【獅子の計略・習1強時代へ】(03) 保護主義批判の自縛

20170315 02
習近平国家主席が、アメリカから北京への着任を待ち侘びている人物がいる。ドナルド・トランプ大統領が駐中国大使への起用を決めたアイオワ州知事のテリー・ブランスタッド氏(70)だ。1985年、北京に隣接する河北省の正定県に勤務していた習主席は、農業視察団を率いて同州を訪れ、知事1期目のブランスタッド氏の案内で、農地や工場を回った。同じ省で勤務していた今の習主席の“懐刀”である中国共産党中央弁公庁の栗戦書主任も一緒だった。以来、交流は30年以上に及ぶ。「彼は中国人の全てを知っている」とトランプ大統領が評価するブランスタッド氏。限定された情報しか公開されない習主席や側近の肉声を知る、アメリカでは極めて少ない「老朋友(良き友)」(中国外務省報道官)だ。ブランスタッド氏は、全米トップのトウモロコシ産地として知られるアイオワから中国向け穀物等の輸出を推進し、アメリカにとって中国がカナダやメキシコに次ぐ第3の輸出市場であることを熟知している。中国が「アメリカの雇用を奪っている」等と敵視するトランプ大統領との仲を取り持つ「通訳」(同)に適任とみられている。トランプ大統領が習主席に近い人物に白羽の矢を立てたとはいえ、その対中政策は「中国経済にとって重大なリスク」(北京大学の黄益平教授)だ。「就任初日に中国を“為替操作国”に指定する」との公約は実現しなかったが、対中関税の引き上げ等、中国の貿易環境を圧迫する要求がいつ降りかかるか予測できない。

実際、スティーブン・ムニューチン財務長官は今月17日、汪洋副首相や、習主席の経済ブレーンである中央財経指導小組弁公室の劉鶴主任らに立て続けに電話し、「より均衡の取れた2国の経済関係が重要だ」として、対中貿易赤字の削減を暗に求めた。トランプ大統領が公言しているように、中国製品に対する関税が45%に引き上げられれば、「中国の対米輸出額は半減する」(エコノミスト)との試算もある。人民元の下落とインフレ、自動車販売の失速、6年ぶりに3ドルを割った外貨準備の激減――。中国経済に指摘されるリスクは深刻ながらも、中国当局の介入等で短期的には対処が可能だ。だが、“トランプリスク”だけは習政権にも打つ手は無い。昨年末、党と政府の最高齢部らが今年の経済運営方針を議論した『中央経済工作会議』では、“穏中求進(安定の中で改革を進める)”がテーマとなった。習主席はこれまで、国内外の信用を得る為の経済構造改革の推進か、景気への配慮かというジレンマを抱えてきた。だが、習主席の2期目政権が発足する今年は、社会不安に繋がりかねない景気悪化は容認できず、“安定”を優先せざるを得ない。「貿易戦争は共倒れを招くだけ」。習主席は先月の『世界経済フォーラム(ダボス会議)』で、保護主義を強めるトランプ大統領を牽制した。大事な年に影を落とすリスクへの苛立ちも窺える。だが、中国の不明瞭な国内法や規則は、逆に「保護主義」(エコノミスト)との批判を受ける。中国で事業を展開するアメリカ企業で作る『中国米国商会』は、習主席のダボス演説を真っ向から否定するに等しい「中国では国内製品の競争力を高めるための保護主義が起こっている」との報告書を発表した。中国政府は先月、外国企業に中国での株式上場を認める等の規制緩和策を発表したが、日系企業幹部は「2015年の株式バブル崩壊以降、閑散とした中国株式市場に上場するメリットは無い」と冷淡な受け止めだ。習主席は、トランプ政権を牽制すればするほど、自らも“改革”を迫られることになる。先月末、視察先の河北省で「潰すべきは潰し尽くせ」と、借金塗れで利益の出ない“ゾンビ企業”の一掃等、改革の継続を訴えた。だが、実行すれば大規模な失業や景気後退は避けられない。“改革”か“安定”か――。習主席自身が処方箋を探しあぐねている。


⦿読売新聞 2017年2月23日付掲載⦿
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