報道・アメリカから】(03) 組織の枠超え共同取材

20170315 04
優れたスクープに贈られるピューリッツァー賞は、アメリカの報道界で最高の栄誉とされる。創設から丁度100回目となった昨年の受賞者は、アメリカにおけるジャーナリズムの新たな潮流を印象付けた。性犯罪被害者に対する警察の不当な扱いを暴き、解説報道部門で受賞したのは、新聞でもテレビでもない“非営利報道団体”の2人の記者だった。しかも、共にニューヨークに拠点を置く『プロパブリカ』『マーシャルプロジェクト』という別々の団体に属しながら、組織の枠を超えた“共同取材”も実現させていた。「我々は、競争する代わりに協働したのだ」。受賞後、報道関係者が集まるイベントに出席した2人の記者は胸を張った。調査報道を専門とする非営利団体、ライバル報道機関同士の連携…。新聞が苦境に喘ぐアメリカで、これまでに無かった報道形態が広がっている。中でも、プロパブリカは成功例の筆頭格とされる。「これでジャーナリズムを守ってほしい」。調査報道の衰退に危機感を抱いた資産家夫婦が、年間1000万ドル(※現在の為替レートで約11億円)もの巨額寄付を申し出たことが、2008年のプロパブリカ設立のきっかけだ。プロパブリカは、この資金で大手メディアや地方紙から腕利きの記者を引き抜き、調査報道に特化した活動を始めた。

新聞等の媒体を持たない代わりに、記事を地方紙等に提供し、同じテーマを追うメディアとも協力・連携する。“パートナー”と呼ぶ提携メディアは約130を超え、記事が『ニューヨークタイムズ』等の1面を飾ることも珍しくない。現在、プロパブリカの編集スタッフは約50人。ピューリッツァー賞受賞は、単独受賞の過去2回を含め、既に3回を数える。「お互いの強みを合わせれば、社会に与える影響は何倍にもなる」。カリフォルニア州サンフランシスコ近郊にある非営利団体『調査報道センター』代表のロバート・ローゼンタール氏(68)も、報道機関の連携の重要性を力説する。同センターは、連携先を新聞だけではなく、テレビ、ラジオ、インターネットメディア等まで広げる。2011年には、1万超の公立学校が耐震基準を満たしていない事実を、1年半かけて明らかにし、20以上のメディアに情報提供。各メディアが更に掘り下げて取材し、各学校の実態を詳報した。嘗て地方紙の編集トップを務めたローゼンタール氏によると、調査報道の記事を1本発表するのに、最低でも3ヵ月の取材期間と、2万ドル(約220万円)以上の経費を要するという。同センターは、年間約1000万ドルの運営資金を、資産家からの寄付に加え、複数の慈善財団からの助成金で賄う。アメリカには、ジャーナリズム支援に積極的な財団が数多く存在することが、資金調達を可能にしている。経営難の地方紙が体制を縮小する中、調査報道の担い手として成長しつつある非営利の報道機関。ローゼンタール氏は言う。「我々が受ける評価は、いくら稼いだかではない。どれだけ社会的な価値を齎したかだ」。


⦿読売新聞 2017年2月25日付掲載⦿
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