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【ウィズコロナ・どうなる経済】(下) 崩れた需給、メーカー試練

20220520 16
「需要はあるのに、売る車がない。どれだけ部品が不足しているのか…」。静岡県内の自動車販売店店長は溜め息を吐いた。店では『スズキ』や『ダイハツ工業』の軽自動車を販売。事故車両の修理も行ない、地域住民の生活を支える。昨年はコロナ禍で「電車に乗りたくない」と新規顧客が増えたが、今年春以降は状況が一変した。世界的な半導体不足に、東南アジアでの感染の再拡大による部品調達の停滞も追い打ちをかけ、自動車メーカーで減産の動きが拡大したからだ。経済産業省が昨日発表した7~9月の鉱工業生産指数は前期比3.7%減となり、感染初期に工場の操業停止が相次いだ昨年4~6月期以来、5四半期ぶりのマイナスだった。自動車の減産で7~9月期の実質GDPを前期比年率2%押し下げるとの試算もある。各メーカーの納車遅れは、販売店にも深刻な影響を与えた。店長は、「6月に注文した軽トラックが未だ届かない。車検切れを控えた客に正月の初売りでの購入を勧めることも、今年はできない」と落胆を隠せない。供給網の混乱は、大消費地の米欧や中国等でコロナ禍から経済が持ち直すにつれ、昨年末から表面化した。ロックダウン等の感染症対策で企業が生産量を一気に絞った後、世界的に需要が急回復したことで、需給のバランスが狂ったことが原因だ。“産業のコメ”と言われる半導体は自動車のみならず、電気機器やコンピューター等様々な製造業で使われている。夏の猛暑の中でエアコンの供給不足が懸念され、巣ごもり消費で売り上げが伸びたゲーム業界でも品薄が続く等、国民生活にも影響が出ている。

製造業はコロナ禍で個人消費の停滞が続く中、海外の景気回復を追い風に輸出を伸ばし、日本経済を下支えした。今秋からの行動規制緩和で飲食や宿泊等のサービス業に漸く明るい兆しが見えてきた直後、その構図が崩れつつある。『日本銀行』が今月1日に発表した先月の企業短期経済観測調査(※短観)では、3ヵ月後の先行きをみる景況感が大企業製造業で悪化。減産と輸出の鈍化は長期化する恐れがあり、『野村総合研究所』の木内登英エグゼクティブエコノミストは製造業が「国内景気の下支え役から足枷へと転じた」と厳しく指摘する。コロナ禍で自動車や家電等の耐久消費財がよく売れたのは、サービス消費にお金を使えなかった欲求不満の裏返しだ。一度購入すれば数年は買い替える必要がない為、需要を先食いした側面も強く、製造業はこれからが正念場になる。家電量販店『ビックカメラ』有楽町店で、調理家電売り場にずらりと並んだ『シャープ』の最新電気調理鍋。具材と調味料を入れれば自動で料理を作ってくれる優れものだ。担当者は、「誰もが未だ持っていない新製品は注目度が高く、新たな成長分野になる」と期待する。ウィズコロナ経済で勝ち残る為、メーカーの創意工夫が求められている。中国南部、広東省深圳市の中心部から車で1時間弱の場所にある光明区では、建設中や完成から間もない高層マンションが目立つ。今月中旬とはいえ、30℃超の炎天下で客待ちをする不動産仲介業者の男性は、「生活が便利になっているので購入客も多い」と強調した。男性業者が扱っている物件は1㎡当たりの販売価格が約5万元(※約89万円)だが、市内中心部では10万元以上が相場という。中国では不動産価格の高騰が続き、深圳はその代表的な存在だ。「不動産は下がらない」という“神話”が社会に浸透し、開発業者は競うように新規の大規模物件を建設。コロナ禍を受けた中央銀行の金融緩和も富裕層の投機を加速し、不動産市場のバブル懸念は拡大した。金融緩和に背中を押されたコロナ禍の市場過熱は、中国だけの話ではない。行き場を失ったマネー(※過剰流動性)が流れ込んだことで、巣ごもり消費でハイテク銘柄が勢いづいたアメリカのダウ工業株30種平均は連日、過去最高値を更新。米欧に出遅れていた東京株式市場の日経平均株価ですら、先月14日にバブル経済崩壊後の最高値を更新した。空騒ぎに冷や水を浴びせたのが、事業多角化が裏目に出て総額35兆円の巨額負債を抱えた中国の不動産大手『中国恒大集団』の経営危機だ。先月下旬、ドル建て社債の利払い遅延を発端に、日米欧を含む世界的な株価急落を引き起こした。習近平政権は貧富の格差解消を目指す“共同富裕”を掲げ、昨年夏頃から庶民の不満解消の為、バブル抑制に舵を切っていた。不動産向け融資を制限する総量規制を懸念する声もあったが、宴の最中で深刻に捉える人は少なかった。総量規制は日本のバブル崩壊の端緒でもあり、恒大に融資した銀行等の不良債権が膨らみ、金融不安が生じれば、中国版リーマンショックにもなりかねない。中国は、成長を牽引した不動産市場の冷え込みに深刻な電力不足も重なり、7~9月期の実質GDPは前期比0.2%増とゼロ成長の寸前だ。アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は今月6日、恒大の経営危機を巡り、悪影響が世界に波及しないよう中国政府に“責任ある行動”を求めた。世界的な新型コロナウイルス流行初期から独り勝ちを続けた中国経済の失速は、中国向け輸出の減退等で世界経済の回復を遅らせる。金融危機ともなれば、逆に景気が後退しかねない。コロナ禍が齎した個人の消費行動と産業構造の変化は、世界中で資源価格の高騰や供給網の混乱を齎している。米欧を中心に、景気の低迷と物価上昇が連動するスタグフレーションの懸念も強まった。だが、経済活動が持ち直す中で企業や労働者は需要が増えた産業に移行し、産業の新陳代謝が一巡すれば需給バランスも回復する。今は謂わばウィズコロナ経済の「生みの苦しみ」(前出の木内氏)。日常生活を取り戻す為、軟着陸に向けて官民が知恵を絞る必要がある。

                    ◇

田辺裕晶・宇野貴文・加藤園子・黒川信雄・板東和正・三塚聖平が担当しました。


キャプチャ  2021年10月30日付掲載
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Author:George Clooney

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